表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レジェンドガール  作者: 井村六郎
終章 伝説になれ
81/89

第八十話 竜帝、発進

前回までのあらすじ



全てを懸けて激突する、杏利とヴィガルダ。死闘の果て、己の希望を託し、ヴィガルダは散った。杏利は最終決戦の地、エビルフロンティアを目指す!

 キリエ達五人は、伝説の魔科学兵器、竜帝ルカイザーが封印されているという、マズエルの地上絵を訪れていた。

「本当にここにルカイザーが封印されているのかしら?」

 キリエは疑問に思う。見渡す限り、荒野と地上絵があるだけだ。とても魔科学などが封印されているようには見えない。

「まだ来たばかりじゃない。問題は、この地上絵の中心よ」

「行ってみよう」

 アヤとチェルシーの言う通り、ここは地上絵の端である。大いなる十字の重なる場所と書いてあったから、この地上絵の中心に、何かあるはずだ。



 十分以上かけてたどり着いた五人は、周囲を見回す。

「みんな! あれ!」

 と、ミーシャが何か見つけた。

「あっ……!」

 ティナが、ミーシャが指差した方向を見ると、そこには掌サイズの、青く光るひし形の何かが浮いていた。

「これ、何かしら?」

「わからない。キリエ姉さんは、何だと思う?」

 アヤはチェルシーに尋ねたが、わからない。なので、キリエに訊いてみる事にする。

「……何かあるの?」

「「「「えっ?」」」」

 だが、キリエから返ってきたのは、予想外の答え。

「何かって……よくわからないけど、ここに何かあるじゃない!」

「……何も見えないけど」

 アヤはムキになってひし形を指差すが、キリエは首を傾げるばかり。ひし形が見えていないのだ。

「……あっ!」

 そこでミーシャは思い出す。あの書き置きには、清らかな心を持つ四人の乙女がルカイザーを復活させると記されていた。

「チェルシーちゃん! 書き置きを思い出して!」

「……そうか、わかった。清らかな心を持つ四人の乙女が、封印を解ける。だからこれは、ルカイザーの封印に関係があって、封印を解ける者にしか見えないんだ」

「じゃあやっぱりあたし達が、ルカイザーの封印を解ける四人の乙女なのね!?」

 偶然にしては出来すぎていると思ったが、ティナは興奮している。あの書き置きの内容は、真実だったのだ。

「それで、これは何なの!? どうすればルカイザーを復活させられるの!?」

「慌てないでティナ。これは恐らく、ゲートだ。これを使った先に、ルカイザーが封印されている」

 だが、どうすればルカイザーが封印されている場所に行けるのか、全くわからない。これがゲートだったとして、起動方法がわからないのだ。

 チェルシーはひし形を調べる為、危険を承知で、ひし形に手を伸ばす。

 そして、チェルシーの手がひし形に触れた瞬間、チェルシーの姿が四人の前から消えた。

「「「チェルシー!!」」」

「チェルシーちゃん!!」

 驚く四人。だが、チェルシーはすぐ四人の前に現れた。

「チェルシー!!」

「大丈夫だったの!?」

 アヤとティナが心配し、チェルシーは頷く。

「ああ。やっぱりこれは、ゲートに間違いなかった」

 このひし形は、触れた者を別の空間へと転送する、魔科学の装置だ。千年経っても機能を失っていないというのは感心を通り越して恐ろしさを覚えるが、機能していなければルカイザーの復活は叶わないのだから仕方ない。

 と、キリエが装置に手を伸ばした。見えていないので、チェルシーが触ったと思われるところへ、文字通りの手探りだ。

「アヤ。今私は、チェルシーの言った装置に触ってる?」

「……うん」

 アヤは、少し躊躇いながら答える。キリエの手は間違いなく装置に触れており、触れるどころか貫通しているが、何も起きない。

 これでこの装置は、資格を持つ者でなければ起動する事はもちろん、見る事も触れる事も出来ないという事が、証明された。

「……付き添いはここまでみたいね」

 自分はここから先に進む事が出来ない。それがわかったキリエは、アヤ達に全てを託す事にする。

「お姉ちゃん……ごめんなさい……」

「何謝ってんの。元々私は、あんた達の付き添いで来たんだから。ここから先は、あんた達の出番よ。まさかあんた達が、こんなに大きな使命の持ち主だったなんてね」

 アヤはうつむいたが、キリエはそんなアヤの頭を撫でてやる。そうだ。キリエはあくまでも、四人の旅をサポートする為についてきたのだ。四人が本来の使命を果たすべき場所に、いるべきではない。

