第71話 テンプレ回避に挑戦
今回少し遅れての投稿ですみませんでした。
早速本編をどうぞ。
「だから!そのレイジっていう新米の冒険者が今、何処にいるか教えろって言ってんだろうが‼︎」
ギルドに入ってすぐにその怒号に近い声が聞こえてきた。
その怒号の主は受付カウンターにおり、十代後半で身長は170センチ後半の赤茶色の髪と瞳をもつ男が額に怒りマークを浮かばせながら受付嬢に怒鳴っていた。
「ですからナーグ様。先程から申しておりますように冒険者様個人の情報を漏らすことは規則により禁止されていますのでその質問にはお答えできません。なのでお引き取りくださいませ」
怒鳴り散らすナーグと呼ばれる冒険者に対して、20代後半の見た目や立ち居振る舞いなどからベテランを思わせる受付嬢さんは対処マニュアル通りの台詞を丁寧な言葉遣いで少しも嫌な顔をせず、綺麗なお辞儀で応対していた。
「そんな台詞はいいんだよ!いいからその新米冒険者の居場所を教えろって言ってんだろうが‼︎」
ベテラン受付嬢さんの言葉に聞く耳を持たなかったナーグは未だにデカイ声で怒鳴り散らす。
「そもそも何で冒険者に成り立ての奴が来月に控えている昇級試験に俺等と一緒に受けることが決まってんだよ‼︎ 俺は昇級試験を受けるのが決まるまでに三ヶ月も掛かったんだぞ‼︎ 」
どうやら新米である俺が昇級試験を受けることが決定するまでに掛かった期間があまりにも短かったことが気に食わないらしい。
「それにつきましても先程から申し上げました通り、レイジ様は先日のゴブリン軍団討伐戦に参加されました際にご活躍され、それをギルドマスターであるエネドラ様が直接、レイジ様が昇級試験に参加できる実力と判断されたことで参加することが決まったのですよ」
「だからそれが一番理解できないんだよ‼︎」
相変わらずデカイ怒鳴り声を上げ、ナーグは言葉を続けた。
「どうせそいつは卑怯な手段を使ったんだろうが!だからこんなにも早く昇級試験を受ける許可が出されたんだろうが!俺はそんな卑怯者に直接会ってそいつの悪事を暴いてやる‼︎」
ベテラン受付嬢さんがちゃんと理由を説明しているのに、それを聞き流し続けていたのに対して、俺は溜息をつきながらフールとシルフィアの腕を掴む。
えっ?何でそうするのかって?
「礼治様を侮辱する奴を排除してきますので手をお離しくださいませ!」
「レイジ様をバカにする奴は倒します!」
二人が今にもこちらに気づいていないナーグに飛び掛かろうとしていたために俺は全力を使って二人を引き止めていた。
「二人とも落ち着いて!ギルドでは絶対に暴れたらダメだからね!わかった?」
ここで二人が暴れたらギルド側に多大な迷惑を掛けることになるため、それだけは避けたかったし、それに俺は正直に言ってアレには関わりたくなかった。
「…わかりました、礼治様に従います」
「私もレイジ様に従います」
フールはこの前の『狼の牙』から絡まれた時のことをちゃんと反省していたようですぐに了承し、シルフィアも不満が残っている感じであったものの了承をしてくれた。
「ありがとう二人とも。少し待っててね」
それから俺は受付カウンターにマリーさんがいることを確認してから『念話』を使い、マリーさんの頭の中に直接呼びかけることにした。
[マリーさん、聞こえてますか?]
[えっ?レイジ様⁈]
頭に直接話しかけるとマリーさんは驚きながらも辺りを見渡していた。
[マリーさん落ち着いてください。俺は扉の側にいまして、今は『念話』を使ってマリーさんの頭に直接話しかけているので今の俺の声はマリーさんにしか聞こえていません]
マリーさんは声を聞くとすぐに顔をこちらに向け、その時にお互いの目があった。
[レイジ様はそのようなスキルもお持ちなのですね。本当にレイジ様はすごいのですね]
本当はフールのスキルを共有しているだけなんだけど、その説明は省いて本題に入る。
[マリーさん。あのナーグとか言う冒険者なんですけど、俺達の顔を知ってたりしますか?]
[いえ、それはありませんね]
マリーさんは尋ねたことに対して否定し、話を続けた。
[ナーグ様はレイジ様と同じくEランクの冒険者であり、レイジ様がギルドに初めて訪れられた時は昇級試験に向けて暫くの間、街には戻らず北門を抜けた先にある『デトラの森』、別名『試練の森』で野宿しながら修行をされていまして、今日は依頼を受けるために街に戻られたようです]
[へ〜。意外に真面目なんですねあの冒険者]
俺は素直にそう思い口から出た言葉だったがその冒険者であるナーグは未だに怒鳴っているのを見て、そう思った数秒前の俺の腹を殴りたい。
[一つ質問していいですか?]
[はいどうぞ]
[アレには関わりたくないので、受付カウンターで対応してもらう際に、できれば偽名で自分達に対応して欲しいんですけど大丈夫ですか?]
