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ところがある日、電車がホームに入ろうとしていたときのことです。


ホームの端にいた彼女が、突然線路に飛び出したのです。


電車はすでにスピードを落としていて、さらに運転手が急ブレーキをかけたのですが、見事なくらいに電車のすぐ前に飛び込んできたので、間に合いませんでした。


――轢かれた!


その場にいた全員がそう思いました。


そして駅員が総動員して、後から駆けつけた警察もいっしょになって彼女を探したのですが、身体の一部はおろか、血の一滴でさえ見つかりませんでした。


「確かに轢かれたはずなんだけどなあ」


「ああ、俺も見た」


私の横に立っていたサラリーマン風の二人が言いました。


彼らの言った通りです。私も片目をつむりながら、もう片方の目で彼女が轢かれるところを見ました。


しかしそこには何もなかったのです。



ところが次の日に駅に行くと、なんとその女が壁を睨みつけながら立っているではありませんか。


私はぎょっとして思わず一歩下がりました。


そして一息つくと、なるべく彼女の方を見ないようにしながらホームを歩きました。


後から来る人も、みんな同じような反応でした。


通勤時間帯に駅に来る人はほぼ同じ人なので、みんな昨日の出来事をよく知っているのです。



その後も彼女は毎日その姿を現し、通勤客も駅員もそれを無視し続けました。


もちろん私も。


そのうちにみんなもまた慣れてきて、彼女を見てもいちいち反応しなくなりました。


ただ彼女のそばを通るとき、彼女のとの距離がみんな前よりは広がったようですが。


彼女も立っているだけであれば、特に大きな問題はありません。


ですが一つだけ困ったことがあります。


それは時折彼女が、思い出したかのように電車に飛び込んでしまうことです。



          終

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