無理矢理な結末
これでジル編は終わりです。
またしばらく本編の方を更新していこうかと思います。
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「ちょっと自分の希望が上手く行かなかっただけで、全てを諦めてる。ジルにはそうなって欲しくない人だっていっぱいいる。だから言えることは……ちゃんと考えて、上手い手段を取りなさいってこと」
リビットの方――正確には取り立ての人へと近づきながら、言葉を紡ぎ続ける。
「ジルも、理想を叶えようとするのは結構だけど、そのための手段が全て実直で済ませられる訳ないじゃん。っていうか今回の場合、頼まれたことに意識を向けすぎてて、本来やるべきことが何も出来てない」
「やるべきこと……?」
「これ」
そう言って――ちょうど取り立て人の隣に立てた所で、一枚の紙を取り出す。
「リビットの好きな人の――あなたが借金をしている人張本人からの指示書」
「えっ!?」
慌てた様子で、その紙をひったくるリビット。
「あなたの借金の理由、病気だったあなたを治すための治療費として親がしたものだったんだってね」
「あ、ああ……まさか、直接聞いたのか?」
「当たり前だろ」
ジルのストーカーさんと別れたあの後……俺はその足で直接、彼の想い人がいる家を訪れた。
直接女性と話をするつもりだったが、まさか父親のほうがいるとは思わなかった。
そこからは簡単だ。
彼がその家に借金をしていること。
その借金の理由が彼自身の治療費だということ。
完全に治ったから働いて借金を返そうとしていること。
それらの話を聞き出した。
そしてそうなると、後は予測できた。
その借金を返すために、街の仕事を父親に紹介してもらうためにあの屋敷を訪れた時に、その女の子に惚れた。
でも仕事を紹介してもらったばかりだから、今更止めるとも言えなかった。
だからせめて、出て行く前に彼女と一言話しをしたかった。
そのために、コネがあるであろうジルに、お願いをした。
「そこに書いてあるだろ? 別の街に行くのは、来月ちゃんと利息を払うのなら勘弁してやるみたいな内容がよ」
「確かに、そうだけど……でも、どうやって……?」
「全部話したに決まってるだろ」
「全部!? ってことは、あの……」
「ああ。リビットが娘さんに惚れたので何とか仕事をこの街で紹介してくれませんかって頼んだ」
「ぎゃあああああああああああーーーーーーーーーーーーー……!」
いきなり叫び出すリビット。
……いやまぁ、確かに俺も逆のことをされたら同じような反応するかもしれないけど……。
「えっ、えっ?」
「ってことはもしかして、直接じゃなくて間接的に告白しちゃったってこと?」
「アイツが君の事好きなんだって的な?」
「いやいやカンナちゃんにミミルちゃん、それは違うよ」
間違えて認識し始めた子供二人に、ちゃんとした訂正をしてやる。
「その好きな人の親に、娘さんのことを好きなんだって、って教えてあげたんだ」
「「きゃあああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーー……!」」
今度は黄色い声援めいた悲鳴が上がった。
照れと恥ずかしさに塗れた男の悲鳴とは違って、一足飛びの展開に喜ぶような女の子の声だ。
「それはつまり、親に紹介したようなものじゃないのか……?」
「でも、そうするしか無かったんだから、仕方ないじゃない。彼をこの街から出さずに、これからも会うための機会を増やすためにはさ」
俺の行動に驚きながらのジルの疑問に、あっさりと答えてやる。
「一言会話をして満足させるんじゃなくて、これからも何度も会話をさせるための手段を模索する。それが今回の、一番ベストな解決だと思ったから実行したの」
手段がベストだとは思えないが……まあ、仕方がない。
「ご主人の娘さんを……」
「お前……中々勇気があるな……」
取り立てに来ていた二人が複雑な表情を浮かべて、それぞれが照れてうずくまるリビットの肩に手を置いている。
気持ちは分かる。
父親、外見が結構怖かったからなぁ……あの娘さんを奪うとなると、かなり苦労することになるだろう。
しかしまあ、ある意味親公認になったようなものだ。
ここからの彼の活躍に期待したいところだ。
◇ ◇ ◇
「結局、リフィアに助けられたね」
学校への帰り道、俺と並んで歩くジルはそんなことを言ってきた。
「そのために連れ出したんでしょ? だったら問題ないわよ。役に立てて何より」
そこで、あ、と気付く。
「でも、それなら他にもお礼を言うべき人がいるんじゃない?」
「えっ?」
「あなたが理不尽な目に遭いそうになったら助けてやってくれ、って頼んでたの」
まあ、向こうには「言われるまでもない事」って言われてしまったけど。
「あ……もしかして……」
何かアテがあったのか、ハッとしたような表情を浮かべる。
「これから学校に戻ったら、あなた以外の人は説教を受けることになるでしょうけど……あなたが一言添えたら、それだけで無くなるでしょうね。二人共、それがお礼で良いから」
そうしたやり取りをしている間にも、門番がいる入口に近付いていく。
近くには先生の姿もある。
魔法を使って姿を隠していようとも、先生が相手ならストーカーの存在も見抜かれているだろう。
だからその後の説教を逃れるためには、ここからの彼の交渉がカギになる。
バカ正直で真正面、俺も良く知るちゃんとした騎士を目指す彼の……俺が始めて目にする騎士らしくない行動がどうなるのか。
連れ出された身としては、上手く回して、何かしらの罰は与えられないで欲しいものだ。




