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「だって恥ずかしい」
「は……?」
なにも素直に打ち明けてしまう必要がなかったのに、動揺のあまり口が滑った。
自分の感情をそのまま伝えると、キースは戸惑った様子でわたしを見た。
「恥ずかしいって?」
ああ、あんまり掘り下げないでほしい。
黙り込むとさらに顔を近付けた。不用意に動けばそのまま唇が重なりそうだ。
「キース様……っ」
「ん?」
「ち、ちかいです!」
「きみが素直に言えば退く」
つまり言わないならこのままという訳だ。
新手の脅迫に冷や汗が流れる。
彼の目はどこまでも本気だった。
――やる。キースなら絶対にわたしが口を割るまで離さない。それを直感した。
「それともカレンはずっとこのままが良い?」
艶のある微笑みを向けられ、ビクッと肩が跳ねる。その拍子にキスしなかったのは偶然だ。
今の心境でそれに耐えられるほどの気力があるだろうか。わたしには自信がない。
「キース様」
彼を呼ぶ声がやけに上擦る。
どうした、と返事をする彼の態度がどうしてかさっきよりも柔らかくなっているのはどうしてだろう。
「その、抱かれた直後に顔を合わせるのが恥ずかしくて……」
どうにか離してもらおうと白状する。最後の方はボソボソと小さなものだったけれど、近過ぎる距離なのだから聞こえたはずだ。そう開き直っていると、少しの沈黙の後、彼が噛みつくような勢いでキスをしてきた。
「…………ぁ」
長いキスが終わり、息を整えながら彼を見る。
彼の頬は赤く、熱の籠った目でわたしを見下ろしていた。
「……どうしてきみはそんなに男を煽るようなことを言うんだ」
そんなの知らない。弱々しく首を横に振ると彼は「くっ」と低く呻いた。
感極まったように抱き付かれると鼓動の音が聞こえてくる。
隠しようのない動揺の証拠。それが愛おしく感じる。
「……抱きたいと言ったら駄目だろうか」
普段よりも弱きな声に胸がときめく。
だってそれは彼が他の人には決して見せない姿だ。わたしだけが知っている彼の姿。特別だと言われているみたいで嬉しくなる。
「キース様が望むなら……」
そう言いながらもわたしの答えだって同じだった。
何度も何度もキスをされながら、わたしは彼の行為を受け入れた。
***
ーー夢のような甘い時間を過ごしても、お互いに秘密を打ち明けることはない。
ただ目の前の快楽に溺れたのはその時間が短いものだと無意識のうちに知っていたからかもしれない。