「さ、頑張ってきな! あんたは私の、自慢の妹よ」

「……うん!」

 キリエはアヤの肩を叩き、力強く頷く。

「みんな、行こう!」

「「うん!」」

「ああ」

 四人は装置を見つめ、同時に触れる。そして、四人の姿が消えた。

「……私は心が汚れてるのかしらね」

 四人の帰還を待ちながら、キリエはぼやいていた。



 四人が転送された場所は、寒い洞窟だった。天井も、壁も、地面も、所々が凍りついている。

 だが四人が転送されると同時に、洞窟の中のあちこちに光が灯ったので、ランプは必要なさそうだ。この辺りは、ここが人工的に造られた場所なのだという事を、再認識させる。

「明るいけど寒い!」

「ちょっと待ってくれ」

 アヤ達が寒さに震えているのを見たチェルシーは、何か小さなケースを出し、その中に火の魔石を入れた。すると、四人を赤いフィールドが包み込み、寒さが消えた。

 これはライターフィールドというアイテムで、火の魔石を装填すると一定範囲を温め、さらに照らす。

「あまり範囲は広くないから、私から離れすぎないようにね」

 チェルシーはそう注意し、四人は洞窟を行く。

 洞窟の中は一本道だったが、思っていたより距離が長く、いつまで歩いてもルカイザーらしきものが見えない。

「こんな所、いつまで歩かなきゃいけないのよ……」

 ライターフィールドのおかげで寒くないが、こんな氷だらけの場所をいつまでも歩いていると、ティナは嫌になってきた。ライターフィールドの効果も、いつまで続くかわからないので、効果が持続している間にルカイザーを発見し、封印を解きたい。

 そう思っていた時だった。急に開けた場所に出たのだ。

「何、ここ……」

「……格納庫か?」

 ミーシャは怖がりながら呟き、チェルシーはライターフィールドを解除しながら、今自分達がいる場所に予想を付ける。

 あちこち凍ってはいたが、ここは格納庫によく似ている場所だ。前に社会科見学の一環で、飛空船の格納庫を見た事がある。

「あれ!」

 アヤが気付いた。格納庫の一番奥に、何かがある。

 近付いてよく見てみると、それは氷漬けにされた、百二十メートルはあろうという、巨大な三つ首のドラゴンだった。

「これが、竜帝ルカイザー……!!」

「大きい……!!」

「こんなに大きかったら、国なんていくらでも滅ぼせるだろうね」

 アヤ、ティナ、チェルシーの三人は、畏怖の念を込めてこのドラゴンを見上げる。

 一方ミーシャは、すぐ近くに何かが書かれた金属の板を、発見していた。

「チェルシーちゃん、これ!」

 古代文字で書かれていて読めない為、チェルシーに解読を依頼する。チェルシーは読み上げた。

「竜帝ルカイザーの復活を望む、四人の乙女達よ。もし本当にルカイザーの力を欲するならば、祈れ。ここに来れたという事は、その資格を持つという事。心の中で呼び掛ければ、ルカイザーは必ずそれに応じ、目を覚ます」

 ルカイザーを復活させるには、四人が心の中で呼び掛ける必要があるそうだ。

 四人はルカイザーの前で横に並び、顔を見合せ頷き合う。そして四人の心を一つにする為、手を繋いで目を閉じて、祈り始めた。

(お願い、目覚めて!)

(私達はあなたを、決して悪用したりなんかしない!)

(杏利お姉ちゃんを助ける為に、あなたの力が必要なの!)

(だから目覚めて! 力を貸して!)

