永遠の偽物。〜アロネット視点〜
「彼女」に体を乗っ取られてから、私の感情がどんどん消えていった。
私ではない「アロネット・ナディア」を受け入れ接する家族や友人、周りの人達を見ていられなくて私は暗闇に籠った。
「アンタさぁ…とっとと消えてくんない?アンタが消えればこの体は完全に私の物になるんだから。邪魔なのよねぇ?」
毎日のように「彼女」から消えろと言われ続け、本当に消えてしまいたいと何度も思った。
本当の私を知る人はもういない。
「アロネット・ナディア」という人物は「彼女」によって確実に変えられていく。
「明日からアロネットも学園に転入か…寂しくなる。パパはいつでもお前を思っているぞ」
「ふふっ!もう貴方ったら。アロネット、魔法のお勉強頑張ってね。ママも応援しているわ」
「ありがとう!お父さん、お母さん!凄い魔法を使えるようになるわ!!」
お父さんとお母さんに笑顔で抱き付き、抱き返される「彼女」。
私ではない私に優しさを向ける両親達の笑顔が何よりも辛かった。こんなに近くにいるのに誰にも私の声は届かない。
もしかしたら、誰かが気付いてくれるかもという思いも既に消えていた。
聖ルナシエ魔法学園に転入すると「彼女」はどんどん友達を作っていった。
色々な人が「彼女」と話すだけで「アロネット・ナディア」という人物を好きになる。
これが「彼女」の使う闇魔法の一つだと知った時は恐ろしくなった。
「皆が私の虜になるのは当たり前。だって、私は愛される主人公の運命なの」
「彼女」は絶対に自分からは他の人に声を掛けない。それは人が自分に寄って来るのが快感だからと話された。
けれど、そんな「彼女」が転入してから初めて自分から話し掛けた人が現れた。
「もしかして、トワ・アトリエス様ですか?」
「…えぇ、そうよ。私に何か用かしら?」
座っている姿勢は真っ直ぐで、堂々とした雰囲気と金色の髪やエメラルドの瞳。
その強い眼差しは凄く綺麗で…彼女の周りだけ空気が違っていた。
暗闇の中でずっと一人でいた私にはあまりにも眩しすぎる人で、私なんかが関わり合える人じゃないと思った。
そして、「彼女」を通して日常を過ごしていると異変が起きた。
学園の皆が綺麗なあの子の存在を忘れていった。
「彼女」もあんなにも目の敵にしていた彼女の存在を忘れ、当たり前の様にしている。
「君がアロネットちゃんー?ふーん…あんまし魔力は無いみたいだけど、ま。いっかー」
皆の記憶から彼女が消え、数ヶ月が経ったある日。突然現れたその人は闇そのものだった。
「彼女」は抵抗したけれど闇魔法によって体が操られ「彼女」も闇に閉ざされた。
意思に関係無く闇の魔力は拡大していき、もう私にはどうする事も出来ない。
このまま全てを闇が呑み込み、私と「彼女」も消えるのだと覚悟した。
けれど、またあの子が私に光をくれた。
「心配無用!このトワ・アトリエスに任せなさい。怖いものなんて何も無い…私を信じて!!
アロネット」
私の名前を呼んでくれた。
私に気付いてくれた。
「彼女」じゃない私の存在を受け入れてくれた。
真っ暗な暗闇の中で彼女の銀の髪が輝き、彼女の伸ばしてきた手を掴んだ。
その手は温かくて、数年ぶりのその温かさを感じた時は言葉にならない程の喜びだった。
「トワ・アトリエス」…貴女は私の光。
外の世界に出て、初めて感じる自分の魔力。
魔力を制御するなんて魔法初心者の自分に出来るのか不安な気持ちが増えるばかり。
(でも、私はもう一人じゃない。
私に気付いてくれた人がいる…私を信じてくれる人がいる!!)
「彼女」の闇にいるだけの私じゃない。
私はアロネット・ナディア。
闇の魔力を保持する者。
「私はもう闇に呑まれない!!」
守りたい人が出来た。
それだけで私の中から力が沸いてくる。
今日からまた太陽の光の下で私は生きていく。




