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箱入リ娘  作者: 橘立花
1/10

第1話:二人の在り方

1



そこは、縦横3メートルほどの畳の部屋だった。

その部屋には実用性に富んだものはなく唯一あるものとすれば、壁際にたくさん置かれたぬいぐるみだった。

壁際といえども壁に窓はなく外からの日光はこの部屋には射さず、代わりに人工的な電球の光が部屋を照らしている。

しかし、その部屋の空気は濁っているわけでも息苦しいわけでもなく、むしろ生活するにあたって適度な温度と湿度になっていた。

中央に敷かれた、敷布団。窓のない部屋。部屋を覆うたくさんのぬいぐるみ。

そして...その中央に居座るピンク色のネグリジェを纏った人形のような一人の少女。_____________________...



2



どれだけの時間が過ぎたのかも分からない部屋で、少女は何かの存在に気づいたのかドアの方をジッと見つめた。

すると、少女の目先のドアがカチャリという音を立て、その後ドアがギィという不快な音を立てながら開いた。

少女はそれを待っていたかのように、ドアを開けた一人の男のもとへと駆け寄って行った。

男はドアを開いたその場で腰を屈め膝をつき、両の手をいっぱいに広げた。

そして、少女は何のためらいもなくそこに走った勢いで飛び込んだ。

「パパ、パパ、おかえり」

短い単語をつなぎ合わせ少女は男の帰りをひどく喜んだ。       

「あぁ、ただいま…白雪」

少女はただ男にパパ、パパとそれだけを言い続け、至福の笑みを浮かべていた。

「白雪、じゃあそろそろご飯にしようか」

優しく微笑んだ男は、目の前にいる自分に背の半分ほどしかない小さい少女を抱き抱えダイニングルームへ向かった。





「白雪、今日はペスカトーレとシーザーサラダだよ」

男の表情は先ほどと変わることなく穏やかな表情であった。

「ペス・・ペス・・・?サラダ」

少女はペスカトーレという単語を初めて聞いたのか、その単語をを最後まで言う事は出来なかった。

しかし、反対にサラダはしっかりとしたアクセントで言えており、その顔からはサラダという食べ物がどんなものか知っているようであった。

「サラダ、サラダ」

背もたれの長い椅子に座り、またもや同じ言葉を連呼する少女は地面に届かない足をバタバタとさせ、親の餌を待つ雛鳥(ひなどり)のように見えた。

「分かってるよ、今作ってるから待ってて」

痩せ形で身長が180cm近くある男は手慣れた手つきでパスタを茹で、その合間にサラダの盛り付けを行っていた。

白雪は目の前のテーブルに置いてある、少女と男の2つのフォークを手に持ち、その2つの大小変わらないフォークをぶつけあわせ不協な音を響かせた。

「こら、白雪何やってるんだ、やめなさい」

相変わらず笑顔な男は、いたずらをした白雪を軽く叱った。

(しつけ)がしっかりしているためか、白雪は男に言われたことはすぐさまやめ二つのフォークをテーブルに戻した。


そういえばフォークで思い出したが、少し前に白雪はこの時みたいにフォークやスプーンを使う食事の際、

自分のフォークとパパのフォークが違うと言って手をつけなかったことがあった。

確かにその時、白雪のフォークはお子様用の小さいものだった。

そのため男はキッチンに置いてある自分とおなじフォークを白雪のフォークを取り換えた。

すると白雪は、男と同じものを使えるからかそれをとても喜んだ。

その時、それを見た男は白雪と同じようにとても喜んだ。


そんなまだ思い出というほど離れていない記憶を思い起こしているうちに大体の調理が終わった。

「ほら白雪、料理が出来たぞ」

料理を見た白雪は一層足をばたつかせながら、目を輝かせた。

「サラダ、サラダ、・・・ペスカトーレ?」

白雪は先ほど男が言っていた料理の品名を曖昧ながらも思い起こした。だがアクセントは定まっていないようであった。

