作られた繋がりと壊された繋がり。
記憶を取り戻してまず最初に思う事はレインに対しての私の言動の事だった。
裏庭でレインに会ったあの時、まだ忘却魔法の力が強力で私は彼を思い出す事が出来なかった。
記憶があやふやで知らない何もかもが怖かった私にはリュードが全てで…レインは必死に私の名前を呼んでくれたのに。
大好きな彼を全身で否定してしまった。
「今、思い出しているのは妖精王か?それともハルト王子?」
「…!そんなに顔に出てた?」
「君は分かりやすいからな。妖精王の事なら心配しなくても…そろそろ彼の方から現れるだろう」
「え?」
リュードの言葉と共にサァァァと柔らかな風に草木が揺られ、微かに薔薇の香りがした。
そして香りが強くなったと思うと突然、私の周りに薔薇の花びらが舞い落ちる。
薔薇は私と彼の花。
私は無意識に唇をグッと噛み締めていた。
「……っ、トト!!!」
「レイン…」
真っ赤な薔薇色の髪と虹色の瞳、今の私はその姿を見て彼の名前を呼べる事が何よりも嬉しい。
力一杯、私はレインに抱き着く。
消えていたレインとの主従契約の証も指に再び現れ、私の中に彼の魔力が流れ込んでくるのが分かる。
それと一緒に火の妖精王と水の妖精王との契約の証である炎と雫の模様も手に浮かび上がった。
「お帰り…っ、トト…!」
「やっと見付けたぜ。これで安心だな」
「妖精達の涙を見るのは辛いぞよ。…闇の子も元気そうで何よりぞ」
「はぁ…君達も来たのか…」
忘却魔法の効力が切れた事で、私の魔力の気配がレイン達に通じるようになった。
契約の証も元に戻り、私と彼らとの繋がりがまた作られたという事。そして、忘却魔法によって「白」にされていた私の居場所もまたレイン達に分かるようになったのだ。
「闇の子。貴様の野望とやら…完璧とは言い難いぞよ。もう良いのか?」
「……分かっているくせに聞くのか」
「ふん、ミイラ取りがミイラになったな」
「ははっ…全くだ」
リュードは微笑むと私の手に触れた。
その手は冷たくて、でも手の冷たい人は心の温かい人だという話を思い出す。
「闇の子」と呼ばれる彼は本当は「光の子」。
「生」と「陽」を司る光の魔力。
「この世界を闇で染める、お前の組織の力はこの国の全部を覆っているくらいだ。そう簡単に闇の勢いは止まらねぇぞ」
「一番、厄介なのは闇の子…貴様じゃなく、貴様の部下ぞよ」
「…どういう意味だ」
「こういう意味だーよ」
声がした上を向くと楽しそうに木に座るタロットがいた。
その笑顔が何故かとても怖く感じる。
今すぐこの場から逃げ出したいと思ってしまうくらいの恐怖だ。
タロットは最悪ーと言うと木から私達の前に飛び降りた。
緩やかな口調はいつもの彼と同じなのに、感じる魔力も雰囲気も肌を刺すような鋭さ。
「もっと組織に尽くしてくれるボスだと思ったのになぁ…期待外れだったよー。ショックだわー」
「タロット、お前…何を考えている」
「俺の望みは一つだーよ?この世界が絶望と闇でいっぱいになる事。皆みーんな闇に堕ちると良い…ねぇ?」
「?!」
タロットが指を鳴らすと彼の影から出て来たのはアロちゃんだった。
その瞳は虚ろで、手をダランとぶら下げ佇む姿はあの元気な彼女とは似ても似つかわない。
(何で…こんな事に…。)
今の状況は私が想定していたよりも何倍も何十倍も最悪な展開になってしまった事だけは言える。




