第56話 懺悔と説教
フールは自身の義務である他の大アルカナ達に礼治の近況報告をする為に今は一人で異空間に戻ってきた。
尚、この時は魔力の消費を減らす為に自身のスキルである『巨大化』を解除して小人サイズに戻っていた。
「おっフールお帰りー。レイジは元気にしてるかー?」
フールが異空間に戻ってきて早々に声を掛けてきた者がいた。
その者は身長が170センチで黄色い長髪に少々日に焼けた肌で水色のシャツに赤い長ズボンを履いた20代で体格細めの男性がいた。
「ただいま戻りましたハング。相変わらずその体勢は辛くないのですか?」
フールはハングと呼ばれる彼に近寄り挨拶を交わした後そう尋ねた。
フールそう尋ねるのも無理はない、何故なら彼は身体が逆さまの状態で地面から頭のてっぺんまでが約1.5メートルも離れて宙に浮いていたのだから。
「大丈夫大丈夫ー。全然平気平気ー」
フールが尋ねたのに対して口癖なのであろう語尾を伸ばしながら軽いノリで大丈夫だと主張していた。
「それならいいのですが余り無理はなさらないでくださいね。それと今回の出迎えはハングお一人だけですか?」
フールは取り敢えず無理をしないように言った後でそう尋ねた。
フールが何故そう尋ねたのかと言うと、今の礼治が住む異世界から異空間に初めて戻ってきた時はサタンとテミスが出迎えてくれて、前回はホースとポニーが出迎えてくれたので今回も大アルカナのうちの誰か二人が出迎えてくれていたので、今回はハング一人だけだったからそう尋ねたのだった。
「我も此処にいるぞ」
「キャア‼︎‼︎」
背後から突然声が聞こえて驚き、声を上げたフールは慌てて背後を振り返った。
そこには黒いローブに身を包み身長166センチの白髪長髪で血のように真っ赤な瞳でキリッとした顔でドクロのマスクを頭右前に被り、色白い肌に同年代の女性と比べて全体的に少し肉が付いていない白い肌がローブから見え隠れしている10代後半の女性が無表情で立っていた。
「何だルビーでしたか、脅かさないでくださいよ」
フールは声の主がルビーと言う名の彼女だと分かると安心し胸をなでおろした。
「我は脅かそうとしていない、其方が我の存在に気付かず勝手に驚いただけだ」
彼女はフールの主張に無表情のまま異議を唱える。
「それもそうなんですが、いつの間に私の背後にいたんですか?」
フールは疑問に思ったことを尋ねてみた。
「我は此処から一歩も動いておらん。フール殿がハング殿に近よって行った際に途中で我の頭上を通り過ぎただけだ」
「そのすみませんでした」
ルビーの返答に謝ることしかできなかったフールであった。
「まあまあお二人さんー。早く他の大アルカナ達のところに行こうよー。フールは異空間にいる時間が決まってるんだしー、ルビーも早くレイジの近況報告を聞きたいだろうー?」
そんな二人の会話にハングはヘラヘラした表情で間に入った。
「それもそうですね。早く他の大アルカナ達のところに行きませんとね」
「無論だぞハング殿。我は王であるレイジ殿の使い魔であり眷属でもある者。よって、早急に報告を聞き、その報告の中に王に害を及ぼす者が居れば我がその者の魂を刈り取り冥界に送ってやろう」
ハングの意見にフールは普通に応え、ルビーは中二病な発言で応えた。
その後は三人で他の大アルカナ達が集まっている広間の一角に向かった。
一角に着くとフール達に気づいた大アルカナ達がフール達に駆け寄り報告をするように急かしてきたので、フールも直ぐに礼治の近況報告を始めた。
〜〜〜
「………っと以上で報告を終了します。また今回の礼治様に独断行動させてしまったこと。更には理由がどうであれ使い魔である私自身が主である礼治様に手を出してしまったことは深く反省していますのでどんな処罰でも受けるつもりです」
フールは礼治には隠していたが主から離れたことと主に手を出してしまったことを心の底から後悔しており、大アルカナ達に頭を下げ自身の行いを懺悔する。
「頭を上げなフールの姐御」
頭を下げているフールにサタンが声を掛けた。
「確かにレイジの兄貴を単独行動させたのは反省点ではあるが、俺らは家族であって家族が間違ったことをしたら怒るのが当たり前だ。だからあんたはちゃんと家族として行動してたんだから頭を下げる必要はねえ」
そう強く主張する。
「それに今回はレイジ様にこれからはちゃんと私達に頼るように約束させたことで、以後このような過ちを起こさせないように予防線を張ることができたんです。なのでフール様の今回の行動は正しく、自身の行いを悔やむ必要はありません」
サタンの言葉に付け加えてテミスも今回のフールの行いは間違っていないと主張した。
「そうだよフール姐。気にしすぎだよ、元気出して」
トランはフールを励ます。
「そうだぞフール。もし私がフールと同じ立ち場だったら私は全力でバカ弟の頰を殴っていたな」
