おじさんとおばさん
「おや…?」
僕は寝覚めはいい方だ。朝方にはまどろみの中を行ったり来たりする人もいるそうだが僕はそうではない。
「レンベルを呼んでこなくちゃね」
起きてすぐの体でも戦えるぐらいにはよく動く。そして、自分がどうなったかもすぐに思い出す。
倒れたあとどのくらいたった時かはわからないが、しらないおじさんが僕を担いでくれたのを覚えている。
しかし、さっきまでこの部屋にいた水差しを持ったおばさんのことは覚えていない。
レンベルとはきっとおじさんの名前だろう。トトトンと足音が近づいてくる。二つの人影が部屋に入ってきた。
「やぁおはよう。気分はどうだい。」
「あ、えっと、すっきりしています。」
「あらあなた、きれいな緑の目をしているのね。さっきまでは目を閉じていたからわからなかったわ。」
二人の肌の色はきれいな小麦色で、おじさんの髪は暗い赤色、おばさんの髪は黒色だった。
「それで、いったいどうして村外れで倒れてなんかいたんだ。」
「えっと…」
テントが蟲に襲われたこと、族長に最後に通った街に行くように言われたことを説明した。
「それじゃあ君は国境からここまで一人できたのかい。そりゃすごい」
「あのね、言いにくいんだけどここはその国境沿いの街じゃないのよ。一つとなりにあるちいさな村なの。」
僕が少し悲しそうな顔をしたせいか。おじさんとおばさんはあたふたとし始める。
「そ、そうだ!おじさんの名前はレンベルっていうんだ。な?」
「そ、そう!おばさんはメヨナよ!それで、あなたは?」
慌てふためきながら自己紹介をしてくれた。きっといい人達だ。
「僕の名前はリカルドです。この度は助けていただきほんとうにありがとうございます。」
「や、や、いいんだよ。家の裏手で野垂れ死なれちゃ困るとおもっただけなんだ。」
「それよりあなた、これからどうするの?」
やっぱりこの人達はいい人だ。しかしこの先のことを僕はなにも考えていなかった。
「ちょっとまってくれ。俺はたしかに親切で助けたが、ありがとうございますといって街にいかれたんじゃ助け損でこっちも困る。少しでいいんだ。ここで働いていってくれないか。」
「ちょっと!」
「お前の畑がもうすぐ刈り入れ時だろ?手伝って貰えばいいじゃないか。」
なにか恩返しができるなら、それに越したことはないだろう。
「お前の家はちょうど寝具が一つ余ってたろ?すまわせてやればいい」
ん?
「お二人はこの家に一緒に住んでいるんじゃないのですか? 」
「「…」」
しばらくの間、二人は少し顔を赤くして、黙り込んでしまった。