部隊前進
あっと言う間に目の前の五匹の蟲を斬り伏せてしまった。
「私に続け!」
次々と襲いくる蟲たちの群れを、猛進する勢いだけで斬り刻んでいく。
前方の蟲は全てネシテルさんが斬っている。残りの兵士で他を担当し、全体に余力が生まれ始めた。
部隊はゆっくりと前進を続け、着々と街の外へと向かっている。
僕は隣の兵士に肩を貸してもらい、ずるずると身体を前に推し進める。
道の端の方に、ぐじゅぐじゅになった肉の塊のようなものが見える。
斬られた蟲が吐き出した物のようだ。
辺りには蟲の死体がゴロゴロと転がっており、そのどれもが青い血を沸騰させている。
こころなしか空気が重くなってきたように感じる。
また何かが胃の中からせり上がってきて、堪えきれなくなった。
「うっおぇ…。」
隣の兵士の人にはかからないようにはしたつもりだ。
「すみません。」
「気にしなくていい。」
足取りはまだふらつく。蟲が建物を破壊し始めた。家の崩れる大きな音と砂埃が視覚と聴覚を制限する。
炎がまた上がる。
あの蟲たちは僕らの事さっきまでは餌だと思っていたはずだ。しかし反撃し、多くの蟲を殺した今、その認識は覆されたようだ。
ギチギチ、ギチギチ、と、蟲が鳴き始めた。それに呼応するようにそこら中からギチギチ、ギチギチと言う音がなる。
蟲は仲間を呼び、重なり始めた。蟲の上に蟲、蟲の上に蟲、というように重なって、こちらを圧殺するつもりだ。
「全員全力で前に走れ!」
ネシテルさんの一声で一斉に走る。部隊の全員が戦いを放棄して、圧殺の回避に注力する。
後ろを守っていた兵士の一人が遅れた。
「頼んだ。」
ネシテルさんが一声言うと、今にも押しつぶされる兵士の元へと飛び込んだ。
仮にも鎧をまとっている兵士一人を軽々とこちらへ投げ飛ばし、蟲の海の中へと飲み込まれていった。
「脱出を再開する。」
僕に肩を貸している兵士がそういった。
また部隊は前進を始める。しかし失った戦力は大きかったし、一度止まってしまったせいで勢いも落ち着いてしまった。
部隊は一人、また一人と数を減らしていく事になった。
書き納め




