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永遠の愛しさ。〜ハルト視点〜

祝ブックマーク100件越え!

登録して下さった方々、ありがとうございます!

僕の名前はハルト・トレアスニカ。


突然だが、僕は人が大嫌いだ。


嘘だけを身に纏った大人。

地位と容姿だけにしか興味が無い女達。


嘘の笑顔で囲まれて過ごす日々は、窮屈で退屈で息が詰まりそうだった。


婚約者を選ぶ為に候補者の女達と会って話をして、その度に酷い吐き気に襲われていた僕はもう限界だった。


嘘で塗り固められた僕の世界は真っ暗な闇に覆われ、喜びや楽しさといった感情を忘れていくには十分で、どうやって笑うのかすらも忘れた。



そんな真っ暗な闇の僕の世界に、不思議な女が現れた。


その女の名はトワ・アトリエス。

この国を支える重要な家の一つ、アトリエス家の令嬢だ。


噂では傲慢、我が儘、自己中という僕が最も嫌いな女の類い。

そんな女が僕の婚約者候補だなんて最低最悪の気分になるのは当然だろう。


しかし、数ヶ月前からその女の悪い噂が無くなり始め、今ではその女の作る薬は神の薬だという何とも信じがたい話が国中で流れ始めていた。



「お前も婚約者候補のトワ・アトリエスご令嬢の噂は既に耳にしているであろう。

素晴らしいご令嬢じゃないか、是非とも彼女の作る神の薬というものを見てみたいものだ」

「父様、あれはただの噂話でございます。

その様な怪しげな薬、大変危険な物ではないかと思われます」

「ハルト……お前は子供なのに冷静すぎるぞ。もっと様々なことに好奇心を出してみよ」

「そんな身を危険に晒す好奇心という感情など僕には必要ありません」



この様に、父様…というか城中がトワ・アトリエスに興味を示していた。


十分な知性と家柄、膨大な魔力、そして聞けば容姿も良いと言われている女。

不本意だが、僕の婚約者候補としてトワ・アトリエスは最有力候補とされていた。


そんな条件揃いの女に、神の薬を作れるという事実が加われば婚約者に決まったも同然だった。


婚約者選びは僕の意思を尊重すると父様が言って下さったが、既に無言の威圧感はあった。

流石、この国の王だけあって我父親ながら尊敬する。



そして、とうとうトワ・アトリエスの誕生日パーティーに出向く日となった。


初めて会ったその女は確かに聞いていた通り、容姿は良かった。


最初の印象としては、僕を見る気の強そうな瞳が他の女達と違うようなそんな違和感を覚えたくらいだったが、すぐに気のせいだと思い、あまり深く考えなかった。


だが、その時の僕の感じた妙な違和感は当たっていた。


いつも通り、思ったことをそのまま遠慮も無しに言い、他の女達と同じ様に泣くかと思ったら、あろうことかトワ・アトリエスは僕の顔を掴んで説教をしてきた。


しかも、最後にはぶん殴るとまで脅された。


僕は気付いたら大爆笑していた。

普通のご令嬢なら言わない発言と馬鹿正直に僕相手に啖呵を切るその姿に笑いが収まらなかった。



いつ以来だろうか。

僕がこんなにも我慢出来ずに笑ったのは。


笑い方なんて、とっくの昔に忘れていたと思っていた。


トワ・アトリエスと話すと自然に笑いが込み上げてきて、楽しいと素直に思えた。

もっとトワ・アトリエスという女のことが知りたくなった。


父様に言われた好奇心という気持ちが沸き起こる。

いや…好奇心よりも、もっとずっと強い感情だ。



僕はその日、正式にトワを婚約者に決めた。

父様に言った時は、ニヤニヤとした笑みを浮かべられたがそこは無視した。


あのトワと出会った日から嘘だらけだった僕の真っ暗な闇の世界が一瞬にして変わった。


僕の中で、彼女と会う日々が何よりも大切なものとなった。

以前の僕じゃ考えられないことだ。



「トワ!今日の土産は珍しいワムの実を持ってきてやったぞ!」

「ちょ、ハルト様?!こんな大量のワムの実を私にどうしろと?!」

「トワは甘い物が好きだと言っていただろう。

遠慮はいらないぞ。何せ僕はトワの婚約者なんだからな」

「お言葉ですが、限度という言葉を辞書で引いてみてはいかがですかハルト様…」



大量に積み上がったワムの実を見つめるトワが可愛くて仕方が無い。

これが「愛しい」という感情なんだろう。


僕はまた声を上げて笑った。

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