第86話 VSナーグ ”不安”
今回は礼治がフール達に助けられた時から時間を少し遡った話になります。
俺がフール達に救出された時から俺がギルドから消えた時にまで遡る。
〜視点:フール〜
「礼治様ーーーー‼︎」
私達の目の前で礼治様が何者かに連れ去られました。
私は礼治様のお側にいたにもかかわらず、後一秒でも早く気づき、手を伸ばしていたら礼治様を連れ去られずに済んだかもしれないのに、私は礼治様を御守り出来ませんでした。
(どうしよう私のせいで礼治様にもしものことがあったら…私は…)
そう思った瞬間、私はギルドの扉に向かって走り出そうとしました。
「はいストップー」
しかし、ハングが私の目の前に回り込み、両手を広げられ、出口に向かうことが出来ませんでした。
「なあフールー、あんたは何処に行くつもりだー?」
「礼治様のところに決まっているでしょう!早くそこを退いて下さい‼︎」
急いで礼治様を助けに向かわなければいけない私の邪魔をし、更にハングの語尾を伸ばす喋り方に対し私は強い口調でハングの質問に答え、退くよう指示を出しました。
「そうじゃなくてー、レイジが何処に連れ去られたかをー、あんたは知ってるのかー?」
「それは……」
そう言われた私は言葉を詰まらせました。
「どうせあんたのことだー、レイジを連れ去られたあまりー、何の考えもせずにー、レイジを捜しに行こうとしてたんだろー?」
ハングの言う通り、私は何の策を持たずに礼治様を捜しに行こうとしていました。
「それにほらー。後ろを見てみー」
ハングに言われるがまま後ろを振り向くと。
「レイジ兄さんは何処に行ったんだよ⁉︎」
「レイジ兄さん何処…?僕…レイジ兄さんが居ないのは嫌だよ…」
「落ち着くのだ二人とも大丈夫だ。我らの王であるレイジ殿がそう簡単に魂を刈られたりはせん!」
「そうですよアポロ様、ツクヨミ様。大丈夫ですよ、レイジ様は無事に帰ってきます」
「そうだよ二人とも。先ずは落ち着こうよ」
慌てているアポロと今にも泣き出しそうなツクヨミをラッキとルビー、シルフィアの三人が何とかして落ち着かせようとしていました。
「何だよ落ち着けって⁉︎レイジ兄さんが居なくなって落ち着けるわけねえだろ‼︎」
しかし、それが返って火に油を注いでしまいアポロは二人に対して強い口調で喋り始め。
「だいたいラッキだって今にも泣き出しそうなのを無理にして我慢してんじゃないか!」
アポロの言う通り、ラッキは泣き出しそうなのを我慢して二人を落ち着かせようとしていました。
「我慢なんてしてないもん!泣いたらハッピーが逃げちゃうから私は泣かないもん!」
アポロの発言を否定するラッキ。
「私は泣かないもん…。泣いたらヒクッ…ハッピーがヒクッ…逃げちゃ…うう、うえーーーーーん‼︎」
しかし、ラッキは我慢しきれずにとうとう泣き始めてしまいました。
「ほらやっぱり我慢してたんじゃないか。レイジ兄さんが居なくなって泣きたいのは俺もだ…う…うわーーーーーん‼︎」
「レイジ兄さんは何処に行ったの?…レイジ兄さんが居ないのは嫌だよ?…う…うわーん‼︎イヤだよーー!レイジ兄さん帰ってきてよー!うわーーーーーん‼︎」
それにつられてアポロもツクヨミも泣き出し始め、そんな三人を何とか泣き止まそうとルビーとシルフィアは頑張るも三人が泣き止む気配はなく。落ち着かせようとしている二人の顔からも礼治様を心配していることが伺えました。
「みんな気持ちはフールと同じでー、こうやって喋ってる俺だってー、一秒でも早くレイジを捜しに行きたいんだぞー」
ハングの言っていることは正しく、こんな時だからこそ落ち着いて行動しなければいけません。
「如何やら落ち着いたみたいだしー。俺はあの三人を落ち着かせとくからー、フールはその間に『念話』で話せるかどうか試しといてくれー」