「そうだよ、サラダとペスカトーレ」

ゆっくりとした口調で英単語を教える教師のように男は白雪に新しい単語を教えていた。

「ペスカトーレ?」

ぎこちないながらも白雪はまた新しいものを覚えた。

「そう、ペスカトーレ。それでこの細い麺は・・・」

男が最後まで言い終らないうちに白雪はフォークを手に持って彼をジーっと見つめていた。

「分かった分かった、そうだね早く食べよう」

その言葉を聞くと白雪はパァと顔に笑みを浮かべた、

「いただきます」

白雪は当たり前のようにそう言った。どうやら食事のマナーはしっかりしているようだ。

「どうぞ」

男はそう言った白雪を優しく微笑みかけ食べるように促した。

「ダメ、パパ、いただきます」

ムスッとした白雪は男の方を見て目の前の食事を食べるための手を止めた。

一瞬不意を突かれたかのようが停止した男であったが、少し時間を要して白雪が何を言いたいのか分かった。

「あ〜、いただきます」

男は慌ててそう言った。


その途端、白雪は止めていた手を動かしサラダに手をつけた。


近頃、白雪はものすごいスピードで成長しているように感じる。

特に心が成長しているように思える。しかし、まだそれは身体的な面には反映されないらしい。

本当に白雪の成長には目を見張るものがある。ちょっと前までは全然話せなくて動き回ることもできなかったというのに・・・

白雪は真っ直ぐ成長して、綺麗にな人になって貰いたい。


「・・・パパ、これ」

男はその言葉で思想から現実に戻り、白雪がフォークを持つ手の反対の左手で指す物を見た。

それは、先程男が作ったペスカトーレであった。

男は白雪にスパゲッティを食べさせたことがないという事に気づき、そういえばといった表情(かお)で食べ方の手本を見せた。

「白雪、これはね、こうやってクルクルってやって食べるんだよ」

男は目の前の楕円形のお皿に盛られているスパゲッティをフォークで巻き取り口に運んだ。

それを見た白雪は自分のお皿に向き合い男と同じようにフォークをクルクルと回した。

それを持ち上げると、赤みを帯びたスパゲッティは白雪のフォークに少量巻きついていた。

白雪は勿論それを口に運んだ。だが、まだ初めてという事でしっかりと巻きついていないスパゲッティは、

フォークの隙間から抜け出すようにスルリと白雪の膝の上に落下した。

それを見た男は近くのタオルを台所で濡らして、白雪の膝に落下したスパゲッティとソースを拭きとった。

しかし、スパゲッティは白雪のピンクのネグリジェにうすく赤いシミを残した。

「パパ、ごめんね・・」

白雪は申し訳なさそうに男に謝った。

「うん、よく言えた。偉い偉い」

男はネグリジェを汚したことを怒ることはせず、やはり優しく白雪がちゃんと謝ったことに対して褒め、

申し訳ないような表情を浮かべている白雪の長く伸び、シルクのように柔らかい髪を左の手でゆっくり撫でた。

「・・・ごめんね」

「もういいよ白雪」

男は小さく謝る白雪をゆっくり撫でながらなだめた。

「よし、白雪、パパが食べさせてあげようか?」

そんな謝らなくていいんだよ、と思った男は白雪にスパゲッティを食べさせようとした。

「嫌、白雪がやる」

白雪は自分の力で頑張ろうとしていた。今まではすぐパパに頼んでいたので、またこれにも男は驚いた。

「偉いよ白雪」

そう褒めると、白雪は褒められたのが嬉しいのか男の方に顔を向けてニィと笑った。

そして白雪は目の前のスパゲッティをフォークで巻き取り、ぎこちないながらもしっかりと口に運んだ。

「おいしい」

「そうか、それは良かった」

男は、またフォークとは別の手である左手で白雪の紙を撫でた。

「パパ、あーん」

そう言うと、白雪はフォークをお皿に置き、男の方を向いて口を開けた。

どうやら白雪はやっぱり男にスパゲッティを食べさせてもらいたいらしかった。

成長していると思ったが、やはりこういった所はまだ幼いのだなとつくずく思った。

「分かったよ白雪、ちょっと待っててな・・・はい、あーん」

