第8話:とある過去の過ち
1
僕は素直に姉が好きだった。壊してしまいたいほどに。
だがそれは許されない、なぜかと聞かれれば僕達は兄妹だからである。
だが時にそれすらも無視して姉に手を掛けようとする僕がいる。
だが人には理性があるように歯止めが利く。だが僕はそれすらも壊そうとしていた。
ゆきねぇはどうしたら僕を見てくれるの?
2
「・・・しょ・・ちゃん・・・・起き・・」
夢の中にいる僕に向って誰かが話しかけてきた気がした。
「将ちゃん、起きて」
夢から現実に引き戻されるにつれて頬に痛みを感じる。
「ほら、早く起きなさいって!」
姉がついに僕の掛け布団をはぎ取った。
そして僕は目を覚ました。それに伴い右の頬がジンジンしていた。
きっと姉が私を起こす際に頬を叩いたのだろう。
「あんたいつまで寝てんの?今日はどっかいくんでしょ。・・・まったく」
僕は姉のその言葉の意味を、寝ぼけて処理スピードが遅くなった脳を出来る限り素早く動かし理解に勤しんだ。
「えっと・・・なんだっけ?」
結局私はその答えを見つけ出す事が出来なかった。きっとその部分だけが欠落してしまったのだろう。
「はぁ?あんたそんなことまで忘れちゃったの。あんなに楽しみにしてたのにさ・・・もしかしてアルツハイマー病?」
酷い言われようだった。それと、『あんな楽しみに』という言葉で頭の中の何かが引っかかった。
「アルツハイマーって・・・僕に言わないでくれよ。アルツハイマー病患者の人に失礼だろ。
けど知ってた?そういうのを差別って言うのだよ、ゆきねぇ」
処理の遅くなっている頭でも悪口を叩くような機能は果たしているようだった。
「ああそうですか。じゃあそんなこと言うなら今日は行かなくていいよね」
姉が僕に向ってにっこりと微笑んだ。
私は頭でその事が分かっていなくても体が何かを記憶しているのか咄嗟に言葉が出た。
「ごめんごめん、行くよ・・・じゃなくて行かせてください」
僕は目ヤニを落とすために目を擦った。行動と返事が矛盾していた。
「分かった、しょうがないないなぁ将ちゃんは。けどどこに行くかは分かってるよね?」
痛いところを突かれた。あくまで反応したのは体であって、その返事を返す頭は無いようだ。
「えぇと・・・ゴメン分からない」
僕はすぐに考えることを諦めた。それが無駄だと分かったからだ。
すると姉はニコッと微笑んだ。それが純粋な笑みではないのは僕には分かっていた。
「分からないんだ、正直だね将ちゃんは・・・けど自分で言ったことぐらいは覚えておこうね」
姉がいつの間にか拳を握っていた。そしてそれが何をするために握られているのかはもちろん僕には分かっていた。
「ごめんなさい」
姉は最小限の力で強いダメージを与えたいらしく、地味に痛い弁慶の泣き所、つまりは脛を殴りつけた。
瞬間痛みが体を突き抜ける。そして痛みがきっかけで忘れていたことが頭を過った。
「あっ、思いだした。そういえば楽器屋に行くんだったよね」
「そう・・・別に私は行きたいわけじゃないんだけど、
将ちゃんがどうしても一緒に行きたいって言うからそれについていこうとしてるんじゃない」
最初の方は合ってるとして、『どうしても一緒に行きたい』ということには記憶がついていけなかった。
ただ私が忘れているだけなのか姉が勝手に作ったのかそれは分からない。
「どうしてもね・・・そんな事言ったかは分かんないけど、今日は行くからね。忘れててごめんね」
膝を押さえながら僕は笑った。姉はまったくといった表情をした。
「まぁいいか。じゃあすぐ用意してね」
「分かった。けど、朝飯まだなんだけど・・・」
僕はそう言いながら時計を見た。そして自分の言葉に後悔した。
「何言ってんの?もう1時だよ。あんたが起きるの遅いんでしょ」
