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親の顔
ルームシェアしている友達と喧嘩した。
共用スペースでくつろぐ彼女の前に、バイト終わりに買ってきたドーナツを置いて謝った。
「物で釣るとかどういう教育受けてんの。親の顔が見てみたいわ」
「あはは、わたしも見てみたいかも」
「はあ?」
「家族はお兄ちゃんだけだから」
両親の虐待がひどかったらしく、お兄ちゃんが幼いわたしを連れて逃げたらしい。物心ついた時には、家族はお兄ちゃんだけだった。
「ふーん、あっそ。じゃあその兄貴の顔が見てみたいわ」
「あ、それならこれ二年前のだけど」
「写りわる」
「スマホ買ってもらった次の日に死んじゃったから」
画面を戻して「暗い話してごめんね」へらへら笑いながら言った。
「……別に。ってかあんたも食べれば?」
「え、いいの?」
「どうせ私だけじゃ食べきれないし」
「やったー、ありがとう」
最初からそのつもりだったでしょ。と言わないのが彼女の優しいところだ。
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