第70話 家族揃えば憂いなし (3)
「シルフィア、今度はそっちの方を抑えといてくれ」
「了解です。レイジ様」
俺達は店作りの作業に取り組んでおり、午前中に伐採してきた木をトリックに加工してもらってできた木材をフールの『クリエイト』で出現した土の台の上でシルフィアに抑えといてもらいながら釘を打っていた。
他の大アルカナの家族達にも釘を打つ作業や木材の加工の際にでた余分な木を薪にして紐で縛ってもらったり、後は作業中に邪魔が入らない様に周辺の護衛役など各自それぞれで作業に取り組んでもらっていた。
<ゴンゴンゴンゴンダン>
「よし」
長さ1.8メートルの木材に長さ1.0メートルの木材二つを釘を2本ずつ使い、両端を固定して『工』形にした。
「さてと、次はこれだけどトリックの凄さを際立たせるよなコレは」
「そうですよね。私もそんな形をした木材は初めて見ました」
俺とシルフィアが口を揃えて言う木材は『く』形をしていた。
普通こういった形は端を斜めに切り落とした木材同士を釘で固定するものだと思っており、実際に俺もそうやって『く』の形を二つの木材を使って作るつもりだったんだけど、トリックが木の大きさや太さを見てこの形を作るのが可能だとわかったこと、またこっちの方が効率が良いと自己判断したので『く』の形を加工してくれた。
(本当にありがたいんだけど、コレもチートだよな)
今日は本当に家族達のチートに驚いたり、感心しっぱなしである。
大アルカナの家族の一人であるトリックの凄さに感心しつつ『く』形の木材を二つを使って、『工』の両端に釘で固定し六角形に棒を突っ込んだ様なモノを作った。
「第一工程終了っと」
「レイジの兄貴。コッチも終わったぞ」
今の作業が終わり、作業中に流していた汗を眼鏡を外してから手で拭ってから眼鏡をかけた時に俺の目の前で作業をしてもらっていたサタンから声をかけられた。
前を向くとサタンの隣でホースとポニーが俺が作っていた同じ大きさの六角形から棒を一本を抜いた『〈_〉』形のモノを持ち上げていた。
「ありがとな三人とも」
三人に礼を言いながらホースとポニーから木材で作ってもらった『〈_〉』形のモノを受け取る。
「ありがとうございますサタン様、ホース様、ポニー様」
シルフィアは礼を言いながら綺麗なお辞儀をする。
「これくらいおやすい御用だよ、それよりも次は何したらいいんだ?」
「「俺も(私も)もっとレイジ兄さんの手伝いするぜ(よ)」」
「そうだな……。それじゃあ、薪を紐で縛ったやつを一ヶ所に集めといてくれるか?後で『マジックボックス(極)』に収納しやすいようにさ」
「「まかせろ(て)レイジ兄さん」」
「了解だぜレイジの兄貴」
サタン達は頼むと了承してからすぐに広場の一角で薪を縛っていく作業をしているグループのところへ向かい、縛ってある薪を次々に一ヶ所へ集め始めた。
「次はフールを呼ばないとな…。あれ?いないな?」
次の作業に移る前にフールを呼ぼうとしたが先程までフールがいた場所にはおらず、辺りを見渡してもフールの姿は見当たらなかった。
<クンクンクン>
「レイジ様。フール様なら森の中に入られたようです。また、アポロ様とツクヨミ様とラッキ様も一緒におられますね」
シルフィアが『嗅覚強化』でフールがどこへ行ったかを匂いを嗅ぎ分けてから教えてくれた。
「ありがとうなシルフィア」
シルフィアの頭を撫でて褒める。
「ハフゥーーー//////」
シルフィアが喜んでる間に初めて『スキル共有:1』で使えるようになった『念話』を使って、離れているフールの頭の中に呼びかける。
[フール、ちゃんと聞こえてるかな?]
[はい礼治様。ちゃんと聞こえておりますよ。どうかなさいましたか?]
初めて使う『念話』だったけどちゃんと使うことができた。
[こっちの作業の第一工程が完了して、またフールに手伝ってほしいことがあるから戻ってきてくれるかな?]
[分かりました礼治様!全速力で戻ってまいります‼︎]
[いやいやいや、そっちにアポロ達もいるんだよね⁈だったら三人のペースに合わせて、ゆっくりで来て!]
フールのことだから最短ルートとして、森に生えている木を薙ぎ倒しながら直進で急いで来るに違いないと思い慌てて止める。
[え?確かにアポロとツクヨミとラッキと一緒にいますが、どうしてお分かりになられたのですか?]
