すべてのフラグを、書き換えてやる
運命は、選択するものじゃない。
俺が——書き換える。
「《フラグ書換》、強制起動——!」
意識の奥底。そこにあるのは、無数のフラグの糸。
無慈悲に命を喰らうそれらを、俺は片っ端から切り裂いていく。
《警告:書換処理により、因果が崩壊します》
《補正限界を超えています》
《ユーザーの存在確率が低下します——》
「そんなもん、知ったことかよ……!!」
コロの命を救うため、俺は選ばれた運命を拒絶した。
結果、世界は今、崩壊の淵にある。
神殿が軋み、空が割れ、現実と虚構の境界が溶け出していく。
だけど——
「まだ終わらせねぇ。こっからが……俺の反撃だッ!!」
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「イオリっ!! もうやめて!!」
リアが叫ぶ。槍を手に、光の渦の中へ踏み込んでくる。
「そのままじゃ、お前が……!」
「わかってる。でもやるしかねぇんだよ!」
「でも……っ!」
「俺は、お前ら全員生きててほしいって、本気で思ってる。だから俺は……っ」
「それが叶う未来なんて、あるのか!?」
リアの叫びに、俺は——即答できなかった。
だが、代わりに一人の声が響く。
「あるわよ。だってこのバカ、信じられないくらい、しぶといから」
ルナが光の中から現れる。マントを翻し、炎を纏った眼差しで言い放つ。
「私たちが諦めてないのに、アンタだけ諦めたら許さない。ツンデレ返上しちゃうからね!!」
「ルナ……お前……ッ!」
「お前もまた死亡フラグ乱立させてんじゃないのよ! バカ!!」
その一喝に、俺は不覚にも——笑ってしまった。
「……ありがとう、ルナ」
「わたしも……いますっ!」
ミナが続く。聖なる杖を構え、暴走する因果を抑えにかかる。
「世界の法則は、神の書き記したシナリオ……でも、イオリさんなら書き換えられる。わたしたちは、その未来を支えます!」
「ミナ……!」
「だから、希望を諦めないでください……っ!」
そして——
「コロもやるーっ!」
涙目のまま、でも必死に立ち上がったコロが叫んだ。
「イオリが消えちゃうくらいなら、コロ、もう一回くらい暴走してもいいよ! ドラゴン魂、見せる!」
炎と再生の力をまとい、コロは光の中へ突撃してくる。
仲間たちの力が、俺に集まってくる。
そのエネルギーが、世界を書き換えるトリガーになる。
《全フラグ解析完了》
《最終因果構造への干渉を開始します》
《全対象の死亡フラグ:解除可能状態》
——今なら、届く。
「全てのフラグを、書き換えてやる!!」
俺は叫び、右手を掲げる。
因果の大樹。枝の一本一本に刻まれた未来。
そこには、誰かが死ぬ運命が無数に刻まれていた。
——だが、それを一本ずつ書き換える。
◆リア=ヴァルキュリア
【死亡フラグ:仲間を庇って戦場で死亡】→【回避】
【死亡フラグ:使命を果たし消滅】→【使命の延長:新たな守護者に】
◆ミナ=ルーミエル
【死亡フラグ:封印時に命と引き換え】→【無血封印・代償なし】
【死亡フラグ:神託による自爆的運命】→【神託システム破棄】
◆ルナ=ノクティア
【死亡フラグ:魔王敗北後の報復対象】→【贖罪の英雄として再定義】
【死亡フラグ:力を失い裏切られ暗殺】→【新たな魔族の希望として即位】
◆コロ
【死亡フラグ:暴走による討伐対象】→【暴走制御成功】
【死亡フラグ:掟破りで処刑】→【新たな竜族の守護神に】
——そして、俺自身。
◆結城イオリ
【死亡フラグ:因果の干渉による存在崩壊】→【選択されなかった者として観測外へ】
「……!」
《書換完了》
《因果構造、安定化開始》
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世界は、静かに息を吹き返した。
砕け散っていた神殿が、光に包まれて再構築される。
空が青く戻り、風が温かく流れる。
全員の頭上から、死のフラグが消えていた。
「……イオリ……?」
ミナが手を伸ばす。
リアが、言葉にならない声で唇を震わせる。
ルナは——泣いてた。ツンもデレも吹き飛ばして。
コロは全力で抱きついてきて、俺の肋骨を鳴らした。
「……ありがとな、お前ら」
俺は微笑んだ。世界に、ようやく——希望の音が響いていた。
——だが。
その時、空の彼方から、あの声が届いた。
「……フラグの書き換え。なるほど、やはり貴方は特別ですね、結城イオリ」
声の主は、女神アルシア。
「けれど——それを許すつもりはありません」
その瞬間、空が裂け、彼女の本性が現れる。
「貴方は、フラグの管理者にして、最大の例外。次に書き換えられるのは——この世界そのものです」
世界を破壊する者として降臨した、創造の女神。
彼女との最終決戦が、幕を開ける——!




