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わらしべ聖女〜ただし、私の配役は藁(ワラ)のようです〜  作者: まめ まめみ


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7/7

ヤバイかもしれない

「はーい、今日のメインを配るよ〜。みんな、並んで並んでっ」


 食堂に入ると、シスター・アニーがにこやかに声を張りあげていた。なんだか、いつもよりウキウキしている気がする。

 

「大きい子たちは、小さい子の分も配ってあげてね~」

「「はぁーい」」


 みんなで並ぶと、前の子どもたちの方から歓声が上がった。

 

「わぁっ!」

「お肉おっきい!」

「すげー! 今日ってパーティー!?」


 大騒ぎしながらも、こぼさないようにそぉっと自分の席に戻っていく。


 チビたちが持っていく皿の中身を見て、ノギは目を丸くした。

 

(ホントだ。いつもより、なんか豪華)


 大皿には肉の入ったスープ。しかも、ちゃんと“肉のかたまり”ってサイズ感の、めったに見ない大きな肉。

 

「ふふ、騒がないの」


 シスター・アニーが笑いながらスープをよそっていく。

 ノギの順番になり、もらったスープをまじまじと見てしまった。


(すごいすごい、ちゃんと肉だ。いつもは“肉の味がする何か”なのに)


「今日は、良い報告があります」


 みんなが席についたところで、院長先生が静かに口を開いた。大騒ぎしていた子どもたちは、少しだけ声を小さくして院長先生のほうを向く。


「この孤児院に、支援をして下さっている商人の方がいます」


 院長先生は、優しい声で続けた。


「その方が、レオを養子として迎えたいとおっしゃって下さいました」


 一瞬、しん――と静まり返って。


「「えええええっ!?」」


 食堂がひっくり返ったみたいに騒がしくなった。


「レオが!?」

「すげぇ!!」

「いいなぁ!!」


 子どもたちのリーダー格の少年が、真っ赤な顔でパタパタと手を振る。


「ま、まだ決まってねぇし!」


「もう決まったようなものですよ」


 院長先生が嬉しそうに微笑む。


「今日のお肉も、その方から皆へのお祝いとして頂きました」


「「うおおおおっ!!」」


 歓声が上がる。


 近くに座っていた子どもたちがレオの背中をバシバシ叩き始めた。


「英雄じゃん!」

「レオすげー!」

「商人だって! 貴族!?」


「だから違っ……いてっ、叩くなって! あー、もう! お祝いしてくれて、ありがとうございます!」


 立ち上がって頭を下げるレオに、拍手が降り注ぐ。

 

 わあわあと騒ぐ声を聞きながら、ノギはぼんやりレオを見ていた。


 レオは孤児院の中で、わりと人気者だ。勉強も頑張ってるし、愛嬌もある。「焼き払え!」とか言いながら浄化の魔法ごっこをして遊んでいたのもレオだ。ぱぁっと輝くように笑う顔は、誰からも好かれると思う。

 

(そっか……)


 豪華なご飯にちょっとウキウキしていた気持ちが、すぅっと冷えていく。


 私が面倒をみていたレオの方が、私より先に孤児院を出る。


(いやいや! 良い事だよ。レオが選ばれなかったからって、私が選ばれるわけじゃないし!)


 ノギはスプーンでカチャカチャと音を立てて、大きな肉のかたまりをつっついた。スープからゆらゆらと立ち上る湯気が、そのままノギの心のようだ。ゆらゆら揺れて、頼りない。


 お祝いムードがだんだん落ち着いてくると、今度は肉の取り合い合戦が始まる。


「シスター、おかわりってある!?」

「少しならあるわよ〜」

「よっしゃ、オレ食べ終わったからおかわり〜」

「他のが食べ終わってないじゃん! ズルはダメだよっ」


 今度はぎゃーぎゃーと騒ぐ子どもたちの声を聞きながら、ノギは黙々とご飯を食べていた。

 

「ノギ姉ちゃん」


 隣から、レオがひょっこりと顔を出した。


「……なに?」


「えへへ。オレ、商人の息子になるかもしんない」


「うん。すごいじゃん」


「だろ?」


 ふんっ、と胸を張る。

 でも、そのあと少しだけ声を小さくして


「ノギ姉ちゃんも……がんばれよ!」


 と続いたので、ノギは返事をするのが遅れてしまった。たたみ掛けるようにレオは話を続ける。


「だってノギ姉ちゃん、まだ仕事決まってないんだろ?」


「うぐっ……」

 

 むせた。油断していたところに、いきなり言葉の暴力が降りかかってきた感じだ。しかも悪気はゼロ。


「なんか、アレだよ、良いとこ見つかるって!」


 レオがニカッと笑う。

 ノギはピキッと固まった。


(こいつに、心配されてるレベル……!)

 


 消灯後。

 

(ヤバいヤバいヤバい……!!)


 ノギは小さなベッドに寝転がりながら、睨みつけるように天井を見ていた。


 教会の下働き。このまま孤児院に残って、そして教会に行って、ずっと“ハズレの水魔法使い”として生きるのか。


(このままずっと、可哀想だね、仕方ないよね、って顔されるのは嫌だ)


 両手で毛布をぎゅっと握って、頭の上まで引き上げる。そのまま毛布にくるまって、ゴロゴロと寝返りを打つ。


(あー、どうしよ。明日、もう一回来るって言ってたし。うー、眠くなってきた)


 体が温まるとウトウトしてきて、考えがまとまらない。


(とりあえず会って。お店の話を、もう一度聞いてみよう、かな……)


 そうしてノギは、不安をゴチャゴチャと抱えたまま、ゆっくり目を閉じた。

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