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夢の森書房での不思議な体験  作者: 柊瑠璃
第三章 本から出てきてしまった少年の話
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夢の森書房が開店前の薄暗い時間帯に一冊の本が浮かび上がりひとりでに開き、ページがめくられ続け半分ほど開いた状態で止まりました。そしてその中から人が出てきたのです。その本は主から譲り受けた本でした。

 本の中には数年に一度不思議な扉が現れ、その扉は主のいる場所へと繋がっています。これはほんの世界の精霊ノアが主のためを思って発現させているものでした。しかし、ここは本の世界ではありません。飛び出してきた主もまさか浮いているとは思わなかったのでしょう。その子は数秒浮いていましたが、ドッシーンというすごい音と共に落ち、その音が書房内に響き渡りました。その音に反応して出てきたのが店主の瑠璃です。

 彼女は、何事かと思い急いで2階から降りてきました。この店は住居と一体型になっているため、普段は1階で店を営み、2階は立ち入り禁止の看板を立てていますが、今はまだ営業時間前のためその看板はありません。

それはひとまず置いておいて、彼女は出てきた人物に急いで駆け寄りました。

「大丈夫ですか! 足を痛めているようですので手当をしましょう。はじめまして。ここは不思議なことがおこる夢の森書房でございます。申し訳ありません。ふぁ、起きたばかりでして眠くて……」

「夢の森書房? なぁ、俺は主に会いに来たんだ! ここは主の部屋じゃないのか? 主との約束を果たしに来たんだ! ここはどこなんだ?」

少年は困惑し、泣きそうになりながらも店主に尋ねました。

「ええ、ここは主が暮らしている世界とは別の世界に当たるのだけれど……あなたもしかして本の中から出てきてしまったのかしら?」

「本の中から出てきた? そんなことがあるのか?  いつも主の部屋に繋がっていたのにおかしいな……。もしかして入る扉を間違えたのか? 両親を説得してやっと主に会いに行けると思って来たのに。よし、もう1回扉に入って……」

少年は混乱していて大きな声で独り言を言っているようですが、そのことには気づいていません。そして何かを決心したように辺りを見回していますが、目当てのものが見つからなかったのでしょう。泣きそうになっている少年に瑠璃が話しかけます。

「ねぇ、あなたもしかして“扉”を探しているのではないかしら。残念。ここに扉は無いのでも今日で良かったわ。今日は特別なゲストが来る予定だからお店はお休みにしようかと思っていたのよ。そのゲストが来るまで私と一緒に待ちましょう! そうだ!  あなたの話をしましょうか。自分の物語を聞いたことがないでしょう?  と言いたいところなのだけれどごめんなさいね。まだ、開店前なんです。どうしたらいいかしら」

 瑠璃が悩んでいるとどこからか可愛らしい少女が現れました。

「そんな悩むことはない。少し早いが始めてしまうのはどうだ? どうせあ奴はいつも来るのが遅いしな」

「そうね……。そうしましょうか! ありがとうリル」

その子は満足そうに微笑み返します。身体が透けているので恐く精霊なのでしょう。

「して、そなたの名前はなんという?」

「ライルです。」

「よい名じゃ、わしもお主の話に興味があるからの。一緒に聞いても良いか?」

小首を傾げて瑠璃にそう尋ねます。

「もちろん。いいわよ。では、少し早いですが始めましょうか」

彼女は準備をするために立ち上がりその腕にはひと粒の雫がついたブレスレットがついていました。








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