第72話 結局はこうなります
「俺と勝負しやがれ‼︎」
「嫌です」
此方に勢いよく近づいてきたナーグの発した言葉に対して、俺はキッパリと拒否の返答した。
「お前の意見なんか聞いてないんだよ!さっさと勝負しろ!そしてお前がしてきた悪事を全て吐きやがれ‼︎」
(だから関わりたくなかったのに〜。そもそも何この人、俺は悪者決定かよ)
そう思いながら俺は、この状況を作った元凶であるロイドさんを少し睨む。
「すまんなレイジ、なんか悪いことをしたみたいで」
ロイドさんは今頃になって状況を理解してくれたらしく謝ってきた。
「オイ卑怯者!俺を無視すんな‼︎」
(あーもー!煩えなこいつ‼︎)
本当ならこのままダッシュして逃げたかったけど、逃げたら逃げたで後が面倒だし、本当にテンプレは呪いだな。
ため息をつきながらナーグの方に顔を戻した。
「さっきから悪事を吐かせるとか、卑怯者とかって言ってるけど、俺は何も悪いことはしてないけど?」
「罪人がよく言うぜ!」
(卑怯者の次は罪人って、この人はどんだけ悪者扱いにするつもりだよ)
「テメェは冒険者になって一週間も経ってないのに昇級試験を受けることが決まっている。コレがテメェの悪事を働いたと言う証拠じゃねえか!」
(もう本当にヤダこいつ)
心の底からうんざりしていると。
「なあ、確かナーグだったよな?ちょっといいか?」
なんとロイドさんが助け舟を出してくれた。
「確かにレイジが昇級試験に出れることが決まるまでに掛かった期間が短すぎるのは確かだ」
やはりロイドさんは名実共に認められているAランク冒険者であり、先程まで煩かったナーグが静かに話を聞いていた。
(ロイドさんマジで神です)
俺はそう思っている間にも、ロイドさんは話を続けた。
「だが、お前がレイジを悪者呼ばわりにするのは筋違いだ。レイジの実力は俺でも太鼓判を押すほどだ。しかも、この前のゴブリン軍団討伐戦ではレイジがいたからこそ被害を出さずに済んだんだぞ」
「確かに俺が街にいない間に魔獣が攻めてきて、そんな中でFランクだったコイツが活躍したことについては聞いています」
ナーグが他人の意見をちゃんと聞いていたことに内心で驚く。
「だけどそれはコイツの使い魔のお陰であってコイツの実力じゃないですよね!それにコイツが特異種の『ゴブリンキング』にトドメを刺せたのはロイドさんとギルマスのお陰であって、それもコイツの実力じゃねえ‼︎」
相変わらずのマイペースぶりを発揮し、更に話が続く。
「コイツの使い魔が強いだけであってコイツはタダそいつらに頼っているだけで!挙げ句の果てにはロイドさんとギルマスから獲物を横取りした、弱い卑怯者を俺は認めねえんだよ!この罪人が‼︎」
途中から此方を指差しながら悪者呼ばわりにするナーグにそろそろ我慢の限界だった。
「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、………」
「ガルルルルル……」
俺の背後で待機していた二人がね。
二人とも『ギルドでは暴れない』という約束を守るために我慢しているけど、フールはお経のように物騒な単語を唱えながらドス黒いオーラと殺気を放ってるし、シルフィアは威嚇をしながらドス黒いオーラと殺気を放っているしで、そろそろ我慢出来ずにナーグに飛びかかりそうだった。
(結局はこうなるんだよな)
ギルド側にはこれ以上迷惑をかけたくないので、俺は諦めてナーグと戦うことにした。
「わかりました。それじゃあ今から戦って実力を判断してもらえますか?」
「やっと負ける覚悟ができたか」
まだ勝負をしていないのに既に勝つ気でいるナーグに俺も少々苛立ってきた。
「じゃあ俺は先に表に出といてやるから、逃げるんじゃねえぞ罪人」
上から目線で言い放った後、ナーグはギルドの外に出ていった。
「よく我慢できたね二人とも、ありがとう」
ナーグが出ていった後すぐにフールとシルフィアを落ち着かせるために頭を撫でながら礼を言う。
「礼治様のお願いだったので守っていましたが、もしお願いが無かったら今頃、あんな奴は塵にしていました」
「あの人の頭をかち割ったら、レイジ様に対する考え方が変わりますかね?」
二人は頭を撫でられて少しは落ち着いたものの、ナーグに対して放つ殺気は未だに治っておらず。その殺気のせいで俺達の近くにいた人達が腰を抜かしたり怯えてたり、後気絶したりする人達が後を絶たなかった。
「二人とも、後で約束を守ってくれた御褒美になんかしてあげるから、殺気を放つのはやめようか」
このままではギルド側に本当に申し訳ないので二人に妥協策を提示すると
「「はい礼治様(レイジ様)////」」
二人の放つ殺気は一気に治り、周りからは安堵の溜息が漏れる。
「本当にすまんかったなレイジ」
二人が落ち着いたところでロイドさんが再び謝罪をしてきた。
「いいんですよロイドさん。それに今日凌げたとしても、近いうちに絡まれてましたし、別にロイドさんの所為ではないですから謝らないでください」
「そう言ってもらえると助かるんだが、できれば俺に審判を任せてくれねえか?」
