再認識5話
今日も無理せず、無事に一日を終えられたらいいですね。
無事に一日を終えられたら、悩みや心配を忘れてゆっくりお休みください。
お休みの時間なら、私の作品とともに明日への準備ができることを願っています。
読者の皆様の人生に、私の作品が大きな助けになることはできないかもしれませんが、
少しでも活力の源になれたら嬉しいです。
いつも作品を読んでくださって本当にありがとうございます。
大好きです、読者の皆様。
(当然、気にせずにはいられないか……)
全力の一撃を平然と受け止める敵。
それだけではなく、死んでもなお立ち上がる怪物と長時間にわたって戦い続けた。
騎士であり、指揮官でもある彼らにとって、これ以上の損害は許容できない。
だからこそ、俺の意図を測ろうとしているのだろう。
(こう言えば、まだ納得するか……)
適当な理由を用意すれば、受け入れやすいはずだ。
疲弊しきった身体を動かすのに、理由もなければ拒まれて当然だ。
申し訳なさを覚えながら、俺は疲労の色が濃い騎士たちへ口を開いた。
「開拓村への移動準備を、できる限り早く終えてほしい」
「坊っちゃん、急ぐ気持ちは分かりますが、少しは休まないと。人は機械じゃありません」
正論だった。
だが、領主に仕える騎士としては正しくない。
やや語気を強めたバンスの口を、ロデリックがすぐさま塞ごうとする。
「おい、言うべきことは言わないとだろう!」
「状況を悪化させるな。黙れ」
ガレックはロデリックがバンスを抑えたのを確認すると、
不快さを隠しきれない声音で俺に言った。
「理由をお聞かせいただけるのであれば、坊っちゃんの指示に従います」
ガレックの発言はもっともだった。
俺は一つうなずく。
他家であれば、騎士や技術者の自由な発言は禁じられていただろう。
活動にも制約が設けられ、越えてはならない線が引かれる。
そして先ほどのバンスの態度は、減給や降格で済む話ではない。
場合によっては苛烈な処罰すら下される。
アルカンテラにおいて、貴族は領地の王として君臨しているのだから。
『すっ……』
俺はまだ厳重に保管していなかった封印箱を取り出した。
地球で言うなら機密容器のような小箱を、彼らの視界に置く。
「封印箱……?」
「領主様が事態解決のための魔道具を封じて送られたのですか?」
ロデリックが訝しげに言い、ガレックもわずかな期待を込めて問いかける。
だが、俺は首を横に振った。
「父上の物なら、とっくに使っている」
複雑な解除手順を経て、箱を開く。
「っ……!」
「なんだ、この気配は……」
「この禍々しい邪気は……一体……」
三人の反応を確認し、俺は真顔で告げた。
「エバン少領の部下が、戦場整理中に発見したものだ」
箱の中のさらに小さな容器のおかげで、異様な気配の漏出は最小限に抑えられている。
そのおかげで、耐性の低い俺でも内容を確認できた。
俺が淡々と読み進める一方で、騎士たちの顔はみるみる歪んでいく。
「……これは、ひどく難解な……暗号文だな」
忍耐強いロデリックですら、思わず口にするほどだった。
文字は荒く、走り書きに近い。
さらに、知識のない者へ情報が渡るのを防ぐためか、無意味で異端的な語句が散りばめられている。
すでに邪教徒の関係者によって確認された後らしく、
焼却寸前だった痕跡もはっきりと残っていた。
これ以上、俺や騎士たちの精神に影響を及ぼさないよう、
俺は再び封印箱を閉じた。
「ふぅ……」
「まだ、頭が痛むな……」
「内容は、どのようなものでしたか?」
禍々しい気配から解放され、幾分表情を和らげた三人。
ガレックの問いに、俺はエーテルブレードで得た知識を手繰り寄せながら答えた。
「確認できた限りでは、こうだ――」
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ポジウェル家最北端の開拓村。
その地を起点に、古き技術の家が持つ領土を呑み込む。
そうすれば、我らの大望は成る。
そして主様を、この……
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俺は包み隠さず、その内容を語った。
予想だにしなかった言葉に、三人の顔が驚愕に染まる。
「この件、エバン少領はご存知なのですか?」
「もちろん、すでに伝えてある」
三人の顔から疲労の色が薄れたのを確認し、俺は続けた。
「だからこそ、できるだけ早く出発できるよう準備を整えてくれ」
「承知しました」
真剣な面持ちで、騎士たちは馬車を後にする。
(じっとしているわけにはいかないな)
居場所を失うのは御免だ。
「俺も外に出て手伝う」
「同行する」
アルドリックはいつも通り、余計なことは言わずに後ろへついた。
人手は常に不足している。
ましてや一刻を争う状況で、立場に胡坐をかく余裕などない。
そのつもりも、最初からないが。
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領地にいた時のような精密整備は不可能だった。
簡易的な整備を終えた俺は、まだ動く機体を駆り、エバン少領のもとへ向かう。
『ガタン』
「……はぁ」
頭では分かっている。
早く整備を手伝うべきだと。
だが、数時間前に見た光景が失われたことを理解した瞬間、
俺の足は無意識に止まっていた。
(変わらないと思っていたが……)
森は戦闘前と同じく、再び静寂に包まれている。
だが、その姿はまるで別物だった。
もう二度と元には戻らない――そう思えるほどに。
冬の名残で濃い茶色に染まっていた森は、徐々に変わりつつあった。
芽吹き、緑へと移ろう木々と草。
目に優しいその風景は、
倒れ伏した邪教徒たちの冷たい死体によって、完全に様変わりしていた。
本来漂うはずの、清々しい草の香り。
それは消え、代わりに血の生臭さが森を支配する。
重苦しい空気が、すべてを押し潰すように沈殿していた。
(ここが……)
荒廃した地球とは違う、本来の姿を保った自然。
初めて目にしたそれを、俺は気に入っていた。
――だが、それももう跡形もない。
重たい空気と血の匂いだけが、この場にいる遠征隊へまとわりつき、苦しめていた。
「……様! デミアン様!」
次回の話は2026年4月29日(水)午後8時にアップロードされる予定です。
ぜひご覧ください!