たしかに外を見るとかなり日が上がっていて、いい陽気だった。
「じゃあ昼食は外で食べればいいのかな?」
「もうあんたコンビニとかで買ってくれば?私もう昼食も済ませてあるから」
今さら気づいたが、姉の恰好はいつものパジャマでなく外着用の服にチェンジされていた。
「えっと・・・ということは僕は今から顔洗うだの歯を磨くだのして服を着替えればいいんですね」
妙な敬語に切り替わった。
「そういうこと、じゃあ下で待ってるから早くしてね」
姉はドアノブをガチャリと回して部屋から出て行った。
「ゆっくりしてたらまたゆきねぇに怒られるな・・・」
そう呟くと僕はすぐに行動にかかった。
僕はまず洗面台に洗顔と歯磨きをするべく向かった。
水を流すと冷たい水が出てきた。いくら春だかと言ってもさすがに冷水はきつい。しかし、我が家の水はお湯になるまでに時間がかかる。
その水がお湯になる前にまず僕は歯磨きをした。これは単にお湯で口を濯ぐのが嫌だったからだ
そして歯を磨き終わった僕はぬるくなったお湯で顔を洗った。
僕はそのお湯で完全に眠気が吹っ飛んだ感じがした。
そして見るからに安そうな石鹸を使って顔を洗った。眠けから覚めるというのはこういうことなのだな。
そして僕が次に行うべく行動は着替えだった。
別にファッションにはあまり興味がないので、いつも通りに下がジーンズ上がTシャツにパーカーを羽織った格好だ。
全ての行動が終わった僕は後ろポケットに携帯と財布という軽装備で、姉のいるだろうリビングに向かった。
僕の予想に反して姉は玄関に立っていた。
「遅い、もっとテキパキ行動しなさい。というかもっと早く起きなさい」
ごもっともな意見だった。
「ごめん、それともう準備できてるからそろそろ行く?」
「そろそろって、全部あんた待ちだったんでしょうが」
完全に僕の失言だった。今日の僕の12星座の運勢はきっと最下位に違いない。
「確かに・・・とりあえず行こうか」
「しょうがないな、じゃあ行こ」
そう言って姉が外に出ようとするとリビングの扉が開いて父が出てきた。
「深雪、気をつけていってっらしゃい。それと将太もな」
完全に僕がおまけみたいな言い方だった。
「分かった、じゃあ行ってくるね」
「行ってきます」
一応報復のためにそっけなく言ってみたつもりだ。しかし実際の所普段と変わった感じがしなかった。
僕は姉と下り電車で3つ目の所にある楽器屋に向かった。
「二人とも仲が良いな、今時の兄妹でこんな仲がいいのは滅多にいないかもしれんな」
父が母に言った。この家には今二人しかいない。
「そうですね。しっかりと育ってくれて、生んだ甲斐がありましたよ」
「そうだな。本当によく育ってくれた。これからも仲良くしてもらいたいもんだ」
父は母に笑いかけた。母はまったくだという表情をした。
「仲良く・・・な・・・」
「よし、着いた」
僕は起きた時のテンションと比較すると数段高かった。起きたと言っても昼なのだが。
「まったく調子いいんだから。けど、なんで兄弟そろって行く場所が楽器屋なの。そもそも兄弟って一緒にどこかにいくものなの」
言われてみれば兄妹でどこかに行ったという事はあまり聞かない。
しかしそんな事を気にしてはいなかった。
「そりゃ楽器類が見たかったからに決まってるじゃん。とりあえず入ろうよ」
僕はお店に入って行った。
お店の中にはそこそこ人が入っていたが、休日という事を考慮すると当たり前の入り具合だった。むしろ少ない気がする。
「そんなに混んでないみたいね。じゃあ私はそこらへんに座ってるから」
姉は音楽にはあまり興味ないようでボーっとしていた。
僕はそんな事を気にせずにギターの機材のコーナーに向かった。
