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29話 まるで付き合いたてのカップルのような

「ごっ、ごきげんよう! 椿さん!」



 教室に入った椿を真っ先に出迎えたのは、他でもない恵奈千鶴子本人だった。

 仄かに湿布の特徴的な匂いがする。


 少し上擦った声の挨拶に椿が放心していると、間に耐えきれなくなったのか、千鶴子の顔はみるみるうちに赤くなり、ぷるぷると震え始めた。なんなら涙ぐんでいる気もする。

 いけない、突然のことにすっかり返事が疎かになってしまった。

 

 どうしよう、脳内でシュミレートしてきてはいるけど、いきなり出会い頭に挨拶されるとは思ってなかった!!

 挨拶って本来そういうものだけど!!



「ごっ、ごごごきげんよう!! ちっ、ちちちちち千鶴子ちゃ……さん!!」


「あえっ!? はっ、はいっ!! ごきげんよう!!(2回目)」


 

 うふ、うふふ、おほほ。

 と、ぎこちない空気が二人の間を通った。それはさながら付き合いたてのカップルのような。


 そしてふと、先日の一件が頭をよぎった。




_______________わっ、わたくしとお友達になってくださいませ!!





 うふ、うふふ、ぐふふふふふふ……

 友達。なんていい響きなんだろう。

 なんだか付き合いたてのカップルのようなぎこちない空気感ではあるものの、友達だ。紛うことなき友達だ。


 そう考えると、嬉しそうに頬を赤らめる彼女がとても可愛らしく思えてきて、今すぐにでも抱きしめたくなった。断じてロリコンではない。



 二人して教室の入り口で向かい合っていると、背後から声をかけられた。




「あの、千鶴子ちゃん、五条さん……? なんかすっごい顔赤いけど、大丈夫……?

 それと、入り口でみんなが教室に入れないから、ちょっと避けてもらえると……嬉しいかな……って……」



 そこに居たのは、少し困った顔をした星野くんだった。

 たくさんの人が彼の背に集まっているところを見ると、きっとパイプ役を押し付けられたのだろう。

 慌てて千鶴子と共に道を開けると、安心したようにぞろぞろとみんなが教室に入っていく。



「そう、ですわね。椿さん、では……今日も一日、よろしくお願いしますわ!」


「ええ」



 それだけ言うと、千鶴子は軽い足取りでいつものグループに戻って行った。



「五条さん」



 そして椿も自分の席に着くと、今度は星野くんに声をかけられた。



「あら、星野くん。なんですの?」


「いや、ちょっと話したいことがあって」



 そう言うと、星野くんは嬉しそうな顔で小声で話し始めた。



「実はね、ずっと気になってたんだ。五条さん本当はいい人なのに、みんな怖がっちゃうの……」


「それは……仕方ありませんわ。お家の事情もありますけど、なによりもこの顔じゃ」



 はっ、と自嘲気味に笑うと、星野すんは誤魔化すように笑った。否定はしてくれないのか。



「でも、ほら、遠足の一件が広まってね、みんな五条さんのこと、かっこいいって!」


「ああ、それで……」



 なにをどう伝わっていったのかは知らないが、それなら朝からのあの変化も納得だ。

 今も現在進行形で、遠巻きにヒソヒソと噂されているのがハッキリとわかる。



「千鶴子ちゃんとも仲良くなってくれたみたいで、よかった。……五条さん?」


「っ……な、なんでもありませんわ!」



 いけない。

 『ともだち』だの『仲良し』といった類の言葉を聞くと、頬が緩んでしまう。

 椿と千鶴子はなかよしフォーエバーではあることは事実だが、だらしなく緩んだ顔の五条 椿は見たくない。



「でも、少し寂しいな……」



 そういうと、星野くんは少し寂しそうな顔をした。




「ん? なにがです?」


「いままで、僕いつも五条さんと一緒にいれたから一人にならなかったけど、五条さんが人気者になったら、僕なんて近づけなくなっちゃうんだろうなーって……」


「っ……! そんなことありませんわよ!」



 椿は思わず、大きな声を上げていた。





キリが悪くてすみません

感想、嬉しいです´`*

いつもありがとうございます

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