 祈りを捧げるアヤ達。

 変化は、彼女達が祈り始めて数秒後に起こった。


「適性者の精神波を四人分確認。二秒後に起動します」


 ルカイザーが言葉を発したのだ。

 宣言通り二秒後、ルカイザーの目が黄色く光り、動き始めた。氷に亀裂が入り、砕けていく。

「危ない! 下がろう!」

 氷が降ってくる。危険を感じたチェルシーは、一度ルカイザーから離れる事を決意し、他の者もそれに従って離れた。


「「「グォォォォォォォォォ!!!」」」


 ルカイザーは自身を拘束する氷を振り払い、三つの首が咆哮を上げた。その大音量に、四人は顔をしかめて両手で耳を塞ぐ。

「システムオールグリーン。起動完了しました」

 自分が何の問題もなく起動した事を告げたルカイザーは、四人の存在に気付き、その大きな顔を近付けてきた。

「観測した精神波との一致を確認。あなた方を、私の新たなマスターと認識しました。これより登録を開始します。名前を教えて下さい」

 ルカイザーから名前を教えるよう言われ、四人は戸惑いながらも名前を言う。

「あ、アヤ・マトリックよ!」

「……チェルシー・パドメ」

「ティナ・フェルエールよ」

「ミ、ミーシャ・フェルエール、です……」

 四人が名前を教えると、ルカイザーの六つの目がばらばらに点滅を始める。

「アヤ・マトリック、チェルシー・パドメ、ティナ・フェルエール、ミーシャ・フェルエール。以上で間違いはありませんか?」

「な、ないわ。全部合ってる!」

 ルカイザーから名前の確認をされ、アヤが代表して答えた。すると、ルカイザーの目の光が点滅速度を早め、少しして点滅が止まり、再び黄色い光が灯る。

「新規登録を完了しました。おはようございます、新しいマスター。私はルカイザー。竜帝と名付けられた魔科学兵器です。ご命令を」

 どうやら登録が終わり、ルカイザーは四人を新たな自分の主人と認めたようだ。

「やったわ! 私、本当にルカイザーを!」

「ああ!」

 四人は喜ぶ。ようやく竜帝ルカイザーを探し出し、復活させ、使役する事に成功したのだ。

「じゃあ早速命令よ! あたし達を連れて、ここから出るの!」

 ティナはルカイザーに命令する。

「了解。これより、フュージョンシステムを起動します」

「「「「え?」」」」

 フュージョンシステム。またわからない単語が飛び出した。

 と思ったその時、四人は白い光の玉に包まれ、アヤはルカイザーの胸に、チェルシーは真ん中の頭に、ティナは右の頭に、ミーシャは左の頭に吸い込まれた。

「な、何これ!?」

「あたし達ルカイザーの中に、吸い込まれちゃった!」

 慌てるアヤとティナ。ミーシャもかなり戸惑っており、声にならない声を上げて、何とか出ようと無駄な努力をしていた。

 チェルシーだけが冷静に、今自分達に起きている事態を理解する。

「そうか、だからフュージョンシステムなんだ!」

 ルカイザーが起動したフュージョンシステムとは、自身を操る適性を持つ四人の女性と融合し、指示を出してもらうという保護機能だったのだ。

「格納庫のゲートに異常あり。ゲートを破壊し、緊急出撃します」

 ルカイザーはこの格納庫自体にアクセスし、ゲートを開いて出撃しようとした。しかし、千年という時間の中でゲートは劣化し、開かなかったのだ。なのでルカイザーは、ゲートを破壊して出撃する事を選択した。

「は、破壊!?」

 チェルシーは驚愕する。

 そもそも彼女は、ルカイザーがいたゲートがどこを差す言葉なのか疑問に思っていた。これだけの大きさの魔科学兵器、自分達が入ってきたあの道は、当然通れない。

 ならばどこか。恐らくここは、あの地上絵の遥か下にある空間だ。それならゲートは――

「警告。ゲートの上に生命反応を確認。直ちに精神波で退避を促し、その後、ゲートを破壊します」

 やはり、この真上だ。あの地上絵そのものが、ルカイザー出撃の為のゲートだったのだ。

 そしてゲートの上にある生命反応というのは、地上絵の上に待たせてきたキリエの事だろう。

「警告。私はルカイザー。あなたは今、私が出撃するゲートの上にいます。これよりゲートを破壊する為、至急退避を願います。繰り返します。これよりゲートを破壊する為、至急退避を願います」

