旅の始まり! この世界の全てを見に行くんだ!
更に五年後。俺は五年前と同じように平原にいた。
しかし、五年前とは決定的に違うものがあった。
俺と母の位置である。
俺が立っていて、母は倒れていた。
「母さん……俺の勝ちです」
俺はこの日、ついに母さんを倒したのだった。
「今まで……ありがとうございました!」
稽古の時はいつも敬語。その流儀を最後まで貫き通して、俺の剣の修行は一旦の終わりを迎えた。
もちろん、剣の道に終わりなどないので、これからも極め続けはするが……。
「ふふ、十三歳に超えられるなんて……普通なら悔しいんだけど……」
何だか清々しいわ……母は笑いながら言う。
「さて、ロゼ……あなたに私たち親が教えられることはもう全て教えたわ。あなたはこれからどうしたい?」
「どうしたいって……」
どうしようか……?
異世界……剣と魔法の……。
異世界と言えば……何をする?
やっぱり、あれだろうか?
「旅……かな」
「旅……うん、良いわね。それなら冒険者になると良いわ」
「冒険者?」
「ええ、魔獣を倒したり、ダンジョンの攻略をしたり、様々なことが出来て……お金も貰える。最高じゃない?」
「なるほど……それは良いね」
「よし! 決まりね。じゃあロゼ、冒険者として頑張りなさい!」
「はい!」
「よし、じゃあ帰ったら早速準備しなくちゃ」
「え?」
「ん?」
「もう出発するんですか?」
「当たり前でしょう?」
「でも、もう少しくらい家族で……」
「怖いの?」
「うっ……」
図星を突かれた。
そう、怖い。
強くなったとは思う。頭も良くなったと思う。
自分の顔も悪くないとは思うし、背もそこそこでデブでもない。
でも怖い。
怖いのだ。
どうしても外は怖い。
前世の記憶がそう思わせる。
俺はどうしようもなく、自信が持てないのだ。
「大丈夫!」
「……え?」
「大丈夫よ。あなたなら大丈夫! 自信を持って!」
「でも……」
「でもじゃない! 言い訳なんかいらない! あなたなら大丈夫なのよ。あなたはもう、私も父さんも倒したのよ? それで自信を持たないなんてどうかしてるわ」
「……大賢者と……究極の剣士……でしたっけ?」
「ええ、そうよ。そんな二人に勝ったのよ?」
「……そうですね」
「どう? 少しは自信、出てきたんじゃない?」
「はい」
まあ、正直なところ、まだ自信なんてないし、不安でいっぱいだ。
でも、頑張ろう。
強く生きよう。
俺の努力は無駄じゃないと、今世でこそ示すんだ!
さて、次の日のことである。
早朝、俺は物音一つ立てずに家を出た。
母さんも父さんも、まだ寝ている。
俺は家から見える湖に向かい、顔を洗う。
そして荷物チェック。
カバン良し。地図良し。食料良し。
全部完璧だ。
おっと……、魔剣ルーロ良し。聖剣イーゼ良し。
もちろんこいつらのことは忘れていない。
「やれやれ、久しぶりだなぁ、ご主人」
「お久しぶりです。ご主人様」
「ああ、久しぶり」
ルーロとイーゼとの会話……五年前ぶりくらいか。
「ふふ、長かったなぁ……なかなか、暇でしょうがなかったぜ」
「ええ、暇でした」
「ご、ごめんな……」
五年もほっとくなんて最低だなぁ……俺。
「それで? どこに行くんだ? 魔獣でも倒しに行くのか?」
「それとも、ダンジョンの攻略ですか?」
「どっちもだよ……この世界全て、見に行くんだ」
俺はそう言って二人(二つの剣)を背中の鞘に納め、鞄を持ち……一番近くの都市へと向かった。