少し前まではメタル系にハマっていて低音重視の曲を練習していた。
そのためディストーションを使っていたわけなんだが、最近はゆったりしたのもいいかなという事でバラード調な曲にも挑戦している。
そういった理由からクリーンの音を出さなければいけないわけだけど。
何せ今まで歪み系のエフェクターしか使っていなかったので、コーラス等のエフェクターを持っていなかった。
普通は何をやるにしてもそのぐらいは持っているものなのだか、自給の低い高校生のバイトではなかなか懐が狭い。
つまりお金がないためずっと買えないでいたのだ。しかし最近やっとお金が貯まったので買いに来たのだ。
エフェクター自体は以前ここにギターを持ってきて試奏をしたので事前準備は万全だった。
僕がエフェクターを見ていると店員さんが近づいてきた。
「試しに音を聞いてみますか?」
男性の店員さんはニッコリと微笑みながら聞いてきた。営業スマイルというやつだ。
しかし先ほど言ったように以前試奏を済ませているのでそんな必要はなかった。
「あ、結構です」
そう言うと店員は「何かお試しになるなら近くの店員に声を掛けてください」と言って去って行った。
とりあえず僕はそこを後にしてギター本体のコーナーに向かった。
一度ベースもやってみようかと思ったが、高校生の経済力ではギターとベースの両方をやることは無理だった。
そして今僕はギター歴3年ということで、それなりに弾けるレベルに達していた。
しかし未だにスウィープは出来ないでいた。だが別にそれを使う曲はやっていないのでそんなには問題にならなかった。
一番使いどころない技はエイトフィンガーだと思うが、本当にあれは必要なのかと思った。
僕は壁から吊るされているギターを眺めていた。
目を引いたギターはParkerのギターだった。あのギターを見ていると折れるのではないかといつも思っている。
あのギターはとても軽いのだが、ネックが細い上にボディまで薄い。あれを作った人をすごいと思う。
というより値段も凄かった。本当に高校生じゃどうにもならない値段だった。
そして次に僕に近づいてきたのはお店の店員ではなく姉だった。
「将ちゃん。もう飽きてきたんだけど」
「早いんだね」
目をキラキラ輝かせる僕と違って姉の目はどんよりしていた。
「もうここ出たいんだけど。早くしてくれない?」
姉が急かしてきた。特にこれと言って長居する理由はないので僕はエフェクターのコーナーに向かった。
そして近くの店員を呼んで「これ買うんでよろしくお願いします」と言った。
僕がそう言うと店員は「はい」と笑顔で言った。今度は女性の店員さんだった。まだ若いようで、かなり可愛い風貌だった。
店員は店の奥に消えて、しばらくしてエフェクターの入った箱を手にして帰ってきた。
「こちらの商品でよろしいでしょうか?」
僕が「はい」と頷くと、すぐに会計が行われた。
僕は姉が後ろにいる中、財布から5千円札一枚と千円札3枚、そして小銭を出して会計を済ませた。
「あんた結構お金持ってるだ」
姉がにやりと笑った。その瞬間、姉は絶対僕にたかるだろうと判断した。
「どうせお金持ってるんなら何か奢ってよ」
予想的中、どうせその後は服の飯かのどちらかがくるんだろう。
「無理無理、そんなにお金持ってるわけじゃないんだ」
「いいじゃん、服とか買ってよ」
またしても当たった、どうも今の状況は援交してたかられてるおやじの気分だ。
「だから無理だって。飯ぐらいはいいけどさ」
「ホント?じゃあマックでも行こう」
横暴すぎる、姉には遠慮というものを知ってもらいたい。
「マックって、ゆきねぇは昼食食べたんじゃなかったっけ?」
「いいんだよ、おやつみたいな感覚で食べるから」
「・・・太るぞ・・」
