見付けた真実と私の役目。
タロットが放った破壊魔法を防ぐ為、そしてもう一つの理由の為に私は結界を張った。
ランジェ様の牢屋は謂わば最後の砦。
あの牢屋が彼女の暴走をギリギリ止めていたものだったのだ。
(……………来る!)
結界の強度を強め、気を引き締める。
気を抜いたら最後…アロちゃんの闇に引きずり込まれてしまう。
タロットが彼女の意識を操っているのは一目瞭然で、彼はその行為の危険性を知らないのか。
闇属性の最大の魔法は「操り」。
自分の思うがままに全てを動かせる魔力なのだ。
その闇属性を逆にコントロールしようとしたならばそれは破滅を示す。
保持者の意思とは関係無しに全てを闇に呑み込みまた「黒」に戻すだけ。
光と闇は対の力。
光は「白」に、闇は「黒」に、全てを零に戻す魔力だから属性の中で異質なのだ。
「あははははっ!防御しか出来ないのノアール?!いや、トワ・アトリエス!!」
「っ、タロット!今すぐアロを止めなさい!このままだと大変な事になるわよ?!」
「分かってるよー。全てを闇に…それこそ俺の目的ってーね?」
「?!まさか貴方…?!」
その危険性を知っていて彼女を操ったの?!
アロちゃんを見ると体の周りを黒い霧のようなものが覆い、彼女の目は何も写していない。闇の魔力が本人まで蝕んできていた。
「あーあ…これくらいの闇に耐えられなくてどーするのさタタ、ナナ?」
それまでタロットの後ろに立っていたタタとナナが足元から崩れ落ち、意識を失ってしまった。
確実に闇が広がっている…この結界だってもう少しすれば闇に侵食されてしまう。
タロットは倒れた二人を一瞥するだけで、変わらない笑顔を浮かべていた。
「俺の魔力でもあの闇を押さえ付けるのは難しい。彼女の魔力は微弱だった筈…何故、あんなにも強力になっている?」
「確かにそうなのだ。彼女が転入してきた当初は魔力は良くて中の下…我の認識はそうだった」
「その認識は間違っていない!だが、今の彼女の力は僕らと匹敵…それ以上ある…!!」
リュード達の言葉に私は一つの可能性を見出だす。
確かにアロちゃんを初めて見た日、違和感があった。ゲームでは最強の力を持つ主人公で新入生代表組の私達の誰よりも魔力があったとされていた…なのに、彼女が持つ魔力量はかなり少ない。
(もしかして…!)
私が知らない「彼女」と私が知る主人公の「彼女」…私の考えが正しければアロネット・ナディアの体には二つの精神が存在している。
今、暴走している魔力は本来の「彼女」の方だろう。
闇の魔力には「操り」の他にもう一つだけ他の属性が出来ない魔法がある。
それは他人の体と精神を乗っ取る「憑依」という魔法だ。もし本来の「アロネット・ナディア」に違う人物が憑依していたら今までの違和感の全ての辻褄が合う。
「レイン!アロのオーラの具合で後、どれくらい彼女が保つか分かる?!」
「約三分が限度だよ…!それを過ぎたら全部が闇に呑まれる…!!」
「三分か…十分!その間、タロットの動きを止めていて欲しいの!!」
「な、何をする気だトワ?!」
何かを勘付いたのだろうハルト様に手首を掴まれる。その表情はとても焦っていて、私は安心させるように微笑んだ。
私がしようとしている事は確かにかなりの賭け。
もし失敗したら戻れないかもしれない。
でも、このまま何もせずに私の大切な仲間達を闇に呑ませるなんて絶対に嫌だ。
「霧が一気に広がっています!!」
「風で結界を二重にする!防御は任せて!!」
「俺はその周りを囲む!!」
私の雷の結界にリオネちゃんとミケ君が更に結界を張り、ヴァン君も炎で周りを厳重にした。
その隣ではランジェ様とウルちゃんがタロットの動きを止める為に詠唱を唱える準備をしている。
リリィとハヤテも結界が破られた時に備えて、戦闘体勢に入っていた。
「闇に自ら行けるのは一度だけ…つまり、一人しか無理…本当に行くの?トト…」
「レイン、ハルト…お願い!必ず帰って来るから…だから行かせて!!」
闇は強制的に入ってきたものに対しては拒絶反応を起こし、攻撃を仕掛けてくる。
リュードの魔力で私の気配を消す…気配を「白」にして闇に入れば一度だけチャンスが出来る。
「っ、絶対に帰って来い!絶対だ!!」
「「「「「必ず帰って来て!!!」」」」」
「皆…」
大きく頷き私は駆け出した。
その後ろからリュードの魔法詠唱の言葉が聞こえ、そして私の体が光魔法に覆われたのが分かる。
絶対に皆のもとへ帰るんだ。
「させるかっ!!」
「行かせないよ」
タロットが私に手を伸ばした時、彼の体に蔦が巻き付く。それはあの子の魔法。
彼の手をすり抜け、私は迷わずにアロちゃんの元に広がる闇へ飛び込んだ。
「待ってるからね!トト!!」
レインの声に送られ、私は闇に呑み込まれた。




