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何で私は戻ったのでしょうか?死に戻り令嬢の何にもしたくない日々  作者: 万月月子


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森の精霊

私が外出を許可されたのはレグルスお兄様とミアプラお姉様が神殿から戻られるという日だった。


お父様は私が二人を外にお迎えに出られる様に許可してくれたのだと思う。


勿論お迎えには行くつもりがあるけれど、それだけで過ごす気は全然無かった。


「二人は今日も剣の練習とかして過ごすんでしょう?」

ノアとレオンに擦れ違い際言い捨てて、私はプロキオンとラベンダーちゃんと共に賢者の森へと向かう。


「おい。どこ行くんだよ!」

「スピカ?」

二人は慌てたように私の後を追って来た。


「何よ。お父様から外出の許可は出てるわ。私は二人に話をしたかったのだけれど、訓練の方が大事みたいで私のところへなんて寄り付きもしないんだもの。もういいの。賢者のおばば様に話を聞いてもらうから」

私は数日放ったらかされた恨みを込めて二人をじっとりと見た。


「おい、別に放ったらかしてなんて・・・」

「ちょっと顔を合わせ辛かっただけで・・・」

二人揃って言い訳を口にしていたけれど、最後まで聞かず背中を向けて森に足を踏み入れる。


「スピカ!」

追って来た二人を背後に感じながらも、私はずんずん奥に進んで行く。


「スピカ!」

5分ほど歩いた所で、私はようやく立ち止まった。


「私の話を聞いてくれるつもりあるの?」


私がチラッと見ると二人は大きく頷いた。


「アルタイルお兄様のことよ」

私は少し声を潜めて話した。


「神官の人が本当にアルタイルお兄様の生れ変りなのかしら?」


話し始めると、どこからともなく白い森の精霊達が集まってくる。


動物たちに混ざって、レグルスお兄様に似た彼も居た。


「スピカはどう思っているの?」

ノアに訊かれ、私は白い彼を見つめる。


「私は・・・わからないわ」


「アルタイル兄様にそっくりだったんだろ。会ってみたいよな」

レオンはそう言うけれど、私は少し戸惑いがあった。


「おかあさまって呟いたっていうのも信憑性高いよな」

私はそう言うレオンから視線を反らす。


視線は自然と白い森の精霊へと向う。


「スピカ。精霊達がいるの?」

ノアの言葉に頷いて、私の肩に乗った白いリスを手で撫でた。


相変わらずレオンはヒッと怯えた声を出し身構えるように辺りを伺った。


「あのね。森の精霊達がいるわ。私を取り巻いてたくさんいるの。その中にレグルスお兄様に良く似ている精霊もいるのよ」


私の発言にレオンは固まり、ノアは切望する様に目を凝らした。


「あのね、あのね。レグルスお兄様に良く似た精霊もいるのよ」


私は発言を繰り返したけれど、二人は黙って私を見ていた。


賢者のおばば様も、私の言葉を聞いて頷くだけだったわ。


このことを話しても、その森の精霊がアルタイルお兄様なのでは?と私のように思ったりしないのかしら?


「あのね。私の手には今、リスの姿をした精霊が乗っているの」


頷く二人を見て思う。


もしかしたら、精霊はじっくりと想像されにくいのかしら?


だから誰もが精霊の話をしても、頷くことしかできないのかしら?


「このリスの精霊はね、とってもしっぽがふんわりしてて可愛らしいのよ」

私はムキになってリスの精霊の説明をする。


「あーあ。何でわかってくれないのかしらね」

背中から尻尾までを何度も撫でる。


「あ。調度良いところに本物のリスちゃん達が」


私はしゃがみこんで地面に落ちているどんぐりをいくつか拾って手の平にのせ木の上のリス達に声をかけた。


「ほーら。ドングリをあげるわ」

チョロチョロと2匹のリスがドングリめがけて手の平にやってくる。

私はその子達の背中もなぜる。

「あのね。この子をリスのリー。こっちの子をリスのスーとするわね」

私が二匹に名前を付ける。

その方がわかり易いだろうと思ったから。

「リーは、ちょっと細身でシュッとしているでしょう?スーはズンッとしてふわふわのぽっちゃりに見えるでしょ?」

首を傾げる二人に、私は白いふわふわの森の精霊をリーとスーの2匹の間に置いた。

「この森の精霊のリスはリズって呼ぶわね」

そう言った瞬間、何だかリズの煌めきが増した気がした。

リズは私の頭にのぼりおでこの辺りをくすぐるけれど、あまり気に留めず私は話を続ける。

「リズは、リーよりもスーに似ているわけ。わかる?」

私が顔を上げて二人を見ると、目を見開いて驚く双子の姿があった。

「つまり、森の精霊はノアやレオンじゃなくてレグルスお兄様に似てるって話なんだけれど・・・。何よ、二人とも。そこまで驚く様な話だったかしら?私が言いたいのはね。だから。レグルスお兄様に、似ている森の精霊が」

アルタイルお兄様ではないか?と話を持っていきたかったのに、二人して私を指差して口を挟んで邪魔をした。

「ス、スピカ」

「森の精霊が」

「ええ、そうよ。だから、森の精霊が」

話を元のレーンに戻そうとしているのに、更に二人が言葉を挟む。

「スピカの頭に」

「リスの森の精霊が」

「ええ。いろいろ紛らわしいからリズと名付けた森の精霊が私の頭に登ってるけれど?」

それが一体何なのか?と二人を見返して、彼等同様に目を見開き口を開く。

「えっ?あなた達にも見えているの?この子が。森の精霊達が!」

「精霊達は、見えないけどそのリスだけは」

「白くて神聖でふわふわしている。プロキオンの様だ」

何でだかわからないけれど、リスの形をした森の精霊リズは実体化したようだわ!

「やっぱりおばば様のところに行かなくちゃ!」

レグルスお兄様とミアプラお姉様のお迎えに間に合わないかもだけれど、私は賢者のおばば様の家に向かって歩き出した。

止められるかと思ったのに、ノアもレオンも一緒に後をついてきたのだった。







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