僕は姉に聞こえないように小さく呟いた。しかし姉にはその声が届いていたようだ。
「悪かったわね太ってて、これでもカロリー計算はしてるんだからね」
「はいはい分かってます、じゃあとりあえずマックでも行こうか。昼食食べてないし」
今思うとマックに行こうと提案した理由は、
僕が昼食を食べてない事に対しての配慮だったのか単に自分が食べたかったかは分からなかった。
「よし行こう」
姉は足早に楽器屋を退散し、田舎では信じられないような雑踏の中、近くのマックに向かった。
僕は壁際の二人用テーブルの椅子に腰を掛けていた。
時間的にはもう昼食を過ぎているというのに会計の前ではまだ短い列ができていた。
そして姉は、自分の注文と僕の注文を頼むためにその列に並んでいた。
僕はあまりお腹が減ってないのとお金の支出を抑えるためるにノーマルのハンバーガーを2つ頼んだ。
姉は、確かビックマックを頼むだとか言っていた気がする。それはおやつという量でないのは確かだ。
そして姉が僕の財布をそのまま持っていったのが謎だった。最悪の場合はお札が抜かれている場合がある。
そんな事を考えていると姉がトレイにハンバーガーやビックマックを乗せてやってきた。
「買ってきたよ。労働量で500円頂戴」
ちゃっかりしたやつだ、だがその程度の労働でお金をあげる気はなかった。
「嫌だ、それに値するような事してくれればあげるけどね」
「めんどくさいから嫌だわ、まぁとりあえず食べよう」
姉はビックマックの箱に手を掛けて、ビックマックが崩れないように食べていった。
僕は片手でひょいとハンバーガーを持って口に運んだ。味はもちろんハンバーガーだった。
「そういえば今日は何買ったの?」
姉が突然聞いてきた。
「えっ、今日はギターのエフェクター買ったんだけど」
「ふ〜ん」
あまり突っ込まないところを見ると、それが何なのかよく分からないようだ。
「よく分かってないみたいだね」
「うん」
やはりそうらしい。というか即答であった。
「じゃあなんで付いてきたんだよ」
「暇だからだよ」
姉はビックマックを食べる手を一向にとめない。もう既にビックマックの半分が姉のお腹に収まっていた。
「暇って、どこかに一緒に行く友達とかいないのかよ。一応現役大学生でしょ?」
「現役大学生と友達とどこかに行って遊んでるっていうのは=で結ばれないんだよ。知ってた?」
それは初めて聞いた。大学生は自由なハッピーライフだと思っていたのに。
「それって友達がいないって意味なの?」
言ったあとに気づいたが、人として最低な質問だった。
「失敬な、友達はいるに決まってるでしょ。どこかの引きこもりじゃないんだから」
「じゃあ僕も言っておくけど、引きこもりと友達がいないは=で結ばれないんだよ」
下手に出ている僕が不思議な反撃を実行した。
「なんかよく分からないわ、けどただ私は暇なだけなんだよ」
「じゃあ一応聞いておくけど、彼氏とかっているの?」
このことについては前々から興味はあった。ただ聞くタイミングなかっただけだ。
「彼氏?あぁ、彼氏ね。私はいないよ、人と合わせるの苦手だから。けど、あっちが私に合わせてくれるなら付きあうんだけどね」
「へぇ、そうなんだ」
それは僕からすれば驚きだった。なぜならば姉はとても奇麗だからだ。あくまで僕の視点だが。
「じゃあ聞くけどついでに聞いておくけど。今狙ってる人とかいるの?」
ついでというより正直なところそれが本題であったのだが。
「狙ってる人ねぇ・・・特にいないかな。別にそう言う人いたってどうにもならないし」
どうも姉は普通の女子大生とは少しずれているようだ。
しかし姉に思い人がいないのは驚きだった。本当にいないのかは定かではないが。
