第五十七話 巨人王
皆さんこんにちは。
ヤミです。
本日は第五十七話を投稿させていただきました。
巨人王に立ち向かう者たちは勝利を勝ち取ることができるのか。
是非お楽しみください。
ルベル、アランが魔王の前に立ちはだかり、星影は冥界王へ向かった頃、巨人王、鬼人王、百獣王がユートピアへ侵攻を始めていた。
「皆様!これ以上彼らにこの地へ踏み入れさせるわけにはいきません!いきましょう!」
オベイロンの声にダルヴィッシュ達は声を上げ三王へ向かう。
「どいつもこいつも小さいな!皆叩き潰してやる!」
巨人王アトラスは大軍の巨人兵を連れユートピアの地を踏み均していく。
「巨人王!それ以上進むのは辞めていただきたい!」
「これはこれは、民すら守れぬ無能な妖精王ではないか!」
アトラスは巨大な手を振り払い、目の前のオベイロンをまるで人が蝿を払うように扱う。
「イグニス!」
オベイロンの火力がアトラスの顔面を燃やす。
「ぐあっ!あぢぃ!」
「ハスタ・グラキアリス!」
オベイロンは氷柱をアトラスの顔面へ無数に放つ。
「いてぇ!クソ!チビのくせに!」
アトラスは足を踏み込む。すると地面が隆起し宙に浮くオベイロンを撃つ。
「がぁ!」
巨大な岩石に体が押し潰されるような強烈な痛みにオベイロンは地に落ち血だらけで倒れている。アトラスは背中に背負っていた巨大な戦鎚を手に取ると、オベイロンへ勢いよく振り下ろす。クラウスは間一髪でオベイロンを抱きかかえ攻撃を躱す。
「すばしっこいな!」
アトラスがオベイロンとクラウスを追う間にも巨人兵達はユートピアの奥地へ目指して侵攻していく。
「あぁ…終わりだ…。」
「あんな怪物に敵うわけがない…。」
ユートピアの奥地からでも見えるほどに巨人兵達は大きかった。どの巨人兵も小さくて三十メートルはある。一歩が大きくもうすぐそこまで巨人兵達が迫っていた。国民達が絶望している中
「アルケイン。私をあの巨人どもへ投げてくれ。」
「後で恨んでくれるなよ?」
「安心しろ。」
「ならいくぞ!」
アルケインはルシファーを抱えると思いっきり投げ飛ばす。さすがは騎士というところか。成人女性ほどの女性を三十メートルほどの高さまで飛ばし上げたのだ。
「あれは…?」
「人が飛んでるぞ!」
国民達が声を上げる中、ルシファーは大きく息を吸い
「巨人兵共!跪け!」
ルシファーの声は全巨人兵に届くことはなかったが、それでも最前列から二十体程が跪いた。その後ろにいた巨人兵達は前の巨人兵達の動きに戸惑っている。
「アルケイン。俺も投げてくれ。」
「構わない。」
アルケインはノーザの足を持つと遠心力をかけ勢いよく惑い立つ巨人兵の元へ投げる。
「っ!」
ノーザは巨人兵に衝突する際、目を瞑る。次の瞬間目の前にいた巨人兵の頭が細切れになり落ちていく。
「なっ!おい!誰だ!」
その光景に他の巨人兵達が慌てふためく。ノーザは止まることなく次から次へと巨人の頭部を細切れに斬りつけては次の巨人へと移っていく。
「さすがは北の戦士の生き残りだ。」
落下してきたルシファーをアルケインが受け止めながらそう言葉を零すとリリィが
「そうね。あれほど強力な力を持っているならマーリンから逃れる術も持ち合わせていたのでしょうね。」
「そうだな。これならアッシュ達の方も安心だな。」
アルケインは一安心したようにルシファーを下ろすと、跪いた巨人兵に飛び乗り、そこからその後方で侵攻を続ける巨人兵へ飛び移る。
「いくぞアクア。」
『ええ。』
アルケインは魔剣を抜き、最大出力の魔力を纏わせ一閃する。
「光陰の剣!」
魔力は斬撃の波となり数十体の巨人の頭を切断する。ノーザは次々にその他の巨人達を斬りつけていく。そして残った巨人をアルケインが仕留めていく。一方、跪いた巨人兵はリリィとルシファーが斬り倒していく。
「デカいとやりにくいな!」
「同意見よ。でも動かなくてありがたいわ。」
そして二人は二十体程の跪いた巨人を倒す。残りの巨人はノーザ、アルケインが仕留めていく。
「クラウス…様…。」
「大丈夫だ。自分の回復に集中していい。」
クラウスはオベイロンを抱きかかえたままアトラスの攻撃を躱し続ける。
「クソォ!クソォ!当たれぇ!」
アトラスは岩石を次から次へとクラウスへ向けて放つ。
「おい!デカブツ!」
背後から聞こえた声にアトラスは振り返る。そこには一人の剣士と白衣を纏った男がいた。
「何だ?チビ。」
「俺も百七十は超えてるのにそれでもチビ扱いかよ。」