男のフォークに適量巻きついているスパゲッティを白雪は口を広げて頬張った。

「おいしい!」

白雪はとても喜んだ。

「そうだね」           

男も一緒に微笑んだ、・・・・そう、まるで本当の家族のように。



3



男は当たり前のように白雪のピンク色のネグリジェをゆっくりと脱がして、それを洗濯機の中に放り込んだ。

もちろん白雪は、年齢が年齢なためブラジャーは着けておらず、膨らみの持たない胸があらわになっていた。

そして、男は白雪の肌に着けている最後の衣服であるショーツを、腰を屈めてゆっくりと下ろして行った。

白雪はそれに合わせて足を上げ、ショーツはネグリジェ同様洗濯機に放り込まれた。

「一緒に、お風呂」

白雪は浴室の扉を開けようとしていた。

「そうだね、今日も綺麗に洗ってあげるよ」

そう言うと、男は手際よく自分の衣服を脱いでいきそれらを1つ1つ洗濯機に放り込んだ。

「じゃあ入ろうか」

「うん」

浴室への扉が男の手によって開かれると、白く曇った蒸気が二人を出迎えてきた。

そして二人は客のようにそのまま浴槽に浸かった。

「・・・あぁ・・気持ちい」

温かい液体が男の体を包み込んだ。

浴槽はさほど大きくなく、白雪と男は向き合うな形で浸かっていた。

しばらくすると、男は白雪に浴槽から出るように促した。白雪が浴槽から出るのを確認すると男も続いて出た。

「う〜、洗って」

そう言うと白雪は、浴槽のすぐ隣にあるお風呂用のプラスチック製のイスに腰を掛けた。

「はいはい」

男はタイルの壁のフックにかかっているボディタオルを手に取り、すぐ近くに置いてあるボディソープのボトルをプッシュし

ボディタオルを泡立てていった。

それはすぐ泡立ち、すぐさまイスに座っている白雪の背中にあてがわれた。

男が体全体を洗い終ると、次はシャンプーを白雪の長い髪に含ませた。

「目を瞑って、白雪」

白雪はシャンプーがあまり好きではないのか、目をギュッときつく瞑った。

白雪の髪は泡で覆われていき、だいたい全ての部分を洗われて泡まみれになった白雪は、男の手によって泡を水で流し落された。

「よし、きれいになった。じゃあもう一回暖まろうか」

「うん」

その後、男と白雪は浴槽でおしゃべりなどを交わし、浴室をあとにした。



4



私の隣で寝息をたてているいる白雪、お前は母親のように綺麗に育ってくれるだろうか。

私はお前の事が愛おしくて仕方がないよ。最近はお前の成長を見ているのがとても楽しい。

自分で考えて何かを言ったり、行動で示したりして私に何かを伝えようとする姿。

少し前まではパパとしか喋れなかったのに、いつの間にかいろんな言葉を覚えていた。

おまえが赤ちゃんの時、最初は何をしたらいいか何も分からず育児専門書を何冊か買って、それを読みふけっていた。

そしてその後は、紙おむつ、哺乳瓶、粉ミルク、ベビー服、おしゃぶり・・・、いろんなものを買った。

泣いているときは哺乳瓶を口に当てたり、オムツを確認したり等して、後は育児書と勘だけで頑張っていた。

…白雪、早く大きくなって私を満足させておくれ、早く、早く。

私だけの君になってくれよ、君にとっての世界は私だけなのだから。          

誰にも君を渡さないよ、拾ったのは私なのだから。





=======





そして男は普段と変わらぬまま、大きめのベッドに白雪と寄り添うようにして就寝した。







まだ、お話をあまり書いたことがないので出来はそこそこですが、ここまで見てくださった方はありがとうございます。

出来れば、2話目にすぐに取りかかろうと思うのですが、何せ試験が近いものですから

1ヵ月後ぐらいの執筆になってしまうかもしれません。

その後はたくさん書いていきたいので、どうかよろしくお願いします。と、いうことでうゆでした


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