ネシテル
「ラウム様の事を疑うわけでは無いのだが、本当に貴方が切り札となるのですか?」
真面目そうな若い男性が聞いてくる。僕と一緒に戦ってくれる人だそうだ。
「僕は強い呪いを掛けられていてですね…。」
「あいや、話は聞いているのだ。あまりに頼りない物だからそう言ってしまっただけで、、、あ、これも失礼か。すまない。」
たしかに今の僕は頼りない。連日神経毒とその解毒剤を服用し続けているのだ。
身体は痩せてきたし、やつれてきた。まるで病人みたいだ。何日も続けているせいか、毒も効きづらくなっており、益々服用のペースは上げられている。
僕らは今バルマンドリア帝国の王都付近の街にある旅館にいる。そこでこの強そうな兵士が王子と入れ替わりでやってきた。
王子は王都に行ったのだが、流石に今は僕を都につれていけないということだそうだ。
この兵士はネシテルと言うそうで、王子と仲が良いらしい。
「しかしラウム様は癖の強い方であらせられるだろう?」
「え?」
全くそんな事は感じなかった。別に話し方も普通だったし、おかしなことも言わなかったような気がする。
「何処の国に誰かも解らない人間を突然切り札などと言い出したり、その人間にいちいち毒を食べさせる王子がいるというのだ。」
たしかにそうだ。よく考えていなかった。僕の状況はおかしい。一体なぜこんな事になっているのか。
「今更気がついたのか。あの人は昔からそうなのだ。面白い物なんでも集めたがる。それに強い審美眼も持っておられる。
それと少し種明かしをするが、ラウム様は最初貴方の両目を狙っていたのですよ。
貴方の食べていたあの青い果実ですが、あれは目がよくなると言われている他に、食べると痩せると言われているのです。
きっとそのおかげで毒の周りが遅かったのでしょう。貴方は『運』が良い。」
そんなはずは無い。僕は今絶賛大不運の真っ最中だ。僕は両親の元に帰りたいだけなのだ。
「僕の両目ってどういう事ですか?」
「その緑の瞳はとても美しい。飾りたくなるほどにだ。だがバルマンドリアには緑の瞳を持った種族はいない。とても珍しのだ。」
「僕は両目をくり抜かれる所だったという事ですか?」
「いや、その後殺されるはずだった。」
もしかしたら僕は運が良いかもしれない。不運の呪いのおかげで死なずにすんだのだ。そもそも不運がなければこんな事にもなってはいないはずだが。
すると、建物が少しゆれる。ズズンと重たい音が響く。ネシテルさんも気がついたようで片方の眉を上げている。
音はなんども連続して響き始め、次第に連続してくる。建物までもが振動を始めた。
「少し見てくる。」
ネシテルさんは席を立っていった。




