3 状況説明? いえいえ、自己紹介的な何かですよ。
あてがわれた部屋で、少しだけ気をゆるめた。
あぁ、心の内から言葉遣いに気をつけないといけないかしら?
うん、無理。
でも、はぁ、もう、眼福よ、眼福。
何、あの麗しさ、おかわいらしさ!
思い出すだけで、もう食が進みそ、まっ、コホン、いやだわぁ、私ったら。
柔らかそうでいて、艶やかな黒髪、まるで天使のような美しいお顔にはトパーズのような褐色の目、すべすべのお肌。
同い年の16歳だというのに、私の肩より少し高いだけの身長に華奢なお体。
そう、殿下は10歳のお姿のまま、成長が止まっている。
何を隠そう、わが国の宝とも言うべき第三王子殿下は、呪いつき。
そして、幸運にも、私は美少年愛好家!
全くもって、ツイテるわ!
ちょっと待って、美少年をはべらして、あ~んなことやこぉ~んなこととかしてないから、ひかないで!
早い話が、適齢期なのに、こんな趣味(性癖ではない!ここ、重要!)なのを憂いた両親&姉弟たちの苦肉の策が今回の側室計画だったわけで・・・。
ほんと、眼福を得られるだけで幸せ~!
えと、まぁ、ねぇ、妄想が暴走することもたまにはあるけど、私の頭の中を知られなければ、誰にも迷惑をかけないわけだしねぇ。
それに、第三王子の殿下には、確実にお世継ぎが求められているわけでもないし、っていうか、無理だし。
側室になれたら、あんな眼福を毎日得られるという幸福な日々を送れるだろうけれど、そこまでの野心なんかないわぁ。
絶対、お父様が心労で倒れるわ、うん。
「アリシア様、ちょっと聞いてらっしゃいますか!」
「え? 何かしら? エリー?」
「まぁ、また、妄想してやがりましたわね、お嬢様・・・。」
「えぇっと、エリーさん、淑女がそのような言葉を発しては
「人の苦労も知らないで、全く何をお考えになってらっしゃるんだか!そりゃあ、言葉も悪くなりましょうとも!」
「うっ。ご、ごめんなさい。」
「ま、良いですわ。それよりも講義では節度を持って行動なさって下さいね!」
「え、えぇ!わかって、いえ、無論そのつもりですわ。」
「でないと、旦那様へ報告させていただきますからね、い・ろ・い・ろ・と。」
「ひぃぃ~~~っ。そ、そりゃあ、色々無茶頼んじゃったりしてるのは申し訳ないけど、そんなに怒らなくったって。」
恐すぎですよ、エリーさん。
私と似たような容姿してたって、あなたの方が目鼻立ちの整った美人さんなんですから、断然恐いんですよ!
「はぁ、もう少しご自覚いただければ、私の心労も減るのですが・・・。ともかく、アリシア様がしっかりして下されば、私は何も申しません!」
「えーっと、エリーさん?そ、そろそろ、侍女モード終わりにしとかないかな?」
休戦を申し込みつつ、お茶になだれこませた。
「ふぅっ、きょうも紅茶がおいしっ!」
「また、そんな古いネタを。」
「いいじゃない、これくらい。負け狼組の方が萌えるけどね!」
「あなた、あの商家に消されるわよ、こんなネタやってると。」
「てへっ。」
「まぁ、いいわ。それで、明日からの予定、ちゃんと把握してるの?」
「にらまないでよ~。美人さんだと迫力が、い、いえ、はい、真面目にやりまーす!」
「えーっと、明日は殿下と歴史の講義をご一緒に受ける、で、その後は、礼節を側室候補の方々と一緒にお勉強。で、殿下や姫君とたまにお茶やお食事をしつつ、適度に人間関係を作れと。」
「・・・アリシア、そこで間違っても側室になれるように頑張ると言わないのは、空気を読んでるの?いえ、面倒くさいだけよね。」
「もちろん、空気読んでるに決まってるじゃない。堅実にいかないと!小さなことからコツコツとよ!私の『老若男女の美人さんに世話を焼かれながら過ごす優雅な老後計画』の為に!」
「・・・殴るわよ。」
「たんこぶできた~~!!!普通殴る前にいうセリフじゃないの?」
「何?次の予告って事にしてもいいのよ。」
「申し訳ございませんでした。」
上から目線で見下ろされても、美人さんなら大丈夫!
「は、いかんいかん、新たな境地に至ってしまう所だった。」
「何か言った?」
「いえいえ、何でもございませんですよ、ハイ!さぁ~って、明日の予習でもして、早く寝ようかなぁ~っと。」