ナーグを指差しながら尋ねてみた。
[受け賜わりました。それでは此方にどうぞ]
そこで俺は『念話』を切り、フールとシルフィアに会話の内容を伝えてからマリーさんがいる受付カウンターに向かった。
「お疲れ様です。レイ様、ルフ様、シアさん」
どうやら俺が『レイ』で、フールが『ルフ』で、シルフィアが『シア』らしい。
「お疲れ様ですマリーさん。早速ですがお願いします」
「かしこまりましたレイ様。確か『レッドピッグ』討伐依頼を受けられていましたよね。ミレアから聞きましたが間違えありませんか?」
「えっと…実は一つだけ問題がありまして…」
「問題ですか?」
マリーさんは首を傾げながら疑問符をつけた。
「実はノルマ数を超えた数の『レッドピッグ』を狩ってしまったんですけど、まずかったでしょうか?」
包み隠さずに尋ね返す。
「それでしたら大丈夫ですよレイ様。討伐依頼に定められているノルマを超えるごとに依頼達成回数が増し、決して討伐数を超えたとしても違反や罰則の対象にはなりません」
マリーさんが言ったことを今回の自分達の成果にそって整理してみると。
『レッドピッグ』討伐依頼のノルマ数が5体だったのに対して自分達は三倍以上の17体を討伐したので討伐依頼を三回達成したことになり、またEランクの依頼だったのでシルフィアはEかDランクの依頼を後七回受ければ昇級試験を受けられる条件を一つ満たすことになるらしい。
「よかった〜。罰則とかが無くて」
この時の俺は本当に安心したいた。
「ただですね…」
「ただなんですか?」
「その日に同じ討伐依頼を受ける冒険者様のためにも数はなるべく残してもらえたら助かります」
「すみませんでした!」
腰を九十度曲げて謝った。
「レイj…〔違う違う違う〕レイ様が謝る必要はありませんニャ!」
マリーさんは一瞬『レイジ様』と呼びそうになったが、すぐに言い直してくれた。
正直に言ってすごくヒヤヒヤした。
「過ぎたことは仕方ありませんニャ!それに金欠な冒険者様方はレイ様達のように弱い魔獣を大量に討伐する時がよくありますニャ!なのでお気になさらないでくださいニャ!」
(マリーさんは本当に優しい人だよな〜)
つくづく俺はマリーさんの優しさに心の底から感謝をする。
「そう言ってもらえて安心しました。でも、これからは討伐数には気をつけます」
これからは気をつけることを伝えた。
「そうしていただけるのなら助かります。それでは討伐証明部位の確認をしますので、提出をお願いします」
それからマリーさんは大きめの木のトレイを出してきたので、そのトレイの上に自分達が討伐し、さらにフールやテミス達が解体してくれた『レッドピッグ』の右耳を計17つを提出した。
それからはマリーさんは一つ一つ丁寧に且つ、慣れた手つきで査定を行い、『レッドピッグ』の右耳一つにつき130ナグルの計2,210ナグルを受け取った。
なお、先程『レッドピッグ』5体分の肉を売却した際に一体につき6,000ナグル、計30,000ナグルで売却できた。
今の所持金:132,490ナグル
(大銀貨13枚、銀貨1枚、大銅貨14枚、銅貨9枚)
そして最後に三人のギルドカードを渡して確認してもらってから受け取る。その際にシルフィアのギルドカードには前は『E,Dランク依頼達成回数:3/10』と記載されていた。
「ありがとうございますマリーさん。じゃあルフ、シア帰ろうか」
「了解ですレイ様。それでは失礼しますねマリーさん」
「失礼します」
俺達はマリーさんに挨拶してからその場を離れ、そしてギルドの入り口へと向かった。
(今回はテンプレにならずに済んで良かった〜)
そう思っていたら。
「レイジじゃないか?久しぶりだな元気にしてたか?」
「「「‼︎‼︎‼︎」」」
突然、俺達が向かっていた方からデカイ声で本名を呼ぶ声が聞こえてきて、それに驚いた俺達が前を向くとそこにはAランク冒険者のロイドさんが此方に近づいてきた。
「二人とも相変わらず仲がお熱いようで羨ましい限りだな」
そうデカイ声を放ったロイドさん。
「そんな大声で名前を呼ばないでください!そんなことしたら……」
俺は慌ててロイドさんに静かにしてもらおうとした。
「テメェがレイジかーーーー‼︎」
しかし、時既に遅しでロイドさんの声に反応し、ナーグが受付カウンターから勢いよく此方に向かって走ってきた。
(十数秒前に安心していた俺を殴りたい)
そう思った時には目の前でナーグが立ち止まり。
「俺と勝負しやがれ‼︎」
そう言い放たれ、テンプレ回避は見事なまでに失敗に終わってしまった。
次回の投稿は長くなると予想され、投稿が遅れますのでご了承くださいますようお願いいたします。
話は変わりますが総合評価がついに四桁を超えました。作者としては多くの方々に応援されていて、とても心強いです。
これからも読者の皆様の期待に応えられるよう努力いたします。




