出会いとゴーレム
ゴーレム それは土でできたロボット
これは、治癒師がとある魔物調査員と出会うところから話は始まる。ある日、教会にいる治癒師のスーズの元にこんな話が舞い込んできた。ある男を治療しろ。その男はゴーレムにやられ、酷い怪我を負っている。その男は界隈で悪名高い。魔物にやられて怪我しては、治癒してくれる治癒師に文句をつける男であった。スーズは内心ビクビクしていた。
(上手くできるだろうか。)
自分の腕にも自信がなかった。しかし、先輩治癒師は言う
「変な人とは聞くけど、腕は確か見たいだし、専属の治癒師になれれば安泰じゃん。」
面倒ごとを押し付けたいだけの先輩治癒師に騙され、スーズは男の元に向かう。
教会の医務室。そこには全身に大けが負った男がいた。スーズは話しかける。
「スコラさん治療いたします。」
「早くしてくれ、この手じゃ調査書も書けない。」
「は、はい。」
手をかざし、傷を治す。
「傷の特徴もよく観察しておいてくれ。」
「はい。」
傷の具合を見る。打ち付けたような跡、あざ、打撲、骨折。
「何かに殴られたんですか?」
「ゴーレムだ。」
「ゴーレムって、あの土くれ人形のゴーレム?」
「そうだ。ゴーレムは素晴らしいぞ。あの硬い腕から繰り出される攻撃は見事なものだった。」
「受け止めたのですか?スコラさん、失礼ですが、ジョブは何でしたっけ?」
「学者だが。」
学者と言えば低耐久。知力系に加護があるが。
「良く死にませんでしたね・・・。」
「うむ、我ながら運がよかった。」
とても知力のある人から出てくる話じゃなかった。世の中には耐久に定評のある戦士や騎士がいるというのに。
「代わりの人に受け止めてもらうんじゃだめだったんですか?」
「何言うか!」
突然の大声にびくっとする。
「この身で受け止めるからこそ、わかることがあるんじゃないか!」
「でも、一歩間違えてたら死んでいましたよ。教会があるとはいえ、運が悪ければ戻ってこれないし。次からはやめてくださいよう。」
「ならん!魔物調査員の宿命だ!」
「そんな宿命ありませんよう。」
「なんだね君は!さっきから僕の研究に首を突っ込んで!」
「私は心配してるんですよ。」
男の手をつかみ目を見つめる。
「な、なんだね?」
「次からは無理をしないでください!」
スーズ、少年は美麗だった。黙っていれば格好も相まって少女にしか見えないほどに。男は顔を赤らめた。
「か、考えておく。」
「よろしくお願いしますよ。」
「そんなことよりもだね、ゴーレムの話に興味はないかね。」
「ゴーレムですか・・・。聞かせてください。」
スコラ先生は大きく息を吸って話し始める。
「ゴーレム。ゴーレムとはもともと人の手で作り出されたものだ。元は神聖な儀式を経て、ゴーレムの額に真理という文字を刻み制御するのが主流であった。壊すときにはeの文字を消して死にすることで破壊できた。いまだに作られるときは文字を刻まないパターンが多いみたいだな。破壊されるリスクを防ぐためだろう。土や粘土だけでなく、石や金属でできたものもある。最近の野生のゴーレムには額に文字がなく、素材も溶岩や雪、はてには骨なんかがある。ゴーレムは喋ることはできるが、非常に無口だ。宝物庫の番人なんかをやっているゴーレムだと’ここは通るべからず’なんてしゃべったりするがな。力と耐久が非常に高いが、知力がない。攻撃は単調になりがちだな。おまけに機動力もおおむね低い。その代わり、一発一発が重い。熟練の戦士か、騎士でもないと受け止めきれずに死んで教会送りだろうな。初心者パーティーなら、攻撃をよけることを考えるべきだろう。魔法で攻撃するのもいい。大半硬いからな。剣ではほとんど弾かれるだろう。大概のパーティーに言えることだが、バランスの良さが大事だ。戦士と魔法使いのコンビは鉄板だな。さっき、宝物庫の番人なんかをやっているといったが、どこかしらを守護していることが多いな。ゴーレムの元からの性質だろう。特別な場所を守護するのに適している。動かすのに特別、燃料を必要としないせいだろう。元は魔術で動くものだが、当の本人は魔術を扱えないことが多い。ドロップ品としては上質な土や、秘石が目玉だろうな。こんなとこだろうか。」
「すごいです!本当に魔物調査の第一人者なんですね!」
スコラ先生は誇らしげだ。
「そうだとも!第一人者だからこそ、この足で稼ぎ、この身で受け止める必要があるのだよ。」
「無理はしないでほしいのですけどね。」
「今回のゴーレムというモンスターは素晴らしかった。人の作りだしたものから、モンスターとして定着した代表的な例だ。」
「モンスター学、面白いですね。」
「だろう。君もそう思うだろう。私を虜にするわけだ。」
「うん、治療が済みました。」
「さて、腕を動かしてみるか。・・・うん、完璧だ。十分な仕事だ君。報酬はあとで支払っておこう。そういえば名前を聞いていなかったな。名前は?」
「スーズです。」
「覚えておこう。また次、頼むかもしれん。さて、僕は調査書を記入せねばならん。失礼させてもらうよ。」
「はい、お疲れさまでした。お大事に。」
医務室からスコラ先生が去っていく。ため息をつく。
(よかった。うまくできた。褒められましたよね、私。スコラさん、噂と違って面白い人でした。)
ゴーレム。治癒師になった初期のころは、四人でパーティーを組み、ダンジョンに潜っていたものだ。そこそこの腕のパラディン、初心者魔術師、初心者戦士に初心者ヒーラーのスーズを加え、始まりのダンジョンに潜った。道中は慣れているパラディンが先導した。モンスターたちは最下級な上に、インプやゴブリンばかり。軽々奥まで行った。そして最奥。オーソドックスな土のゴーレム。魔術師が先手を打つ。パラディンが攻撃を受け止め、体力が削れた分を治癒師が回復。戦士は削られすぎた時用にポーション投げ係。この世界のポーションは飲むときに比べ、投げて浴びると半分の効果で回復だ。そうして打倒されるゴーレム。初めての達成感にみんなでハイタッチしたものだ。お宝は今でも大事に取ってある。初心者卒業のメダル。メッキで作られているといえど金色に輝くメダルは、今でも大切なお宝だ。
上司に呼ばれる。
「はーい。」
「始まりのダンジョンの前に行って、いつも通り怪我した子たちを見ておいで。」
「はい。」
始まりのダンジョン。さっきも思い出していたが、最下層にゴーレムが配置されたダンジョン。ここのゴーレムは近くの、ダンジョン管理ギルドのマスターが設置したものだ。昔は知らなかったが、治癒師として教会ギルドに入り裏方のことを知っていった。始まりと名がつくように、ギルドの管理下の元、初心者がうまく成長できるように、中はモンスターの頭数などが管理され、運営されている。
入口に近づくと、早速怪我した初心者戦士たちがいた。
「こちら教会ギルドの出張回復所です。」
「ゴーレムにやられてしまって。」
「十銅貨で全体回復いたします。」
「お願いします。」
今日もスーズは治療する。ダンジョンで怪我した人を癒すのだ。




