第115話 石狩鍋と流氷対策
昼食後は艦内を一巡したあと、ジムへ行って軽く汗を流した後に風呂に入ってから夕食を食べに食堂へ入ると、既に全員が揃ってた。
「あ、ユーさん来た。今日はみんなで石狩鍋食べるんだよー。」
「石狩鍋? それって鮭が入った鍋だっけ?」
「そうそう、味噌仕立ての鮭鍋だってさー。皆でこの前の北海道の話してたら、鮭の話題が出て、そこから石狩鍋の話になったのー。で、食べてみたいねーって。」
「そうだよね、オレも1回食べたことあるか無いかって位だし。確かに食べてみたいね。いいね、楽しみだよ。」
「はい、お待たせしました、石狩鍋と、せっかくだから鮭のチャンチャン焼きも作ってみましたよ。そして、ご飯は鮭のおにぎり。今夜は鮭祭りですわね。」
ジュンさんと配膳ロボが大きな鍋を持って入ってきた。
うわ、味噌のいい香りがするな。バターの香りはちゃんちゃん焼きかな?
やっぱり3人増えてるからか、食堂内は昨日のスパニッシュパーティーの再現みたいに盛り上がってるぞ。
石狩鍋は鮭の旨味と味噌のコク、そこに野菜の甘味が加わった独特なハーモニーで、身体の芯から温まるね。寒い地域の鍋料理って美味いんだよね。
鮭祭りを堪能したあと、艦橋へ上がった。
「ムサシ、現在地と状況は?」
『現在ベーリング海を75ノットで航行中です。想定では、明日朝頃には流氷のある海域に達します。』
そうか、北極圏、流氷があるんだったな。
もちろんムサシだけでも全く問題なく航行できるはずだけど、せめて監視はした方が良いんじゃないかな。そうだ、ジュンさんにも相談してみよう。
食堂へ戻ると、女子チームは全員居なくなっていて、ジュンさんが一人で何かを飲んでいた。
「ジュンさん、それは何を飲んでるんですか?」
「これはシナモンミルクティー、シナモンを紅茶と煮込んで牛乳を加えてあるんですよ、ユーも飲んでみますか?」
「煮込んだ紅茶ですか? 飲んでみたいです、お願いします。」
ジュンさんがティーカップに注いでくれた。
早速頂いてみましょうか。
「うわ、紅茶のコクが凄いな、それにシナモンの甘い風味が全然負けてない、へぇ、面白い紅茶の飲み方ですね。美味しいですよ、これ。」
「ふふふ。美味しいですわよね。わたくし、このコクのある紅茶が好きなんですよ。ところでユー、どうしたんですか?」
「あ、そうだった。今艦橋でムサシから聞いたんですけど、明日の朝くらいには流氷の海域に達するそうなんですよ。操艦はムサシに任せっきりでも大丈夫だとは思うんですけど、念の為監視はしたほうが良いんじゃないかって思って、それをジュンさんに相談したかったんです。」
「流氷海域ですか。そうですね、監視はしておいた方が良いでしょうね。あ、そうだ、これ飲み終わったら一緒に工房へ参りませんか? シオリちゃんとも話をしておきたいですわ。」
「シオリと話ですか? もちろん良いですけど、なんですか?」
「そもそも流氷だけじゃなく、海域が凍結してたら今の武蔵で通過できるのか聞いておきたくて。」
「そうですよね。全面凍結してたら砕氷船みたいなのしか航行できないですよね。はい、話を聞きに行きましょう。」
ジュンさんと2人で、お土産代わりのシナモンミルクティーを持って工房へ入る。
「シオリちゃん、ちょっといいかしら。あ、これ差し入れね。」
「ありがとうございますジュンさん。はい、なんでしょう?」
「今ユーと話をしていたんですけれども、明日の朝頃には流氷海域に到達するそうなんです。流氷海域ということは、全面凍結している場所がある可能性もありますよね。その場合、武蔵が航行することが出来るのか、何か対策が必要なのか聞いておきたかったんです。」
「北極圏航行ですね、その対応は済ませておきました。2点ありまして、1点目は艦底電磁バリアの出力アップです。万一進行方向の流氷が避けきれない場合、艦底電磁バリアを艦前方に槍のように鋭角に展開することで氷を割って進みます。ただ、完全氷結してるエリアでは流石に対応しきれないので、そこで2点目の指向性ショックウェーブの改良です。これは指向性ショックウェーブの出力アップと、照射範囲をピンポイントで一点集中させられるようにしたんです。これで武蔵前方の氷結を砕きながら、艦底電磁バリアの槍で割って進むんです。」
「あら、もう対策済でしたか。流石シオリちゃんですわね。」
「はい、ただし、計算上、設計上は問題ないのですが、実際に試したことはないので、始めて使う際には私が操艦しようと思ってます。」
「そっか、了解。ってことは、やっぱり流氷海域に入ったら、監視しておいた方が良いってことですね。」
「そうですわね、でも、実際のところ、夜間は視界が効かないから艦橋から目視で監視というよりは、ムサシが監視して、大きな流氷が見つかる度にクルーが都度確認する、っていうことにした方が良いかもしれませんね。氷結海域があった時には、そこからは監視が必要だと思いますけどね。」
「そうしましょうか。それじゃ、このことを明日の朝、朝食の時にでもミズキとレイナに伝えますよ。」




