28.再計測
「そうか。ルイがそう言うなら異論は無い」
ルイからの提案、魔力量の再計測の話をライアンに伝えた。
「……ただ、再計測には俺も立ち会う」
「はい! 私もその方が安心です」
やはり、あの魔術具を使うのは抵抗がある。
壊れたりしないだろうが、ライアンとリアムの身近な二人がそばに居るだけで、安心感が違うのだ。
「では、リアムお兄様にお願いしに行って参ります」
「……俺も、行こうか?」
「え? お願いして来るだけですから、大丈夫ですよ?」
「……くれぐれも気をつける様にっ」
もうリアムは嫌がらせなんてしないのに?
同じ邸内のリアムの部屋に行くだけなのに、何を気をつければいいのだろう?
不思議に思い首を傾げると、ライアンはゴホンと咳払いして「何でもない」と言った。
ライアンの部屋を出ると、自分の部屋には戻らず、直接リアムに会いに向かった。
前もってセバスチャンに、リアムの部屋を訪ねたい旨を伝えてもらってある。
ノックをすると直ぐにドアが開き、中へと通された。
「リアムお兄様、ちょっとお願いしたいことがあるのですが」
「アンジェのお願い……? 喜んで聞こう!」
嬉しそうに私の手を握り、銀ブチ眼鏡の奥の瞳をキラキラさせる。
余程、妹からのお願いが嬉しいのだろうか。やはりシスコン……。
「私、以前に……。ライアンお兄様に魔術師団からお借りした、魔力量を測る魔術具で計測して頂いたのです」
「勿論、知っている。私が兄上に頼んだのだからな」
「そうだったのですね! 実は、私が光の魔法や癒しが使えるようになったのが、最近のことなんです。初めて計測して頂いた時は、全く魔法は使えませんでしたから。もしかして……魔力量に変化が出ているのでは無いかと思いまして」
「成る程。それは一度、測り直した方が良いかもしれないな」
――よし! 心の中でガッツポーズする。
「ここのところ、自分の中で魔力が大きくなっている感じがするのです。この力が……国や民の為に、何かお役に立てると良いのですが」
ちょっと大きなことを言っているなぁと自分でも思う。
ルイのシナリオとはいえ、照れ隠しに微笑んでおく。
すると、リアムは熱のこもった瞳で私を凝視する。
「やはり、アンジェは聖女様だ」
「リアムお兄様……。私のような者が聖女様だなんて」
首を小さく左右に振り、一応謙遜する。
聖女と認めてもらわらないとだけど……。自分で聖女だなんて図々しく言えないよ。
とはいえ、もう一つ伝えなければ!
「ですが……最近、王太子殿下からの恋文の様な物が届くのです。もしも……、婚約して正式に嫁ぐことにでもなってしまったら、何をするのも殿下を通さねばならないのでしょうか?」
「確かに……な。アンジェが聖女として生きたいならば、王太子との婚約はしない方が良い」
リアムはキッパリ言い切った。王太子と婚約しない方がいいなんて、絶対に外では出来ない会話だ。
「……私は、どうしたら良いのでしょうか?」
「大丈夫だ、私に任せておきなさい」
そう言ってリアムは不敵な笑みを浮かべる。
全てルイの言っていた通りになった――。
◇
――翌日。
リアムは朝から王宮の魔術師団本部へ戻り、正式な手続きを踏み魔術具を持って帰ってきた。
流石、副師団長だけあって、リアムは本当に優秀な人だったのだ。
たとえ、ブラコンにシスコンまで加わってしまった、少し残念な人だとしても。
そして。
リアムとライアンに見守られ、私は二度目の計測を行った。またしても、魔術具の針は振り切り、それ以上は測定不可能だった。
リアムは驚きながらも「やはり!」と納得し、結果を急いで本部に持ち帰った。
リアムお兄様、後は貴方にかかってます! 頑張って!!
私はリアムの乗った馬車を見送りながら、エールを送った。




