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無垢な私を、裏アカ御曹司が溺愛して離さない  作者: Avelin


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2/8

仮面の社長と、裏アカの素顔

お読みいただきありがとうございます。


第2話では、主人公の心に少しずつ

入り込んでいく裏アカの存在と、

その言葉に揺れる気持ちを描きました。


そして──街頭ビジョンに映る社長の言葉。


彼の正体に、思わず読者の方も「え?」と重ねてしまう場面だと思います。


今回も共感と不安を織り交ぜながら進みます。


どうぞ最後までお楽しみください。


通勤電車の窓に映る、自分の顔。


誰よりもキラキラ感がなくて、

疲れきった“人生つんだ女”がそこにいた。



その視線の先。


吊り広告には、婚活企業「キューピッド・リンク」の最新CM。


大型モニターに映るのは、スーツ姿の若き社長。


完璧な笑顔。

眩しいライトを浴びて、世界の中心にいるように微笑んでいる。


(……テレビでもネットでも見たことある、有名人だよね)



私なんかとは、まるで別の世界。



胸の奥にチクリと痛みが走る。

だって、つい数日前─

「……なんか、写真と違うね」


婚活アプリで初めて会った男性に、

そう吐き捨てられたばかりだったから。


その記憶がよみがえるほど、

目の前の“完璧な社長”は私とは真逆で。


「婚活企業の社長……ね。

こっちは恋愛も婚活も失敗だらけの女だよ。……笑っちゃうね」


小さく吐いたため息は、

電車の騒音にかき消されていった。




会社帰りの夜。


改札を抜けると、コンビニの明かりがやけに眩しく感じた。


ついフラッと寄ってしまう。


新作スイーツのポスター。

「期間限定」って言葉に、なぜか弱いんだよね。



新作スイーツをひとつ手に取って、

配布されていたアプリの無料クーポンでコーヒーに交換。


(たぶん、自分も同じだ……って思ってる人、いると思う)


心の中でそうつぶやきながら、レジを抜けた。



コーヒーを手に歩き出す。

足取りは、昨日とも一昨日とも変わらない。


……ただ、同じ道をなぞっているだけ。


信号も、街のざわめきも、

心に何ひとつ響かない。



自宅に着くと、靴を脱ぎ散らかすように放り出す。


バッグからコンビニのスイーツを取り出し、

歩きながらなんとなくコーヒーをテーブルに置く。


「……今日も変わらない一日だったな」


呟きはため息に溶けた。


退屈なルーティン。


ただ過ぎていくだけの日々。


スマホを取り出し、テーブルに置く。


ふと、画面に光った通知に気づいた。



──裏アカからのDM。

指が止まる。



「素焼きの器、素敵でした。

ああいう飾らない美しさに惹かれます」


息が詰まった。


胸の奥が、じんわりと温かくなる。



「……ありがとうございます」



気づけば、短く返信してしまっていた。


(……なにやってるの、私)



警戒はしている。

怪しいのはわかってる。



それでも。


“私自身”を見てくれる言葉が、

久しく忘れていた心の居場所みたいに感じられた。




画面に新しいDMが届いていた。


──「婚活って、数字や条件で測るものじゃないと思いませんか」


目を細めて、しばらく読み返す。


「……何、それ」


思わず口から漏れた。



条件じゃなくて?

年収や学歴や見た目じゃなくて?

……じゃあ、何で人を測るの。



胸の奥に、あの日の言葉が刺さる。


──「思ってた人と全然違うわ」


平気な顔で切り捨てられた、あの冷たい声。



恋愛も婚活も、結局は外見ばかりを見て、

中身なんて誰も気にしない。


……そういう世界なんだって、思い知らされたばかりだった。


私はスマホを握りしめ、

打ち込む。



「でも……条件がすべてですよね。

私みたいなのは、弾かれるだけで」



指先が震えていた。

本当は言いたくなかった言葉。

でも、それが現実だから。


数秒後、返信が返ってきた。



──「だからこそ、君に興味がある」


「……え?」


目を疑った。



飾らない私に?


偽装も加工もしていない、この何の取り柄もない私に?


(この人……いったい何者なの……?)


心臓が早鐘を打つ。


怖さと戸惑いの中に、

ほんのわずかな温かさが混じっていた。


その夜は、不思議と眠れなかった。

画面を閉じても、胸のざわめきは消えないまま。




翌日。


いつもと変わらない朝。

人混みに押されながら駅へ向かう。


今日も、昨日と同じ一日の始まり……のはずだった。


ふと目に入った街中の大型ビジョン。


そこに映し出されたのは、

電車の中で見たのと同じ婚活企業「キューピッド・リンク」のCMだった。



若き社長が、爽やかな笑みを浮かべて語る。



──「美しいものって、無垢なもの。

飾られていないものじゃないかな」



息が止まった。


だってそれは──

あの日、私が裏アカで呟いた言葉と同じだったから。


高校生のころ、社会見学で作った歪んだ陶器。


拙くて、不格好で。


だけど、それを見て思わず口にした言葉を、

あの“怪しい人”が拾ってくれた。



「……なんで……?」


胸がざわつく。


偶然?


それとも──


スマホを開くと、通知が光っていた。


裏アカからの新しいDM。


「君の言葉に救われる人間もいるんだよ」


指先が震える。

怖い、でも温かい。

拒絶と安堵が同時に胸に押し寄せて、息が乱れる。


画面の中の社長は、相変わらず完璧な笑みを浮かべていた。


だけど──彼がもし本当に裏アカの“あの人”だとしたら。


その笑みの裏側は、どれだけ虚しいんだろう。



──そして気づく。

彼もまた「誰かに気づかれたい」と願っているのではないか、と。



DMの最後の一文が、視界に焼き付いた。



「……君は、選ばれなかったからこそ、美しい」


心臓が跳ねた。



共感とも、執着ともつかないその言葉に、

私は逃げ場を失った。


そして、通知がもう一度……


──「もしよければ、メールでやり取りしませんか」


画面に浮かぶ文字を見て、息が止まった。


(……メール?

名前も知らない、顔もわからない、怪しい裏アカの人と?)



怖い。

けれど、胸の奥で小さな灯が揺れる。


だって──


以前、私が呟いた言葉を、

今日、街頭ビジョンで“あの人”が口にしていたから。


本当に同じ人だとしたら……?


「……まさか、あの完璧に笑う社長が?」


震える指でスマホを閉じた。

でも、脳裏にはあの笑顔とDMの文字が重なり続ける。



知りたい。

本当のことが。


──もし彼が、あの人だとしたら。


心臓が痛いほどに跳ねた。



そして気づいてしまった。

私はもう、逃げられなくなっていることに──




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


裏アカの言葉に救われながらも、

「怪しい」「怖い」と感じてしまう主人公。


けれど同時に、「本当のことを知りたい」という好奇心も芽生え始めました。


そして彼から届いたのは「メールでのやり取り」という提案。


この先、二人の距離はどう変わっていくのでしょうか。


──本当に彼が、あの“仮面の社長”だとしたら。



次回もぜひ楽しみにしていてください。

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