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飯が美味すぎて、気づけば世界を支配していた。 ~無限魔力の料理人、物流と教育で最強国家を作る~  作者: 慈架太子


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85/107

85:職人街

 技術集中。


 朝。


 鍛冶都市区画の空気は熱かった。


 鉄を打つ音。


 蒸気。


 炭火。


 火花。


 巨大なハンマー音が街中へ響く。


 カン。


 カン。


 カン。


 規則正しい音。


 その音を聞くだけで。


 人は理解する。


 この街は生きている。


 クルザードは職人街中央の高台から、その景色を見下ろしていた。


 道路は広い。


 荷車が止まらない。


 物流ゴーレムが鉱石を運ぶ。


 水路が冷却水を流す。


 風魔法で排煙を制御。


 つまり。


 工業そのもの。


 ガルドが隣で笑った。


「最初は小さな鍛冶場だったんだがな」


「人が集まり過ぎた」


「止めてないからな」


「普通は止めるぞ」


「何故?」


「技術流出だ」


 クルザードは静かに答えた。


「逆だ」


「集中した方が強い」


 それがこの国の考え方。


 閉じ込めない。


 集める。


 人。


 技術。


 知識。


 全部。


 つまり。


 技術独占とは。


 隠すことじゃない。


 “ここが一番進んでいる状態”を維持すること。


 だから。


 職人が集まる。


 他国ではありえない。


 ドワーフ。


 エルフ。


 人間。


 獣人。


 全部同じ工房で働いている。


 種族差がない。


 実力だけ。


 その光景に。


 他国から来た鍛冶師達は完全に衝撃を受けていた。


「ドワーフが技術を教えてる……」


「ありえねぇ……」


「秘伝だろ普通……」


 ガルドは鼻を鳴らした。


「隠して衰退する方がアホだ」


 その通りだった。


 技術は回る。


 回った方が進化する。


 クルザードはそこを理解している。


 だから。


 教育がある。


 冒険者学校。


 工房学校。


 薬学棟。


 建築科。


 鍛冶学科。


 全部繋がっている。


 つまり。


 “人材供給”が国家戦略。


 職人街中央。


 巨大掲示板。


 依頼が並ぶ。


『包丁製作』


『保存容器量産』


『蒸気圧試験』


『冷蔵庫部品』


『下水管整備』


『劇場照明』


『海上輸送用金具』


 仕事が尽きない。


 つまり。


 食える。


 だから人が増える。


 昼。


 職人街食堂。


 肉汁たっぷりの鉄板焼き。


 味噌煮込み。


 焼きたてパン。


 濃いスープ。


 汗だくの職人達が飯をかき込む。


「くっそ美味ぇ!」


「肉追加!」


「酒!」


 食う。


 働く。


 技術が回る。


 経済が回る。


 クルザードは食堂を見ながら言った。


「職人は体力だ」


「飯をケチるな」


 ジェシカが笑う。


「本当に全部そこへ戻るわね」


「食は基礎だ」


 実際。


 この国の職人は強かった。


 栄養状態が違う。


 病気が少ない。


 風呂がある。


 医療がある。


 つまり。


 働き続けられる。


 それだけで。


 技術力は跳ね上がる。


 午後。


 工房区域。


 アランが金属を操っていた。


 液状化。


 精製。


 不純物除去。


 その横で。


 ドワーフ達が目を見開く。


「なんだその制御……」


「金属純度が異常だ」


 アランは汗を流しながら言う。


「この国来てから精度が上がった」


「設備が良い」


「飯が良い」


「寝れる」


 つまり。


 環境。


 人材は環境で変わる。


 クルザードは理解していた。


 だから。


 居住区も整備した。


 風呂。


 暖房。


 水路。


 下水。


 全部。


 つまり。


 職人のため。


 ベッティーナが工房街を歩く。


 周囲の警備兵より。


 職人の方が強そうだった。


 実際。


 強い。


 毎日鉄を振るう。


 筋力が違う。


 さらに。


 武器理解もある。


 盗賊など近寄れない。


 過去。


 一度だけ盗賊団が職人街を狙った。


 結果。


 三分で制圧。


 鍛冶ハンマーで全滅。


 その噂が広がってから。


 誰も近づかない。


