27.作戦会議
「それで、姉さんはどうするつもりなの?」
「…………わかんない」
連日の恋文と花束攻撃に参ってしまい、ルイの家……困った時に頼りになる伊織に相談に来たのだ。
勿論、ライアンの許可を得て侯爵邸を抜け出した。
最近――。
花束が届く様になってからは特に。やたらとリアムが側に居る。だから抜け出すのも一苦労だった。
どうも、彼なりに私を心配してくれているらしいが。心を入れ替えたとはいえ、あれだけ酷い嫌がらせをした人とは思えない変わり様だった。
ここまでくるとシスコンを疑いたくなる。
「本当、姉さんて強運の持ち主だよね。社交界デビュー待たずに王太子と出会うとか」
ルイをジトーッと、睨む。
「……あの(自称)神のせいよっ!」
「うーん。王太子は完全に、姉さんを好きになっちゃったみたいだしね」
「でも、私は好きにはなれない……」
「そりゃ、ライアン師団長が好きなんだもんねぇ」
――――!!?
「なっ……ど、どうしてそれをっ!? 私達、双子だから?」
全身から汗が吹き出してくる。双子特有の、なんか凄い能力まで覚醒して、私の心が読まれてしまう……とか?
「双子じゃなくてもさぁ……。そりゃ、見てたら分かるよ。ちょいちょい二人の世界だし。師団長は姉さんを凄く大事にしてくれているから、僕は嬉しいけどね。ちなみに、オスカー副師団長だって知ってるよ」
ヒイィ――ッ、恥ずかしいっ!!
ちゃんと気持ちを隠したつもりだったのにっ!
「それよりもっ! 王太子には姉さんが聖女だって、そっちを知ってもらわなきゃいけないんだ」
「でもねぇ……。どうやって?」
うーん……と唸ったまま考え込んでしまった。
名案が出るといいんだけど……。
しばらく眺めていると、ふっとルイの表情が緩み、顔にかかった青い髪を無造作にかき上げた。
なんだか、最近のルイはどんどん魅力的になっている気がする。
そのせいか、「伊織」より「ルイ」と呼ぶ方がしっくりくるようになった。少し寂しくもあるが。人前で呼び間違えしないためにも、良いのかもしれない。
「師団長の弟のリアムって、姉さんを聖女だと思っているんだよね?」
「うん。そうだと思う」
あの時、確かにボソボソ言っていた。
「彼に、姉さんが聖女だと魔術師団内で広めてもらおう」
「へ?」
当初の予定では、王太子にはアンジェの鮮烈(?)な社交界デビューで興味を持ってもらい、婚約者候補として王の直属の部下に詳しく調べさせて、聖女であると確信してもらうつもりだったのだ。
周りからの吹聴では、怪しまれたり裏の繋がりを懸念される恐れが有り、聖女確定までに時間がかかってしまう。教会の者に接触されると、更に面倒になってしまう可能性が高い。
ルイとしては、出来るだけ早く事を起こし、魔王討伐に向かいたい。
だが、未成年と成人では周りの人間を動かす……陣頭指揮の優位性が違うのだ。権力のある人間には、最低限対等になっておきたい。子供では侮られる。
それが、この世界の成人式ともいえる、十五歳の社交界デビューを待つ理由なのだ。
私が聖女となり、成人したルイが勇者と認められるベストなタイミング。
圧倒的な強者であっても、必ず人が集まれば反発が生じるのは世の常らしい。だからこそ、緻密な根回しが大事らしい。
とはいえ、鮮烈な社交界デビューって……。
私、何をさせられる予定だったのかしら?
「だからね。王太子に婚約に持ち込まれる前に、外堀から埋めてしまいたいんだ。聖女になれば、結婚は神から許されないないとか……適当に言っておけばいいし」
「適当って……」
確かに、胡散臭い神だったけど。
「王宮内で、国運営の重要機関の魔術師団からの発信は、大きいと思うんだよね」
「それは、そうかもしれないけど。実は、前にね……。私の魔力量を測るために、魔術具をお兄様が借りてきたことがあって。魔力量が多すぎたから、王族くらいの量に魔力を少なめに詐称して報告しちゃったんだよね。今更、聖女って……」
それを聞いたルイは、瞠目した。
「姉さん! それは、丁度いいよ!」
「えっと……なにが?」
「リアム魔術師団副師団長に、最近癒しが使えるようになったことを踏まえて、魔力量の測り直しを提案するんだよ。姉さんの魔力の多さと、癒しの魔法……魔術師団は速攻で食いついてくる筈だよ」
「そっか、なるほど!」
リアムにその話をする際の注意点として、その力を国の為に使いたいと伝えておくこと。
万が一にも王太子と婚約させられたら、私の行動は全て、王太子を通さないといけなくなるという事実も。
あとは、勝手にリアムが動く筈だとルイは言う。
「そうそう、ちゃんとライアン師団長にも先に再計測の件を伝えてね。姉さん、最近モテ期だから」
――は? 計測とモテ期?
ちょっと、何言ってるかわからないんだけど。




