表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂漠の少年  作者: 帽子男/Hatt
PR
64/91

普通の運

「予定変更だ。今から魔法を執り行う。」


「おい!質問に答えろ!」


男性は怒りの頂点に達したのかラストレンさんに掴みかかった。


「話を聞いて無かったのか?魔法を使うのだ。集中力がいる。黙ってそこで見ていろ。」


男性を一蹴し、再度ラストレンさんはこちらを向く。今の会話が礼拝堂内に響いたのか、皆がざわつき始める。


「でも、誰にかけ直すのですか?それに、心臓は?」


「もちろんリカルド少年だ。」


ちろちろと僅かな光は、台座の上のお香入れのような物から伸びている。ラストレンさんはそれをひっくり返すと中身を取り出した。

 赫い、赫い結晶だった。まるでロウソクの最後みたいに、揺らめく光を放っている。


「どうやってここにいない人に魔法をかけるのですか!心臓も!」


「慌てるな。心臓はある。そして魔法を使う条件を思い出してみろ。」


まず印を付けて、それに願いを込める。聖人、魔女の心臓、神器の3つが揃えれば魔法は発動する。…あっ


「そうだ。3つ揃っている。そして印だが、、、それはこの器が記録している。」


「けれど、聞いたことがありませんよ!対象がその場にいない魔法なんて!」


私は聖人としてはタマゴだが教師としてはしっかりと職についている。まぁ今はその職も放り出しているが。教師として人に教えを解く立場上、重大な歴史や神話などはきちんと収めている。その中に、遠距離で魔法を使ったという話は一度も無い。


「私ならできる。私の祈りは、届く。初めてだが、確証は有る。」


ラストレンさんは真っ直ぐに目を見つめて来る。


「手伝ってくれ。」


そう言って、私の胸にそっと手を当てた。


-----------------------------------


僕の目覚めは良い方だ。意識が「目覚めた」と自覚する頃には、体のすべての機能が覚醒している。白目を向いていた目が、ぎょろりと敵に焦点をあわせるのに時間はかからない。


「まだだ。」


うつ伏せに倒れそうになる体に力を込めて、右足を前に出す。振り下ろされた剣の峰に上から被せる。

血の塊がせり上がってくるのがわかる。王子が驚きに目を見開いている。整った顔立ちだ。

 僕の体が怪我を自覚する前に、死を確定させる前に、一撃を食らわしてやる。今ならできる。今なら。さっきの僕とは違う。今の僕は、「普通の運」だ。


「ぐっっっ!!!!」


歯を食いしばり、垂れ下がっていた右手を思い切り振り抜く。王子の顎を右下から撃ち抜く。食いしばった歯の隙間から血が漏れ出る。拳に力が入っていたかはわからない。もう感覚がない。頭も働かなくなったきた。限界だ。ぶん殴った反動のまま、後に倒れ込み始める。王子も後に倒れるのが見える。剣の柄から手が離れ、吹き飛んでいる。一撃食らわしてやった。


「ごほっ。」


どうだ。という声は喉を塞ぐ血の塊で伝えられなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