「そうなんだ。ていうかもう食べ終わったんだ」
姉はいつの間にかビックマックを全て食べ終わっていた。
それに比べて自分は今までの話に気をとられていてまだ1つ目を食べ終えたところだった。
「あんた遅いね。もう帰っちゃうよ」
姉は席を立とうとする仕草を見せた。
「ちょっと待って、すぐ食べるから」
僕は慌てて2つ目のハンバーガーを口に運んだ。そのせいで口元に赤いケチャップが付いてしまった。
「慌てすぎだよ。まだ行かないからゆっくり食べな」
「ごめん」
僕はその後ゆっくりハンバーガーを食べ始めた。ゆっくりといってもハンバーガーは4,5口程度で食べ終わってしまった。
「じゃあ食べ終わった事だし、そろそろ行こっか」
「そうだね」
僕はトレイに乗ったゴミを捨てるべくゴミ箱に向かった。トレイを傾けるとハンバーガー包んでいた残骸はゴミ箱に吸い込まれていった。
「じゃあもう帰ろっか」
自動ドアが開いて僕達は店の外に出た。外は変わらず人でごった返していた。
「「ただいま」」
家に帰ると僕と姉は同時に帰りを告げた。
「おかえり」
ドアを挟んだ遠くのリビングから小さく声が聞こえた。
「よし、じゃあ早速試し弾きでもしようかな」
僕は先ほど買ったエフェクターを持って2階に向かった。姉も僕に続いて階段を上がってきた。
「じゃあ暇だから、それでも見てようかな」
僕の後ろにいる姉は僕の部屋に付いてくるようだった。僕の部屋に。
「いいよ、別に。けどまだ練習も何もあったもんじゃないからまともな曲は聞けないよ」
「そのときはメタル系でも聞かせてね」
自室の扉を開けるとやはり姉も続けて入ってきた。そして僕は姉が部屋に入った後に扉に鍵を閉めた。
「じゃあ、簡単にセッティングしてと・・・」
「ちゃっちゃとやっちゃってね」
それには少し怒りたくなった。ヴァイオリンの奏者なら完全に激怒するだろう。それは偏見か。
「はいはい」
僕は手慣れた手つきで黒いシールドをアンプ、新しく買ったコーラスのエフェクター、ディストーション、ギターの順で繋いでいく。
「よし、終了」
姉は僕のベッドで寝転がり、携帯や財布を枕元に置いた。姉が横になる時に髪をかきあげる仕草がとても色っぽく見えた。
「じゃあ適当になんかやって」
姉は僕と反対の方向を見ながら手を振った。つまり僕の手元は全く見てないという事だ。
「なんかやってって・・・まだそう言う曲練習してないからできないんだけどな」
そう言いながら簡単なコードを押さえてギターの弦を鳴らす。厚みのあるクリーンな音がアンプから流れた。
「だからメタル系やってよ」
姉ははゴロンと転がりこっちを見つめてきた。慌てて僕は視線を軽くそらした。
「しょうがないな・・・けど人に見られながら練習するのも嫌だからそっちやろうかな」
僕はコーラスの電源を落してディストーションのペダルを踏んだ。
ペダルを踏み込むと先程とうって変わって歪んだ音がアンプから流れた。
「じゃあ適当に頼むよ」
適当に流す姉に対して、僕は簡単なリフを弾いた。
「ネックべンド、ネックべンド」
姉が僕のトラウマを口にした。
まず最初にネックべンドというものはネックを無理やり曲げて音程を変化させるハイリスク・ノーリターンの荒技だ。
何故その単語がトラウマになっているのかと言うと、
僕が高校2年生の頃に文化祭のイベントで調子に乗ってネックべンドを行なった時に力を入れすぎたためかネックが折れてしまったからだ。
さらにそのライヴは台無し、ギターも粉砕され最悪の過去となった。
「もうあれはやらないよ。あれのせいでギターと人の信頼を失ったからね」
「あっ、ごめん。そこまでへこむのか・・・」
姉に言われたように僕の顔には不気味な笑みを浮かんでいた。
「まぁ普通には弾いてあげるから・・・ハハ・・・」
