蟲車チェイス
本日二本目です
「クソっ!なんであいつらの蟲車あんなに早いんだ!?」
オレはいつも運が悪い。メシにはよく当たるし便所に行くと蟲が出る。賭けに勝ったことなんて数えるほどだ。
今だってそうだ。頼れる頭領は今に限ってどこにも居ない。おまけにオレの大嫌いなこの男を蟲車に乗せている始末だ。
「協会のだからナぁー?特別製なんだろうヨぉー?」
「うるさい!そんなこたぁー分かってるんだよ!」
そうこうしてるうちにグングンと蟲車の距離は近くなってくる。
「何台だ?!」
「なにがダぁー?」
「蟲車の数にきまってるだろ!」
「こっちと同じだゼぇー。」
ということは五台か。本当にいちいち癪にさわる男だ。間延びした声にうんざりする。
「オレたちの蟲車を先頭にする!速度上げるからしっかり捕まってろ!」
手綱を操り、蟲達に支持をだす。グンと内臓が後ろに引っ張られる感じがして一段速度が上がる。
後ろを振り返って距離を見る。どんどん近くなっている。
「頭領じゃないが命令だ!ありったけの持ち物をあいつらに投げつけてやれ!」
仲間達が次々に後ろ向きに荷物を投げ始める。こちらが前を走っているので、それでも当たるのだ。仲間の中には蟲車の床板を剥がして投げている者もいる。
なんてことしやがる。
「ひゃひゃひゃ!いいこと思いついたゼぇー?ちょっと耳を貸せヨぉー」
ウチジクが何かやっているが気にしない。しかし蟲車が軽くなっていっても距離は縮まる一方だった。
このままだと追いつかれてしまう。戦って勝ち目が無いかと言われればわからないが、少なからず死傷者は出てしまう。できる限り戦闘は避けたい。
「?!」
なにかを口に突っ込まれた。
「ただの水だゼぇー?飲んどいてくれヨぉー。」
憤りを通り越してキレてしまいそうだったが、腹の立つことに喉を通る水が頭を冷やして冷静にさせてくれる。受け取った大きめのジョッキをさらに傾ける。
ウチジクは周りのやつら全員に水をやって、空になった樽を持っている。何かをする気だ。
「お前らにもやるゼぇー?」
ウチジクは持っていた樽を横から砂の上に落とした。蟲車は進み、樽は置き去りになる。
しばらくして樽は―――――爆ぜた。
大きな砂埃が舞い後ろの景色が一瞬にして黄色く染まる。
その直後に砂の壁を突き破るように蟲車が現れた。
「駄目じゃねえか!」
「あレぇー?」
追いかけてくる蟲車には怯んだ様子すらなく、速度は欠片も揺るがない。




