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「こうくん、起きなさい! 遅刻するわよ!」

 次の朝、こうくんはママに起こされて目が覚めました。


「わあ、こんな時間!」

「早く着替えてご飯食べちゃいなさい」

 いつもなら、とっくにごはんを食べている時間です。こうくんは、あわただしく着替えて顔を洗うと、テーブルに座りました。今日はお豆腐のお味噌汁と卵焼きです。


「急いで食べちゃって!」

 パパはもう会社に行ってしまいました。ママも、洗濯をしたりお仕事に行く用意をしたりしていて忙しそうです。


「こうくん、昨日は遅くなってごめんね。今日は昨日ほどは遅くならないと思うけど、それでも4時までだから、少しだけ一人でお留守番していてね」

 ママは、スーパーでパートとして働いています。こうくんの帰る時間に合わせて仕事を終わらせますが、忙しいときはちょっと遅れることもあります。


「うん。ねえママ、今日帰ったらりゅうくんと遊んでもいい?」

「いいわよ。でも、暗くなる前に帰ってくるのよ」

「わかった」

 りゅうくんはきっと、今朝もえらそうにいつものところで待っているでしょう。でもこうくんは、早くりゅうくんに会いたいと思いました。

 りゅうくんに大きな声で、おはよう、と言うんだと、こうくんは決めていました。


「ごちそうさま。行ってきます!」

 こうくんは、青いランドセルを背負います。白い翼はついていません。


「気をつけてね。忘れ物はない?」

「うん! あ、おばあちゃんに行ってきます、するの忘れた」

 あわてて玄関から戻ってくるこうくんを見て、ママが笑いました。

「本当にこうくんは、おばあちゃんっ子ね」


 こうくんは、窓辺に近づくと二つの写真の前でにっこりと笑いました。

「おばあちゃん、行ってきます」

 写真の中のおばあちゃんも、にっこり笑っています。隣にはおじいちゃんの写真もありますが、おじいちゃんはこうくんが生まれる前に亡くなってしまったので、こうくんは会ったことがありません。

「じゃあね、ママ。今度こそ行ってきまーす!」


「いってらっしゃい!」

『いってらっしゃい』

 二人の声に送られて、こうくんは元気に登校していきました。

 

 ランドセルの翼は、こうくんとおばあちゃんだけの、秘密です。


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