45話 文化祭に向けて 西中1年1組 丸山友理奈
学校群になって、文化祭が土曜日になった。
11月1週目が西中、2週目が東中の文化祭。それぞれの文化祭の翌月曜日が振替休日になる。ただし、休みになるのは自分が在籍する学校の文化祭の翌日だけだ。
私のいる合唱部は、夏休み前から、文化祭とその後に控える外部のコンクールに向けて動き始めた。文化祭で発表する曲と、コンクールでの曲は同じになる。それはいいんだけど、問題は文化祭。今年の文化祭で、どうやって合唱部が出演するのかまだ決まっていない。
普段は西中、東中合同で活動している。活動場所は西中の音楽室。東中の子は西中まで移動時間があるせいか、西中の方が部員数は多い。西中だけ合唱部の発表をするのか、東中では合唱部の発表をやらないのか。生徒は自分の学校だけに出演するのか。去年までは、平日に文化祭をしていたから、自分の学校だけにしか出なかったが、今年はどちらの学校にも出演可能になる。
合唱部は1年生が多く、2、3年生は合わせても数人しかいない。先輩達も、私たちはどっちでもいい、1年生の意見を優先してと言っている。自分の学校だけに出たい人と、両方の学校に出たい人と意見が分かれた。そもそも東中の部員は少ないから、合唱部の発表はやらなくてもいいのではないかという意見もあった。
私は折角だからどっちにも出たい。もっと練習を増やしたい。週3回しか練習ないんだけど。
「遅くなりすいません」
いつもの放課後、練習が始まって30分くらいしたときに、東中の佐竹莉子が現れた。この子はいつも遅れてくる。移動時間がかかるとはいえ、他の東中の子がもう来ているのに。
「佐竹さん、いつも遅くない?」
私は思わず、口に出してしまった。
「ちょっと、先生に呼ばれて」
佐竹は、目をそらした。
「練習、再開しましょ」
気まずい雰囲気になりかけたが、先輩がとりなした。
練習が再開したが、出遅れた音が聞こえる。ちらりとふりかえると佐竹だった。時間だけでなく、音も遅れている……。
「10分間休憩」
私は佐竹に近づいた。佐竹は椅子に座って、休憩している。
「佐竹さん、時間だけでなく、音も遅れているよ」
「そうだった?」
佐竹は私を見上げる。
「んー。佐竹さん、今日は、焦っているのかもよ。天気も悪いし、東中からの道のり大変だったでしょ。」
東中の先輩が佐竹をかばった。
「でも、いつもそうじゃない?」
「そうかもしれないけれど、そういう言い方しなくてもいいんじゃない。休憩は終わりよ。ちょっと文化祭について決めないといけないわ。みんな集まって」
先輩は話を変えた。音楽室の正面にはグランドピアノがあって、後ろには黒板がある。その黒板の前に部長は立った。部員たちは椅子をもって後ろに集まる。部長は西中の3年生。
「先ず、西中で文化祭の発表することは決定しています。 問題は3つ。西中の発表に東中の生徒は出るのか、東中の文化祭で合唱部の発表をするのか、そこに西中の生徒は出るのか、今日全部は決められないと思うけれど、皆の意見を聞きたいです」
私の答えは、決まっている。一番に手を挙げた。
「西中の文化祭に、東中の生徒も出て欲しいです。東中の文化祭にも発表したいです」
「丸山さん、やる気あるねえ。コンクールも期待しているよ」
先輩がほめてくれた。
「あの、西中の文化祭の日、塾があって」
佐竹が言いにくそうに言う。
「そうだよね、土曜日だもんね」
「私も、東中の文化祭いけないかも」
次々と、1週目も2週目も土曜日空けるのは難しいという声が上がった。




