永遠の存在。〜ハルト視点〜
ーーーーて、ーーーーきて!!
誰かの声と体を揺さぶられる感覚。
ズキズキと痛む頭。
ーーーーく!ーーーーだよ!!
煩い…僕は寝たいんだ。
彼女がまた僕の前から姿を消した。
やっと会えたのに。
また消えてしまったんだ。
「もう駄目なのか…」
「駄目じゃなーーーーい!!いい加減、起きろ!早くしないとなんだよ!!」
「うぐっ?!」
ドシンと腹に落ちてきた重い何かに強制的に意識が浮上させられ、目を開けるとそこには妖精の大群が積み重なっていた。
それも愛らしい顔とは真逆の鋭い視線で睨まれている僕。小さな妖精達にも関わらず、怖さは十分にある。
『お寝坊さん起きたー!!』
『遅ーい!!』
『急いで行くよー!!』
「ど、何処へ行くんだよ…?」
「決まってるだろう?!トトに会いに行くんだ!いつまで寝惚けているんだよ!!」
「っ?!」
バッと横を向くと腕を組んで僕を見下ろす一人の男がいた。
その男が言う名前に僕は動揺する。
(何で名前一つでこんな慌てなきゃならない…?)
それに、僕はどうしてこんな裏庭なんかで寝ていたんだ。僕は寮の部屋にこもって仕事をしていた筈…それなのにどうして。
ふと自分が調べていた内容が気になった。
学園では王宮に関係する仕事はそんなに溜めてなかった。この僕が仕事を片付けられない訳が無いんだ。
…じゃあ、僕は一体何をそんなに夢中になって調べていたんだろうか?
『考えてないで行こーよー!!』
『早く早く早くー!!!』
『トワが危険なんだってばー!!』
「……………………トワ?」
妖精達は弛い喋り方をしているが、行動はかなり焦っているようだった。
僕の服を引っ張り、必死に何処かへ連れて行こうとしている。
そして、僕は「トワ」という名前にまた動揺しているのだ。
自分の感情が良く分からない。
いつまでも寝ている体勢のままでは駄目だと思い、立ち上がろうとした瞬間、気付いた時には体は浮遊感を感じていた。
自分の今の体勢を自覚した時には既に俺は見知らぬ男に俵抱きにされていたのだ。
「忘却魔法が二重にかけられてるから、そう簡単には思い出せないか…会わせた方が早い!!」
「な?!お、降ろせ貴様!!
急に現れて何なんだ?!僕を誘拐する気か?!」
「そんな事言ってる場合じゃないから!眠りから目覚めた瞬間に全部また忘れてるとか…本当にとんでもない魔力だよ!光魔法!!」
暴れるが男の力は強くびくともしない。
このまま誘拐問題にでもなったら大変どころじゃ済まされないぞ。
しかも、男である自分をこうも軽々しく持ち上げられるのは僕のプライドが許さない。
魔力を発動しようとすると同時に男の足元が光り、現れた魔方陣を見るとそこには歴史学の授業で習った模様が描かれていた。
それは妖精王達を示す模様だと教師が言っていたのを思い出す。
(まさか…この男が妖精王?!)
あり得ない数の妖精達とこの魔方陣。
「妖精王」と認識した時、またあの頭痛が僕の頭を襲う。…本当に何なんだ。
「っ、このままじゃトトが危ない…!ハルト!しっかり掴まっててね?!」
「お前っ僕を知っているのか?!っ、トトって…トワって一体誰なんだよ?!」
あぁ、思考がもう追い付かない。
眩しい光に包まれ、強くと目を瞑る。
次に聞こえた音はドンッという重々しい音だった。
何が起きたのかを知る為に目を開けると、僕の前には銀の色を持つ女の子がいた。
目が合った瞬間に名前を聞いた時とは比べ物にならない程、僕は動揺した。
「………君が…トワ…?」
妖精達が言っていた名前。
彼女がこの妖精王と妖精達が急いでいた理由なのだろうか。
彼らが何故、僕をここに連れて来たのかも全く分からないのに…どうして僕は彼女に会ってこんなにも安心して泣きたくなっているのか。
「良く耐えてくれたねリリィ、ハヤテ。ここからは……容赦はしなくて良い」
妖精王はそう言うと僕を肩から降ろし、後ろを振り向いた。泣きそうな笑顔と一緒に。
ザワザワと心の奥底で何かが僕に囁いてくる。
それは決して悪いものではない。
むしろ、とても大切な何かを呼び覚ましている。
「~~っ、お帰りなさい!トト!!」
「レイン…ただいま!!そして、ハルト様…やっと、やっと貴方とこうしてちゃんと向き合えましたわ!!」
「……………、」
目に涙を浮かべて微笑む彼女を見て僕は心臓が壊れてしまうのではないかと思う程、高鳴った。
僕はこの感情を、そしてこの感情をくれた君を知っている。
「トワ…ありがとう」
また僕らのもとへ帰ってきてくれて。
君をずっと探していた。
人前で泣くなんて僕らしくないが…今だけは許して欲しい。愛しい君に会えた事の嬉しさが抑えられそうもないんだ。
「土咲の牢」
友人の声が聞こえ、レインが作った土の壁が崩れると黒いローブを着た三人組とアロネット・ナディアが土の牢屋に入れられていた。
それに続き、狼と鳥の鳴き声がしたかと思うと一瞬にしてトワを囲むように現れたリリィとハヤテ。
その背にはヴァン、リオネ、ミケ、ウルネロ、そしてランジェの全員がいた。
「あーあ。面倒な奴ら全員揃っちゃったじゃーん…最悪ぅ…」
トワとの再会を喜ぶのは彼らをどうにかしてからの様だ。
深緑色の髪をした男はへらへらと笑っていた表情から一変、舌打ちをすると破壊魔法を発動した。
ランジェの作った牢屋が壊れる前にと全員が彼らに攻撃をしようとした時、僕らの周りをバチバチと雷の結界が覆った。
それは随分と久しぶりに見る彼女の魔法。
「タロット…貴方の思い通りにはいかないわ」
不謹慎にも彼女の魔法をまた見れた事がとても嬉しくて、僕は興奮する気持ちを抑えるようにギュッと手を強く握った。




