第77話 宣伝 (3)
「本日最後になりますマジックである『瞬間移動』は自分がこの黒い箱の中に入り、そこから別の場所に移動します」
最後を締めるのはレイジさんらしいのだが、さすがに瞬間移動は無理じゃないかと僕は思った。
「それでは早速この箱の中に入ろうと思いますが、その前に皆様の中で警備兵の方で問題行動を起こした人を毎度の如く縛り上げている方は挙手をお願いします。もしいらっしゃらないのなら力に自信がある方でもいいですよ?」
レイジさんは挙手を求め、要件を聞いて挙手する人が何人かいた。
レイジさんはその中から誰にするかを選んでいた。
「それでいかにも力が有りそうなそちらの方、前にどうぞ」
レイジさんから選ばれた人は僕もカナお姉ちゃんも知っている人だった。
「あなたの名前と職業を教えて頂けますか?」
「俺はルーベルだ。職業は警備兵でよく問題行動を起こした馬鹿どもを縛り上げてる」
ルーベルさん。この街の警備兵さんで僕のお父さんと同じ職業で働いている人だ。
へぇ?僕のお父さんが警備兵って言ってなかったけ?まあこの際どうでもいいじゃん。
「それではルーベルさん。このロープで自分を馬鹿どもの中の一人だと思って縛り上げてください」
レイジさんは僕が誰かさんと話してる間にルーベルさんにロープを渡していた。
「俺はそう言った奴らには容赦しないんだがそれでもいいのか?」
「はい大丈夫ですよ。思いっきりどうぞ」
ルーベルさんはレイジさんに言われるがままレイジさんの身体をロープで強く縛り付けた。
ロープで身体を縛られたレイジさんの表情は少し苦しそうに見えた。
「すまん、少し締めすぎたか?」
「いえいえ大丈夫ですよ。それでは早速始めましょうか…」
全く大丈夫そうじゃない表情でレイジさんは黒い箱の中に入り、それを確認したフールさんが扉を閉めた。
その際に箱の中にレイジさんがまだいる事を証明する為に扉の下の部分からレイジさんの足首辺りまでが見える様になっていた。
「それではここからはミーが進行していきマース!」
先程まで隅で待機していたトリックさんが箱の中に入っていったレイジさんに代わって進行を始めた。
「それではマスターレイジが箱の中から出てこれない様にロープでしっかりとロックしまショーウ!」
トリックさんはそう言うなり、フールさんと一緒に箱の周りをロープで縛ってり、ルーベルさんにちゃんと縛ってるかを確認させてからルーベルさんと一緒にその場から離れた。
「それでは皆様。礼治様が瞬間移動するまでには今から10秒掛かりますので一緒にカウントダウンをお願いします」
フールさんはカウントダウンを始めた。
「じゅー、きゅーう」
『はーち、なーな、ろーく』
僕たちは少し遅れてからフールさんに合わせてカウントダウンを始める。
『ごー、よーん、さーん』
此処までカウントダウンしているけどレイジさんは箱の中にまだ入っていた。
『にー、いーち』
レイジさんはまだ箱の中に入っていた。
僕は失敗かなと思いながらも数を最後まで数える。
『ぜろー』
カウントダウンが終わった。その瞬間だった。
『‼︎‼︎‼︎』
僕たちはまたも驚いた。
だってさっきまでレイジさんの足が見えてのに一瞬で消えてしまったんだから。
僕は慌てて辺りを見渡すもレイジさんの姿は見当たらなかった。
それからフールさんとトリックさんは箱を巻いていたロープを外した。
「それでは本当にマスターレイジが消えたのか確認してみマース」
トリックさんが扉を開けて中を見せてくれた。しかし、そこにはやはりレイジさんはおらず、また僕たちは驚いた。
「礼治様は見事に箱の中から何処かに瞬間移動してしまいました。一体何処に行かれたのでしょうか?」
フールさんは辺りを見回しながらレイジさんを探し始め、僕たちも辺りを見回しレイジさんを探し始めた。
<ガタガタ、ガタガタガタ>
『‼︎‼︎』
突然聴こえてきたその音に驚き、音が聴こえた方を向くと、ショーの最初あたりで僕とカナお姉ちゃんが手伝いをした時のマジックで使われていた木箱があった。
フールさんはその木箱に近づいていき、蓋を勢いよく開けた。
そして木箱の中から、先程まで黒い箱の中にいたレイジさんが身体を縛っていたロープを持ち、更にはショーが始まる前にラッパの演奏していた女の子トランちゃんを抱えた状態で出てきた。
それを観た僕たちはレイジさん達に向けて今日一番の拍手喝采を送った。
そのあとで、レイジさんはトランちゃんを抱えたまま箱から出てきて、中央のところまで戻ってきてから、トリックさんやフールさん達と横一列に並び一歩前に出てきた。
「皆様、本日のショーはいかがだったでしょうか?心ゆくまで楽しんで頂けましたでしょうか?」
レイジさんの言葉に対して僕たちは再び拍手喝采で返した。
「どうやら楽しんで頂けたようですね。自分達はとても嬉しい限りです」
レイジさんは笑顔で応えるとそのまま話を続けた。
「実は本日のショーは明日からギルド内で自分が占い師として開店します『タロット』の宣伝の為に行いました」
「礼治様の占いは百発百中!貴方の悩みがどんなものでも礼治様が助言をします!」
「レイジ兄の占いで悩みや問題を解決した人は今までに沢山居るんだよ!」
「店は週に一回で、明日と来週の二回は皆様の信頼を得る為に無料キャンペーンを実施しマース!」
「是非、明日から開店します『タロット』を宜しくお願いします!以上、ありがとう御座いました」
レイジさん達は宣伝を済ませ頭を下げてショーの終わりを告げた。
レイジさん達に向けて僕たちは再び拍手喝采を送る。
「ねぇカナお姉ちゃん!明日一緒にギルドに行ってみようよ‼︎」
「そうね。何だか楽しそうだし、一緒に行きましょうか」
「やったー!」
こうして僕たちは楽しい時間を過ごしたんだ。