 つまり。


 “なんかこの街強い”。


 夕方。


 職人学校。


 若者達が学んでいた。


「鉄温度を見ろ」


「色で分かる」


「赤じゃ遅い」


「白寄りだ」


 ドワーフ教師。


 人間生徒。


 エルフ生徒。


 獣人見習い。


 全員真剣。


 クルザードはその様子を見ていた。


 マチルダが隣で言う。


「普通、技術って血族独占よ」


「それだと国が弱い」


「でも強い家は得するわ」


「短期ならな」


 クルザードは視線を上げた。


「長期だと死ぬ」


 技術独占。


 閉鎖。


 停滞。


 つまり。


 衰退。


 この国は逆。


 全員強化。


 だから。


 進化速度が異常。


 ジェシカの薬学区画でも同じだった。


 保存薬。


 治癒薬。


 消毒液。


 乾燥薬草。


 大量生産。


 さらに。


 冒険者学校回復科が人材供給。


 つまり。


 医療も回る。


 国家全部が繋がっている。


 夜。


 職人街は止まらない。


 街灯。


 蒸気灯。


 光魔石。


 深夜でも工房が動く。


 他国ではありえない。


「夜に工房だと……?」


「危険だろ……」


「暗いだろ……」


 でも。


 この国は明るい。


 道路整備。


 警備。


 下水。


 全部ある。


 つまり。


 夜間労働が成立する。


 しかも。


 無理はしていない。


 交代制。


 休憩。


 飯。


 風呂。


 睡眠。


 全部管理。


 だから。


 壊れない。


 工房中央。


 巨大蒸気機関試験。


 シュウウウウウ……!!


 蒸気が吹き上がる。


 ドロテアが魔力制御。


 ガルドが圧力調整。


 アランが金属固定。


 全員連携。


 クルザードは静かに見ていた。


 その瞬間。


 鑑定が走る。


【蒸気圧効率:最適化可能】


【熱循環:改善余地あり】


【耐久率:向上可能】


 昔なら。


 情報が多過ぎて頭痛になった。


 今は違う。


 意味が見える。


 つまり。


 成長している。


 クルザードは静かに言う。


「配管を二重化しろ」


「蒸気逃がすな」


 ガルドが目を細めた。


「……見えてるな」


「ああ」


 鑑定が。


 “使える”になっていた。


 工房がさらに進化する。


 蒸気圧。


 冷却。


 金属純度。


 全部上がる。


 つまり。


 技術爆発。


 ヴァレリアは帳簿を見て頭を抱えていた。


「利益が意味分からない」


「増え方がおかしい」


「物流も止まらない」


 当然だった。


 この国は。


 一次産業。


 二次産業。


 三次産業。


 全部が同時成長している。


 農地。


 工業。


 文化。


 医療。


 娯楽。


 つまり。


 国家全部が強い。


 夜更け。


 職人街食堂。


 職人達が酒を飲む。


 笑う。


 語る。


「次は蒸気船だ」


「もっとデカい炉を作る」


「冷蔵庫量産だ」


「海運伸ばすぞ」


 全員。


 未来を語る。


 それが異常だった。


 普通の国は。


 未来がない。


 税。


 飢餓。


 徴兵。


 だから。


 人は黙る。


 でもこの国は違う。


 働けば伸びる。


 つまり。


 夢が現実になる。


 ティグリスが串肉を齧りながら笑った。


「この国、働き過ぎじゃねぇか?」


「働きたい奴が多いだけだ」


「止めねぇのか?」


「止める理由がない」


 ただし。


 無理はさせない。


 クルザードはそこだけは徹底していた。


 休養。


 医療。


 栄養。


 全部用意。


 つまり。


 長く回す。


 国家運営とは。


 短期爆発じゃない。


 百年単位。


 職人街の煙突から煙が上がる。


 夜空へ伸びる。


 その光景を。


 遠方から来た商人達が見ていた。


「……あれはもう国じゃない」


「文明だ」


 誰かが呟いた。


「勝てるわけがない」


 その通りだった。


 技術。


 人材。


 物流。


 教育。


 全部集中している。


 そして。


 人が死なない。


 飯が美味い。


 居心地が良い。


 だから。


 さらに人が来る。


 職人街。


 そこは。


 この国家の心臓だった。







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