 どうやらルカイザーは、テレパシーでキリエに連絡したらしい。それなら問題はないだろう。と思っていると、ルカイザーが三つの頭を上に向け、口の中が光り始めた。

「ハイパーヒートブラスター、発射」



「えっ、何!? 何なの!?」

 突然頭の中に響いた声に、キリエは困惑していた。

 声は退避しろと言っていたので、このままここにいると絶対にまずい。

「何だかよくわかんないけど、逃げた方がよさそうね。スキルアップ!! センスアップ!!」

 身体能力と速度を上げたキリエは、地上絵の外に向かって駆け出す。


 キリエが地上絵の外に一歩踏み出すと同時に、地上絵が爆発した。


「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 キリエは叫びながら爆発に吹き飛ばされ、地面を転がった。

「い、いたたた……何なのよさっきから……」

 文句を言うキリエ。そんな彼女を無視して、地上絵があった場所から、ルカイザーが飛翔した。

「ドラゴン!? もしかして、あれが竜帝ルカイザー!?」

 キリエは文句を言うのをやめて、ルカイザーを見上げた。



「魔導エンジン、反重力システム、ブースター、全て正常稼働。異常なし」

 ルカイザーのアナウンスを聞きながら、四人はぽかんとしている。

 今ルカイザーは、地上から数千メートル離れた地点に浮いている。飛空船の窓から見た時よりずっとクリーンな光景に感動し、言葉が出なかったのだ。

「マスター。命令を完了致しましたが、次はいかがなさいますか? 私ならば大気圏の外へ出る事も、宇宙空間を飛行する事も可能です。実行しますか?」

「そ、そこまではいいわ!」

 ティナは慌てて答える。今でさえルカイザーは、彼女の期待を遥かに上回る働きをしているのだ。これ以上望む事はない。

「すごいわ! こんなに速くて強いなら、絶対杏利お姉ちゃんの役に立てる!」

「問題は、肝心の魔王がどこにいるかわからない、という事だけど」

「……そうだったわ……」

 アヤはルカイザーのスペックに喜んだが、チェルシーの言葉を聞いて肩を落とす。魔王イノーザがどこにいるのか、わからない事には助けられない。

「……ちょっと待って。ルカイザー。君はもしかして、目的の相手がどこにいるかとか、それを調べられるセンサーを積んでるんじゃないのか?」

「もちろん搭載しています。私のセンサーならば、この星全ての領域を、くまなく探知可能です」

 チェルシーが習ったルカイザーの性能は、自分がいる国から、他国を探して狙撃出来るというものだ。それなら、相手がどこにいるか、正確な位置を割り出す為のセンサーも積んでいるはずである。

 そして予想通り、ルカイザーはセンサーを積んでいた。それも、惑星一つを丸々覆い尽くす、超高性能センサーである。

「そのセンサーを使って、この星全体を調べてくれ! それから、センサーで探知した領域の図面も見せて欲しい!」

「了解しました。これより広域サーチを開始します」

 チェルシーの命令を聞いたルカイザーは、センサーを展開する。ミーシャは尋ねた。

「チェルシーちゃん、何をするつもりなの?」

「地理の勉強の応用だ。うまくいけば、魔王のアジトを見つけられるかもしれない」

 チェルシーは、イノーザの居場所を見つける方法を、考案したらしい。

「サーチ完了しました。図面を表示します」

 そうこうしている間に、サーチが終わったらしい。チェルシーの目の前に、地球儀のような円い図面が表示される。

「ありがとう。他のみんなにも見せて上げて欲しい。それから、私が触ったところに、マーキングが出来るようにしてくれ」

「了解しました」

 チェルシーが命令すると、他の三人の前にも図面が現れる。

「……今私が触ったところを拡大してくれ」

「了解しました」

 チェルシーは図面の一部を触り、そこを拡大するよう命じた。ルカイザーはそれを実行し、図面を拡大する。

「ここをさらに拡大してくれ」

「了解しました」

 もう一度触り、さらなる拡大を命じる。ルカイザーがそれを実行した時、アヤは奇妙な事に気付いた。

「何、ここ……」

 図面は、地面にあたる部分を緑色の升目で表示している。町や建物があれば、その形になるように升目が隆起する。

 だが、チェルシーが拡大した場所には、何もなかった。升目そのものがなく、ぽっかりと大きな穴が空いているのだ。

「気付いたか。恐らくここがイノーザのアジトだ」

 センサーに気付く前、チェルシーはイノーザのアジトの特徴を思い出した。たくさんの国が兵士を動かし、世界中を探索したが見つけられなかったのだ。この点から考えて、イノーザのアジトは迷彩魔法の類いで隠されていると思われる。