ハングはそう言ってラッキ達のところにいかれ、私は直ぐに『念話』を使い礼治様が無事か如何かを確認しようとしました。
「如何して繋がらないの…」
しかし、いくらやっても礼治様と連絡が取れず、ただ頭の中でノイズが走るだけであり、それが私を更に不安を煽り始めました。
(如何しよう…。これでもし礼治様の身になにかあったら…。私はもう生きていけない)
そんな絶望的な状況に陥っていたその時。
「全員無事か⁉︎」
『‼︎⁇』
突然大きな声がギルド内に響き渡り、私を含めギルド内にいた全員が声のした方を振り向くとそこには『アルバス』の冒険者ギルドのギルドマスターであるエネドラさんが階段近くに立たれていました。
ギルドマスターを見た瞬間、私は直ぐにギルドマスターのもとに駆け寄り。
「お願いしますギルドマスター!礼治様を!礼治様を助けてください!お願いします‼︎」
その場で土下座をしてギルドマスターに頼み込みました。
「おいチョット待て!いきなり如何した⁉︎てか、先ずは顔を上げてから何があったか説明してくれ」
慌てるがあまり重要なことを説明していなかった私は直ぐに礼治様が何者かに連れ去られたことを報告しました。
「なるほどな。多分お前らが言っている白いガラス玉は間違いなく『魔力玉』だな」
「『魔力玉』ですか?」
報告により一部始終を把握したギルドマスターの言葉に途中から説明するのに参加していたシルフィアが尋ねました。
因みにラッキ達三人は仕事上がりのマリーさんが面倒を見てくれています。
「『魔力玉』ってのは、あんた等が見たって言う魔力が込めたマジックアイテムであって攻撃魔法や防御魔法に支援魔法とかがあって、その黒服姿の奴が使っていた魔力玉は『瞬間移動』が使える珍しい代物だな。まあその話はひとまず置いておく」
マジックアイテムの説明を簡単に説明し、一旦間を置かれ。
「レイジの居場所ならわかるよ」
「‼︎…。何処に礼治様は居られるんですか⁉︎礼治様は無事なのですか‼︎」
この時、如何して私でもわからなかった礼治様の居場所をギルドマスターが把握しているのか疑問でしたが今はそんなことは如何でもよかった。
「落ち着きな。レイジが連れて行かれた先は街の北門から出て目の前にある『デトラの森』だ」
「『デトラの森』ですね!ありがとうございます‼︎」
「だからちょっと待てって!」
礼治様の居場所がわかり直ぐに向かおうとすると止められました。
「全く。そのまま行っても北門を通れるのはあんただけで、残りの奴らはギルドカードを持ってないから街から出る時は金を払わされるぞ」
「あ…」
そうでした。今ギルドカードを持っているのは私だけであり、シルフィアのギルドカードは礼治様が所持してあり、他の皆さんはギルドカードなど身分を証明するものを持っておらず、お金は礼治様が管理しており今の私達には持ち合わせがありませんでした。
「ったく。ちょっと待ってな」
ギルドマスターはそう言われると受付カウンターに向かい受付嬢から紙を貰うと何かを書き始め、最後に判子を押されてからこちらに戻ってこられ、その紙を渡されました。
「これを警備兵に見せれば料金を払わずに街を出ることができる」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます‼︎」
「感謝する」
「ありがとなー」
私は再度ギルドマスターに感謝し、私の後に続いてシルフィア達も頭を下げ(一人だけ頭を上げて)感謝していました。
「おら。そんなことしてないでサッサと助けに行きな」
「はい‼︎」
そのまま私達はギルドマスターにもう一度感謝してからギルドを後にし、礼治様のいる『デトラの森』に向い走り出しました。
(待っていて下さい礼治様。今、助けに行きます)




