叙勲逃走
ラストレンさんに肩を貸してもらって闘技場から出ると、隊長とスルテが出迎えてくれた。二人共厳しい表情をしている。
「メールには蟲車の手配を頼んだ。荷造りは?」
荷造り?もしかしてラストレンさんは帰ってしまうのだろうか。
「必要ない。もともと着の身着のままだ。」
スルテもうなずいている。彼女も行ってしまうのか。
ゆっくり歩きながら話す。
「帰ってしまうのですか?明日は叙勲式でしょう?見ていかないのですか?」
ラストレンさんは、はっとした顔になって、
「そうか。それも幸せか。」
と言って黙ってしまった。助けを求めてスルテの目を見る。
「あなた、夢を追えなくなるわよ。」
と、厳しい目を向けてきた。なんのことだ。僕の知らない事で話を進めないでほしい。
「少年、私達と一緒に来るか、この国で王族になって死ぬまで暮らすか、選んでくれ。」
「え、え?王族?どういう事です?」
疑問しか浮かばない。大体、全然説明してくれないのはラストレンさんの悪い癖だ。聞けば教えてくれるが、それでも説明不足だ。スルテにもその癖が移っている。
「時間がない。手早くで許せ。おそらくここに残れば、少年は叙勲式で第十四王妃の娘かそこらを嫁として与えられて帝の血縁になる。帝の命令で闘技場で働く事になり、そしてここに墓を建てるだろう。」
蟲車が目の前で止まった。御者はメールだ。スルテがためらいなく乗り込んだ。
「私達と来るなら、、、蝉を殺しに行こう。」
僕もためらいなく乗り込んだ。
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なぁ蟲狩り、と隊長が話しかけてきた。蟲車の床板は硬く、ガタリと揺れる度にお尻を強く打つ。スルテとラストレンさんが何かをヒソヒソと話している。小さく「オケラ」とか聞こえる。ラストレンさんは首を振っている。
「俺はお前に感謝してんだ。」
それはなんとなく分かっていた。何か感謝される事をした覚えは全く無いが、恨まれる事をした心当たりはたんまりとある。しかし、感謝でもされていなければ説明がつかないのだ。手術で命を助けてもらっているし、何度も経過診察してくれているし、いまも助けてくれているし、、、。
「僕だって感謝してるよ。」
隊長はそういえばそうだな。というような顔をした。
「じゃあ今の無しだ。」
僕との話は終わりと言った態度で、隊長はラストレンさんと話を初めてしまった。代わりにスルテが話しかけてきた。
「蟲車の中なら少し時間があるから、説明してあげるわ。まず…」
つらつらと僕の体に起こってる事を聞いた。帝達にバレた事も聞いた。そして、僕らが北に向かっている事も聞いた。目指すはサルベジア将国。麦の豊かな農業の国だ。
もともと帽子男というペンネームでしたが、全く同じ名前のペンネームの人がいる事に気がついたので、ペンネームを帽子男/Hattに変更しました。