「審判をですか?」
ロイドさんに尋ね返す。
「ああそうだ。どっちにしろ今の状況を作った原因は俺にあるからな、責任を取って最後まで見届けねえと」
「わかりました。では審判をお願いします」
断る理由もないのでロイドさんに審判をしてもらうことにした。
それから俺達はギルドの外に向かった。また、フール達の殺気から回復した冒険者達が戦いを観戦しようと暫くしてからギルドの外に向かっていった。
〜視点:マリー〜
レイジ様方が外に出られるのを私は受付カウンターから見送っていました。
「ほらマリー。何時までここにいるつもり?早く行って来なよ」
「へ?」
突然、隣にいたミレアからそう言われました。
「行くって何処へ?」
「あんたねー。それ本気で言ってるつもり?」
暫く考えてはみたけど本当にミレアが言っていることはわかりません。
「レイジ様の所に決まってんでしょうが」
「ニャニャニャ、ニャンデそうなるのニャ⁉︎」
ミレアの言葉に驚きまた癖が出てしまいました。
普段は気をつければ口癖は出ないのですが、興奮して気持ちが高ぶってしまうとどうしても抑えることが出来ずについつい出てしまうんです。
「あんたはこの前にレイジ様が今は別の街のギルドに異動したネスト様と外で戦ってる間、レイジ様を心配するあまり仕事に全く集中できてなくてミスを連発してたでしょうが!」
はい。ミレアの言っていることは本当で、その時の私はどうしたらそうなるのと私自身で聞き返したくなるほどの失敗をしてしまいました。
「だからあんたの今の仕事はレイジ様を見守っとくこと。わかった」
「わかったニャミレア!ありがとうニャ‼︎」
私はミレアに御礼を言ってから受付カウンターから離れ、レイジ様を追ってギルドの外に向かいました。
〜視点:ミレア〜
「まったく、マリーには世話がかかるな」
私はマリーをレイジ様の所に行かせた後、溜息まじりにそうは言ったものの、別に嫌というわけではなかった。
「相変わらず二人は仲がいいですね」
「!!!!!」
突然背後から話しかけられて驚いた私は慌てて振り向き、そこにいたのは先程ナーグ様の対応をしていたベテラン受付嬢がおられました。
「お疲れ様です受付長‼︎!」
このギルドに勤めている私達、受付嬢達を束ねるお方であり、また一年ぐらい前に私やマリーが新人の受付嬢として今の職に就いた時に指導係として一から十までを教えてくれた大先輩である。
私はそんな大先輩に慌てて頭を下げる。
「顔を上げなさいミレア。それでは話ができませんよ」
「はい‼︎」
今度は慌てて顔を上げると、私の行動が面白かったのか受付長からクスクスと笑われました。
「あの〜。受付長?」
「ごめんなさいねミレア。それよりもマリーはレイジ様の所に行ったのかしら?」
「申し訳ございません!マリーがまたレイジ様のことを気にするあまり、仕事で失敗をしてしまいそうだったので私の自己判断でレイジ様の所に行かせました!」
再び頭を下げて謝罪をした後、事情を話しました。
「謝らなくていいのよミレア。私もミレアと同じく、マリーには一旦持ち場を離れさせるつもりだったからね」
「そうだったんですか」
「ええそうよ」
私が尋ね返したことに受付長は笑顔で応えてくれました。
「さてと、それじゃあマリーが戻ってくるまでは私が代わりにしておくから、ミレアはもう上がりなさい」
「いえいえいえ!マリーのいない間の仕事は私が代わりにします!」
受付長の提案に対して私は慌てて反対をした。
「私は上がるまで、まだ少し時間があります!それに受付長はただでさえナーグ様の対応で勤務終了時間を過ぎているのですよ!なので受付長が先に上がっといてください‼︎」
そう、受付長は本来なら勤務時間を終了していた筈がナーグ様の対応で勤務時間を過ぎてしまい、更にマリーの仕事を請け負おうとしていたのです。
「いいのよミレア。対応で遅くなったのは私がまだまだ受付嬢として未熟だったからよ。それに結局はナーグ様とレイジ様が戦うことになっちゃったじゃない」
「受付長が未熟なんかじゃありません!それに誰がナーグ様に対応してたとしても、こうなることは避けれなかったはずです‼︎」
受付長は私達よりも真面目で何時でも一生懸命に仕事に取り組まれており、私達受付嬢にとっては御手本的存在です。
「そう言ってもらえると嬉しいわ。だったらお言葉に甘えさせてもらおうかしら」
「はい、受付長!お疲れ様でした‼︎」
「お疲れ様ミレア。じゃあ、仕事頑張ってね」
「はい‼︎」
私は受付長に仕事を任せてもらい、なんとか受付長に上がってもらうことが出来ました。
「よし。仕事を引き受けた分はしっかり頑張らなくっちゃね」
私は朝から休憩を挟んでるからとはいえ、クタクタの身体に自分で鞭を打ってマリーの置いていった仕事に取り組み始めました。
(そう言えば、なんで受付長は私が頭を下げて謝った時に笑ってたんだろう?)
そのことが頭の中を通り過ぎましたが、私は気にせずに書類を一枚づつ確認してから判子を押す作業に集中しました。
次回は戦闘場面があります。