多分、駆け出す寸前だったフールは疑問符を付けてきた。
[シルフィアのお陰だよ。だからちゃんとアポロ達と一緒に戻ってきてね]
[そういうことでしたか。分かりました、今からアポロ達と一緒に戻りますのでしばしお待ちくださいませ]
フールは俺の言葉を察してくれた後、返事を聞いてから『念話』を切った。
「ふ〜、なんとか大規模な自然破壊は間逃れたな」
フールを抑えることに成功した俺は心の底から安堵の溜息をついた。
「ひゃのー、れいひゅしゃま」
突如、隣から変な声が聞こえてきたのでそちらの方を向くと、そこには顔の筋肉を全て緩くして、とても幸せそうな表情のシルフィアがいた。
「えっと…どうしたのシルフィア?」
フールと『念話』している間にシルフィアの身に何があったのかが分からず尋ねてみた。
「れいひゅしゃまにたきゅしゃんなへられて、わたしゅとへぇもしゅわわふぇてす」
何と言っているか最初はさっぱりだったものの、俺がシルフィアの頭を未だに撫で続けている状態だったことに気づき、多分だけど『レイジ様に沢山撫でられて、私とても幸せです』と言っていたんだと思う。
(確かこの前、フールで同じことがあったよな)
そんなことを思いながらもフールの『クリエイト』で造られた土の土台を背もたれ代わりに使いシルフィアを座らせ、俺もシルフィアの隣に腰を下ろしてフール達が戻ってくるのを待った。
〜数分後〜
「「「レイジ兄さ〜ん!」」」
<ボスン>
「おかえり、アポロ、ツクヨミ、ラッキ」
暫くして森から出てきた三人は真っ直ぐ此方に向かって走ってきて、その勢いのまま俺に飛び込んできたのを、シッカリと受け止める。
「「「ただいま〜〜<ニコニコニコ>」」」
三人の笑顔に俺も自然と笑顔になる。
「ただいま戻りましたレイジ様」
三人に少し遅れてフールも此方に戻ってきた。
「おかえりフール。森の中に行って何してたの?」
「礼治様から頼まれたことが早く済み、礼治様がまだ作業をされていましたので、その間に森の中に入り、食べれる木の実や薬草などの採取を行っていました」
「ありがとうフール。本当にフールは気が効くから助かるよ」
「礼治様からそのように言ってもらえて、私はとても嬉しいです」
フールの表情は本当に嬉しそうだった。
〜〜〜
「よし完成」
あれから約数十分後、フールには『クリエイト』で高さ1.8メートルぐらいの段差付きの台を造ってもらい、俺がそれに上ってから六角形の角っこの六ケ所に長さ2メートルの木材を釘で固定し、六角柱の店の骨組みを造り、それにフールに頼んで縫ってもらった青に近い紫色の布を被せ無事に店が完成した。
「お疲れ様でした礼治様。これで礼治様の夢が叶いますね」
「ありがとうフール。みんなも今日は本当にありがとう。お陰様で立派な店ができたよ」
フールからのねぎらいの言葉に感謝してから、頼んでいた事を全て終わらせ途中から店作りの手伝いをしに来てくれた大アルカナ達家族にも感謝の気持ちを込めて礼をした。
「明日からも店の宣伝とかで家族の手を借りるからこれからもよろしく」
頭を下げ、俺の気持ちを伝える。
「レイジ兄、ボクの演奏で宣伝すれば注目を集めれるよ」
「マスターレイジ、宣伝ならミーにも任せてくだサーイ」
トランとトリックが宣伝を手伝ってくれると言ってくれた。
「レイジ様がもしよろしければ、私は一緒に店のルール決めなどでお力になりますよ」
流石はまとめ役を担っているテミス。
とても頼りになる。
その後も大アルカナ達は会計や買い出し、護衛や営業妨害防止などの雑用から力仕事など自分ができることを伝えてくれた。
「本当にありがとう。それじゃあ明日からもよろしく」
もう一度、大アルカナ達に礼を言ってからフール以外の大アルカナ達を異空間に戻るのを最後まで見送った。
それから後は、店と薪の束を『マジックボックス(極)』に収納してから、俺とシルフィアは『隠密』をフールは『透明化』を使い、魔獣に遭遇しないで街に戻っていった。
〜〜〜
街に戻った時は夕方の5時を過ぎた、いつもよりも早く着き、東門に面している大通りに向かい、ギルドに行く前に隣に建っている『魔獣食材専門店』で『レッドピッグ』の肉を売却し店を出てからギルドへと向かった。
ギルドの扉を開けて中に入ると
「だから!そのレイジっていう新米の冒険者が今、何処にいるか教えろって言ってんだろうが‼︎」
(うん、俺ってテンプレという名の呪いがかかってんのかな?)
また面倒くさいテンプレが起きそうです。




