エピローグ ロン君の最後
ロンは殆ど餌を食べなくなった。だいたい夏場は食欲が落ちて、朝やった餌は殆ど食べずに、夕方やった餌は一晩かけて食べていたが、全く食べていなかった。どうすれば良いのか困って、猫を何匹も飼っている、女房の友達に相談したりもした。私はロンが年をとって、歯が弱くなりカリカリは固くて、食べにくくなったのではないか、と思ったがそんな様子でもなかった。
病院にも電話してみたが
「柔らかい物は取り寄せなければ、置いていない、食べるかどうか判らないので市販品で試してみたら」と言われたので、ホームセンターに行って一袋買って来た。半分をいつも食べさせているカリカリと混ぜてやってみたら、半分くらい食べたので、翌日残りの半分を同じ様にしてみたが、全然食べなかった。種類の違う物を2種類買って来たが、全然食べなかった。
もしかしてカリカリの餌を食べてくれるかと思って、今まで通り毎日出していたが、四日ぐらい食べなかった。
このまま死んでしまうのか、どうしようも無いのかと思っていたら、五日目に少し食べた。それから食べる量は減ったが、毎日食べる様になった。
ロンは大分痩せて来た。トイレにちゃんとする日もあったが、三日おき位に二階で寝ている私達の所へ、早朝の5時位に
「にゃ~にゃ~」と大きな声で鳴いて、起こしに来るようになった。
一階に降りて見ると、居間の畳やカーペットの上に粗相をして、ウンチやゲロを吐いたりして汚していた。掃除すれば済むのだからしょうがないと思った。
人見知りをしなくなった、知らない人や百合夫婦が来ても、逃げなくなった。
少し認知症が、入ったのではないかと思った。
二ヶ月位して少し寒くなったので、ロンが夜寒いだろうと、ホットカーペットをつけて炬燵にした。ロンはその中で寝るようになった。
また餌を食べなくなった。ずいぶん痩せて来た。病院へ連れて行こうかとも思ったが、多少の延命治療をしても、苦しみを長引かせるだけだろうと思った。可哀想だがもう諦める事にした。
二階へ上がろうとして、階段を登りかけたが、力がなくて滑り落ちた。2~3回チャレンジしたが、その度に滑り落ちたので、抱っこして炬燵の所へ連れ戻してやった。
食べなくなったのでウンチも出なかった。
段々弱って行くのを見るのは辛かった。
ロンが食べなくなってから五日くらい経った、夕方のことだった炬燵の中から這うようにして、時々転がりながら5mぐらいの距離を、トイレまでやっとたどり着いてオシッコを勢いよくした、そして終わったら力つきたように、バタンとトイレの中に倒れ込んだ。どんなに身体が弱った状態でも、オシッコは粗相をしない、トイレにしなければならない、と言う強い意志は大したもんだと思った。
私は抱えて炬燵の所へ連れ戻した。
もう最後だから私の膝の上に寝かせた方が、良いかなとも思ったが、炬燵の方が暖かいだろうと思い炬燵にした。
2時間位して、炬燵の中を覗くと、私の足の反対側に入っていたはずが、私の足元まで来て動かなくなっていた。その時はもう息をしていなかった。
二階にいた女房を呼ぶと、直ぐに降りてきて確認した。
私はもっと他にも何か出来ることはなかったのかと、無念さが残った。
令和七年十月三十日夜九時だった。
18歳9ヶ月のにゃん生だった。
宏に
「ロン君が、亡くなりました残念です」とメールを送ると
「残念じゃね、父さんと母さんに育ててもらって、幸せじゃったと思うよ」と返事をくれた。