龍馬は少しガッカリしたように言う。隣に立つアルベルトは
「当たり前だろ。相手は推定三十メートルだ。」
「それもそうだな。」
「で?何の用だチビ!」
「あぁ…、お前を倒すわ。」
その言葉にアトラスはキレる。
「何だその軽いノリは!俺は巨人王アトラスだぞ!たかが人間如きがナメた口利きやがって!」
アトラスは戦鎚を振り下ろす。アルベルトは靴裏から噴射される蒸気により宙へ舞う。龍馬は戦鎚を躱すと、戦鎚に飛び乗り、アトラスへ向かって駆け出す。
「喰らえ!」
龍馬が剣を振り降ろしアトラスの腕を切断する。しかし、刃は通ることなく折れてしまう。
「っ!硬すぎ…。」
「邪魔だ!」
アトラスは腕の上の龍馬を払おうと巨大な手が迫る。躱そうとした龍馬は急に心臓が握られるような痛みを覚え体が動かなくなる。
「くっ…。今…かよ。」
遂に呪いが発動したのだ。そこを巨大な手に撃ち落とされた龍馬は地面に衝突し、倒れたまま動かなくなる。
「龍馬!」
アルベルトが叫ぶが
「お前も邪魔!」
アトラスは裏拳をアルベルトへ放つ。間一髪で躱すも、腕を振っただけで途轍もない風圧が襲い、アルベルトは吹き飛ばされる。そこへアトラスの巨大岩石が無数に打ち付けられる。
「さっきのロン毛のと妖精王はどこ行った?」
アトラスが辺りを見渡すと背後から何かが当たる。
「ん?」
「っ!」
ノーザがアトラスのうなじを切り裂こうとすると、他の巨人達と体の硬度が違いすぎて、ノーザの剣が折れてしまう。
「小虫が。」
そのノーザをアトラスは叩き落とす。その後アルケインも跳躍して
「アクア、代わってくれ!」
『ええ。』
アクアはアルケインの体を借り魔剣を握る。
「お?その魔力は《嫉妬》のブルーか?」
「死ね!」
アクアは魔剣に魔力を乗せ振るう。その斬撃はアトラスの頬に擦り傷程度の傷を負わせた。
「っ!俺の体に傷をつけたなぁ!殺す!」
アトラスは手を振り下ろすと遥か上空から巨大な流星群が降り注ぐ。
「っ!」
アクアは魔力を一気に放出し
「ブルーアロー!」
と魔力で出来た矢を流星群へ放つ。
「こんなのが落ちたらこの辺一帯が…。」
しかしアクアの力だけでは流星群を全て捌けない。そこへアトラスは楽しそうに笑いながら追加の流星群を放つ。
「反射斬!」
アクアが捌けずに落ちてきた流星群を叩き落されたノーザがボロボロの状態で振り切る。クラウスとリリィも流星群を切り落とすが、三人がかりでどうにかなる量ではなかった。ルシファーは降りかかる流星群の上を飛び移りながらアトラスへ迫る。
「アーサーか。」
ルシファーがアトラスの目の前まで迫ると
「動くな!」
と命令を下す。アトラスの体は一切動けなくなる。
「マジックキャンセル。」
その言葉に流星群が消失する。ユートピアの地が幾つかの流星群により壊されていたが、それ以上被害が進むことはなかった。
「っ!」
動けないアトラスが驚いていると目の前にオベイロンが現れる。
「妖精…王…!」
「よくもこんなことをしてくれましたね!」
オベイロンはアトラスを睨みつけ
「王権…。」
「待て!辞めろ!俺は動けないんだぞ!」
「喋るな!」
そこへルシファーによる追加の命令が下される。アトラスは動くことも喋ることも出来なくなる。その顔は絶望一色に染め上げられていた。
「虚ろな生命の葬送。」
しかし、オベイロンの王権が発動されたと思ったが何も起きない。それに一安心したアトラスは嘲笑うような笑みを浮かべた。王権を手にしたばかりで扱えない、やはり無能な王なのだと改めて実感していた。しかし、アトラスの体はだんだん朽ち果てた木のように枯れていき、最終的に何一つ残らず消えていった。
「…。」
オベイロンは別荘付近に転がる岩石の群れと巨人達の遺体。そして無残にも散っていった太刀川龍馬、アルベルト・フリッツの亡骸を見下ろしていた。
「すいません…。私が弱いばかりに…。また…守れなかった…。」
誰もいない上空にて一人言葉を零すオベイロン。誰にも聞こえることなく、その声は虚空へと消えていった。クラウスとアルケインは倒れた龍馬と岩石の下敷きになっていたアルベルトを救出する。
「…。」
「ごめん…なさい…。」
ルシファーは膝を付き涙を零していた。この場にいた誰もが自身の弱さに打ちのめされていた。
皆さん、いかがだったでしょうか。
巨人王を倒すことできたものの、龍馬、アルベルトの犠牲があった。
次回第五十八話 百獣王