フォースはフールにそう声をかけ。
「「フォース姉さんがそんなことしたらレイジ兄さんが死んじゃうからそれだけは絶対に止めろよな(てよね)‼︎」」
ホースとポニーはフォースの発言に慌てて注意をする。
「我が王であるレイジ殿が直接手をくださなくとも、我に指示をして頂ければ我が身に宿る魔の力で汚らわしき者共の魂を冥界送りにしたものを」
ルビーは礼治に頼られなかったことがショックだったらしく、少し落ち込み気味になりブツブツと呟き。
「全くレイジ殿は儂等家族に頼るということを知らんかったとはまだまだ青いのう」
ロマノフは首を横に振りながらやれやれといった感じで言った。
他にも大アルカナ達は自分に頼って欲しかったと言う者やフールを慰める者など、誰一人としてフールの行動を誤った行動とは攻めなかった。
「皆さん…ヒク…ありがとうございます」
フールは今さっきまで後悔していたことが間違えではないと言われたことで緊張の糸が切れ泣きながらも大アルカナ達にお礼を告げた。
「泣いてるところ悪いんだがフールー、ちょっといいかー?」
泣いているフールに声をかけてきた者がいた。
「何でしょうかハング?」
フールは今流している涙を拭い声を掛けてきたハングの方を向いた。
そこにはヘラヘラした表情ではなく、真剣な表情でフールを見ていたハングがそこに浮いていた。
「新しい家族になったシルフィアだったっけー?彼女はフェンリルの獣人で15歳になってから『血伝混合の儀式』を受けたのにも関わらずー、フェンリルの力を宿せなかったのは本当かー?」
「はい、シルフィアさん本人がそう言っていたので間違えない筈ですが」
フールがハングの質問に答えるとハングは空中で胡座をかき右手で顎を撫でながら逆さまの状態で考え事をしていた。
「……なあフールー、レイジにこのことは俺にも任せてって伝えてくれないかー」
ハングは暫く考えた後でフールに伝言を頼んだ。
「何か知っているんですか⁉︎」
フールはハングの発言からして何かを知っていそうな雰囲気を醸し出していたためハングの目の前に飛んでいき期待の目で尋ねてみた。
「いやー。全然知らんー」
<ズコ>
「私の期待を返してください‼︎」
期待とは裏腹な事を言ったハングにフールは空中でズッコケ、直ぐにハングに詰め寄り怒鳴った。
「まあまあ落ち着けー。確かに儀式の事は知らんがそう言った事に関しては色々と俺の十八番だからさー。俺も力を貸すぜー」
「今度は本当ですか〜?」
「今度は本当だよー」
「ハァー。わかりました、礼治様にお伝えしますね」
フールはハングの言葉に一度は疑ったものの信じる事にして伝言を引き受けた。
「それではフール様、ちょっと宜しいでしょうか?」
「はい、テミス何でs……」
今度は背後からテミスに呼びかけられたフールは背後を振り向いた時にテミスを見た瞬間、言葉を途中で止めてしまった。
テミスの今の表情は笑っているのだがテミス自体からとてつもなくドス黒いオーラが放たれていた。
「全員今直ぐ部屋に戻れ‼︎‼︎」
テミスの放つオーラにサタンがそう叫ぶや否やテミスとフールを除いた大アルカナ達が全員全速力で自室に戻っていった。
そうして広間には二人以外に誰もいなくなった時にテミスは口を開き始めた。
「フール様一つお尋ねしても宜しいでしょうか?」
「はい、…どうぞ……」
フールはテミスから発せられるドス黒いオーラを直で受けながらもなんとか返事した。
「フール様とお会いするたびにお肌がスベスベになっているような気がするのですが、特に今日のお肌もとても綺麗ですよね。日々、いや毎晩何をしたらそうなるんですかね〜?」
テミスの最後あたりの言葉からドス黒いオーラがまた一段とドス黒くなり、フールはオーラの恐怖に耐えれなくなり魔法が解け広間の床に腰を抜かして座り込んでしまった。
「まさかとは思いますがフール様。貴方はレイジ様に好意を抱くあまりレイジ様の身体のことを考えずに毎晩楽しんでいませんか?」
テミスは腰を抜かしたフールにゆっくりと一歩づつ近ずいて行きながらそう尋ねた。
<ブルブルブル>
フールは怯えて身体を小刻みに震わせていた。
「どうやら説教をした方が宜しいですね」
その後、フールは小人の状態で何よりも避けたいテミスからの説教を礼治との約束した時間になるまでずっと受けていた。
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ハング:NO.12『ハングド・マン』
正位置の意味 :修行、忍耐、抑制、奉仕、妥協。
逆位置の意味 :徒労、別れ、痩せ我慢、逃避、自暴自棄
ルビー:NO.13『デス』
正位置:終局、離別、清算、決着、再出発、失恋
逆位置:誕生、再生、始まり、新展開、出会い、上昇