僕はやけくそになってギターを弾き鳴らした。しかしそれはすぐに終わり、僕は手を止めた。
姉がきょとんとした顔を見せた。本能と言うのは困ったものだ。
「ねぇ、ゆきねぇ・・・」
「ん?なに」
姉がまた僕を見つめてきた。
「えっとね・・・」
「何、早く言ってよ」
姉は軽く笑って見せた。
僕はギターの音を消さない状態でスタンドにストンと置いた。そして姉のベッドに近づく。
「そんな怖い顔してどうしちゃったの?ていうかギターは放置していいの?」
ギターは不協和音を部屋中に反響させていた。僕は姉の寝転がっているベッドのすぐ横に立ち姉を見おろした。
「今ギターはいいんだ。それよりもさ・・・」
僕はベッドの真ん中あたりに腰を掛けた。
「それよりも・・・何?」
僕はゆっくりとした動きで姉に跨った。姉がびっくりして一瞬体を震わせた。
「え、将ちゃん何やってんの?ほら早く降りてよ、重いじゃん」
姉が苦笑交じりに僕をどけようとした。しかし僕は微動だにしない。
「そういえばさ、さっきマックにいた時ゆきねぇ言ってたよね。500円が欲しいって」
姉は少し考えるそぶりを見せて言った。
「・・・そういえば言ったね、それがどうしたの?」
顔が軽く引き攣った姉が尚も僕をどけようとする。
「じゃあ500円上げるからその分簡単な労働でもしてね」
口元が笑っていた僕であったが完全に目が笑っていない。
「え?どういう事、それって・・・」
姉が質問してくるものだから僕は行動を示した。
「こういうことだよ」
僕はべッドに倒れこみボタン付きのシャツの上から姉の胸を揉んだ。
「きゃっ!?なにするの?やめて」
僕は姉の言葉が耳に入っていなかった。ただ欲望のままに姉を蝕んだ。
「やめてって言ってるでしょ!」
姉が叫ぼうと防音工事をなされたこの家では誰に耳に元届かない。それが届くのは同じ部屋にいる僕だけだ。
しばらくの間姉の胸を揉みしだいた僕は姉の股間の辺りに手を這わせた。すると姉が「キャッ」という声を出した。
「ねぇ将ちゃん。今止めるなら怒らないから。お父さんとお母さんにも言わないからさ」
そう言いながらも、ものすごい力で僕をベッドから落そうとしていた。
姉の抵抗は虚しく、男子高校生の力には及ばない。僕は姉のジーンズのベルトに手をかけた。
「キャアッ、やめて!」
ベルトを外し終えるとホックに手を掛けてジーンズを姉の膝のあたりまで一気にずり降ろした。
僕は白のショーツの上から姉のソレをまさぐった。
「怒らないからさ。やめてよ・・・」
姉の抵抗がだんだんと弱くなっていくのが分かった僕は、姉のボタン付きのシャツを無理やり引っ張り胸をさらけ出した。
僕は姉の胸に舌を這わせた。
「あっ・・・」
姉の体がビクンと反応した僕はそれを見かねてさらにその行為を続けた。
坂道を転がった石は誰に止めることができない。別の誰かが手を差し伸べなければ・・・しかし、それを止めるべく人は現れなかった。
徐々に加速していった石は最後には坂の最後に到達し、動きを止めた。
その後、姉は結局誰にもその事を話さなかった。私の将来を考えてだろうか?
いや、そうではない。ただ私が怖いだけなのだ。
そして姉は長い間心を閉ざして部屋に引き籠った。だがそれも2ヶ月で幕が閉じた。
だからこの事は誰にも知られていない。親友、親戚、そして両親にもだ。
これが私が犯した人生初めての過ちだ。___________
今回は今までと比べると結構長い話になりました。
そして表現がまずい方向に転がってしまった。
どのあたり出来ればいいか分からなかったですが、うまくまとめられて良かったです。
ということで今回もここまで読んでくださいまして本当にありがとうございます。