 迷彩魔法は姿を隠すだけで、存在そのものを消せるわけではない。あるいはそういう力をイノーザが持っている可能性もあるが、魔科学の全盛期には同じような技術もあったはずだ。

 そしてルカイザーは、そんな時代の最終兵器。当然、あらゆる魔科学への対策が出来ているはずだ。

 以前試した事があるが、迷彩魔法で姿を隠した相手は、センサーなどで探そうとすると、今のように図面に黒い穴が出来る。観測出来ず、それでも観測しようとした結果、何かがあるが何かはわからないという答えとして、黒い穴が出来るのだ。

 あれだけの造魔兵を造れる施設が、小さいはずがない。それを迷彩で隠そうとすれば、大きな穴が出来る。そしてその穴が出来た場所こそ、イノーザのアジトだ。

「そしてイノーザは、出来る限り人が立ち入れない場所にアジトを作るはず。私はその場所として、エビルフロンティアに目星をつけて調べてみた」

「「エビルフロンティア!?」」

「この場所、エビルフロンティアにあるの!?」

 三人は驚いた。エビルフロンティアといえば、存在自体がAランクダンジョンに指定されている、この世界で一番危険な場所だ。そこにあるというのなら、納得出来る。

「この地点に高速で向かっている生命反応二つを確認しました」

 三人が怯んでいると、ルカイザーがそう告げた。

「きっとそれ、杏利お姉ちゃんよ! どうにかして、イノーザの居場所を見つけたんだわ!」

「もしくは、他に行くあてがなかったからか……どっちにしても杏利お姉ちゃんは、今エビルフロンティアに向かってるわ!」

 アヤとティナは興奮する。かつてあらゆる国が手を結んだ連合軍でさえ、エビルフロンティアでは全滅した。そこを進んでいる実力者といったら、杏利とエニマ以外に思い付かない。

「行こう! 杏利姉さんを助けるんだ!」

「ルカイザーもいるから大丈夫だよ!」

 ミーシャの言う通り、四人で乗り込めば骨も残らないだろうが、ルカイザーが一緒なら恐れる事はない。

「杏利お姉ちゃんを助けるなら、キリエお姉ちゃんも連れていきましょ。きっと一緒に行きたいって思ってるはずだから」

「それもそうね。ルカイザー! 地面に降りて!」

「了解しました」

 アヤとティナの提案を聞いたルカイザーは、地面に降下していく。

「キリエお姉ちゃん!!」

「その声、アヤ!?」

「他のみんなも一緒よ!! 私達、ルカイザーと一つになったの!!」

「キリエ姉さん。イノーザがどこにいるかわかった。杏利姉さんも向かってる! すぐに行こう!」

「杏利が!? わかったわ!」

「ルカイザー。キリエお姉ちゃんも一緒に連れて行きたいんだけど、お願い出来る?」

「了解しました。保護バリア、起動します」

 ティナの命令を聞くと、ルカイザーは胸から光線を出した。その光線はキリエに当たると、バリアとなってキリエを包み、背中に乗せた。

「これから戦闘になるようですので、私のシステムについてご説明します。私は三基の魔導エンジンと、適性者の精神力を動力として力を発揮します」

 つまり、ルカイザーが強くなるかどうかは、四人の精神力次第というわけだ。

「わかったわ。私達はあなたが全力を出せるように、頑張るから!」

 アヤはルカイザーに言い、他の三人も力強く頷く。

「ありがとうございます。ではこれより、目標地点に向かいます」

 いよいよルカイザーは、禁断の地、エビルフロンティアへ向かう。

「反重力システム起動。ブースター点火」

 ルカイザーの翼と、尻尾の付け根に設置された、合計八基のブースターが点火され、ルカイザーが浮かび上がる。

「最大戦速、発進」

 そしてルカイザーは、エビルフロンティアに向けて飛び立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