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こちとら命懸けてねぇんだわ。  作者: もち。
西の国とのつきあい方
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さて、ジャンクフードも堪能したし、龍の眼もある程度使い勝手が解ったし、スキル関係もそこそこ理解度を深めた所で三日目の朝。

魔力も随分と増えた。三割って凄いね。分母がでかいと増え幅もでかい。これなら急に魔力が吸われても耐えられる、はず。多分。

まさかこちらの全体量の何割持っていく、とかえぐい仕様でない限りは……。

そういうこと平気でしそうなのが嫌なんだよなぁ。と、溜息を吐き出しつつも、そろそろ出るかと朝食を取りつつ話し合っている所である。

モバイルバッテリーも大体満タンにできたし、なんならスマホも充電完了した。出張イエクサ、お前のその鬱陶しいまでの光がこんなにも役に立つなんて思わなかったよ。褒めて遣わす。

ちなみにフラッフィな。あいつ30分くらい持続したわ。待ち時間に飽き飽きしたわバカッタレ。

しかし魔力操作で途中で効果を消せることも判明した。そのへんは結界と同じであるようで、任意で効果消せるならまぁ……なんだ。いざと言う時は使えるだろう。

「カレー食いたい……」

「レトルトねぇのかよ」

「ない……」

「地獄かよ……」

何と言うこともないが、両親の声を聞いたからかカレーとかシチューとか、豚汁とか、母お手製の汁物が無性に恋しい。

欲求を誤魔化そうにもレトルトカレーすらないこの状況に悲しみしかない。カレーヌードルは食った。だがお前じゃない。

「俺も餃子食いてぇ」

「ないよ」

「知ってる」

そもそも餃子は冷凍だもんね。無理だもんね。

ショッピングがここで使えたならどちらの欲求もある程度満たせたのだが、そうもいかなかったので食べたい気持ちだけメッセージにして送っておいた。帰ったらきっと食べさせてくれるに違いない。あとお好み焼きも食べたい。真ん中に卵落として焼いたやつな。

朝食を終えればテキパキと片付けを初めて、忘れ物がないかをチェックして、よしとひとつ頷く。

今日の服装は一応森装備で。隠密活動をするとなればやはり気合を入れる意味合いで、装備も整えておきたいのだ。

気持ちが緩むとポカをやらかす自信がある。


「しっかし……結局いろんなとこ見てみたけど、あの鱗の産地は不明のままだったなー」

「やっぱ城下なのかな?第二騎士団の方に多くひっついてたってことは、外より街中のほうが怪しいよねぇ」

準備運動よろしく、屈伸したりして身体をほぐしながらぼやく。

いや、ほぐしたところで別に何かしらの危険と対面する予定はないのだが、気分的に。

「……城下二人で行動させてくれっかなぁ?」

「いやぁ……どうかなぁ」

こそこそ嗅ぎまわりたいので是非とも許可を頂きたいが、また超嫌!みたいな顔されるだろうし、なんならそれは流石に城の外なれば許してくれない可能性が高い。実に過保護な人達である。

「フォルテさんから攻めてみるか?殿下よりは聞いてくれそう」

「いやぁ……?フォルテさんもなんか御使い扱いになってから妙に過保護ぞ」

「御使いだりぃな……」

「だりぃね……」

はー、と。溜息を揃って吐き出したならスメルレスを発動させる。

それから目を合わせて一つ頷き、ステルスとシャドウウォークで隠密仕様になったならば、序盤は人も何も居ないので構わないのだが、気持ちの切り替えと言う事で沈黙してしまう。


一歩踏み出せば、ここからは騎士寮に戻るまでは隠密活動だ。視認される事なく戻る気持ちを強く持つ。

予定より一日早い帰還となるが、やりたい事は大体やった。あまり長々と要らぬ気を回して貰うのも申し訳ないと言う気持ちは拭いきれないので戻ろう。

森の中でマイナスイオンも吸収したしな!

――したか?したよな?

した事にしよう。

木々の合間を抜けながら、徐々に遠ざかるイエクサの明り。しかし上から注ぐ光は十分に真昼の太陽がごとき明るさで木々の葉を照らしていた。

風がないので木漏れ日が揺れると言う事はないが、溢れる明かりで十分に歩ける。

それにしても、先日吸い取られたあの魔力でどの程度の期間あいつあの明るさを維持するのだろう?年単位とかだと燃費良すぎて震えるんだが。


出口の扉が近づいてきたならマップを手動で城内地図に切り替える。外の様子を伺う為に、だ。

……?

切り替えた瞬間、ちょっとよくわからないなと思わず首を傾げたなら、私の様子を見た海もまたマップをいじって、それからくてりと首を傾げる。


――赤点が、ある。


何事か。

緑の点の正面を陣取り、お椀型に緑を囲む形で陣を取る赤点。

……またあの汚い鱗付きが出たのだろうか?

城内地図を細かく確認すれば、結構いろんな所に緑と赤が固まって分布している様子が見てとれた。

私達のお借りしている部屋の前にも、だ。

――誘拐犯が動きを見せているのか。

成る程、てめぇ良い度胸だ。

私はまるで貴様の事は許していないぞ。そちらから動いたのであれば今度こそそのまだ見ぬ面を張っ倒すからな、覚悟しておけよ。

ふつふつと湧き上がるのは憤り。うちの子に手を出したことをまだ後悔させてやれていないのだ。

あと、あの時の右目の痛み。本当に本当に痛かった。許さん。

扉の直前まで進んだならば、そっと目を閉じて右目に魔力を動かす。

そうすれば瞼の裏側に浮かぶ龍脈がやはり枝葉のように伸びていて、そこから蛍のような加護がふわふわと舞い上がっている。

扉の前で何が起きているのか、それは解らないが……とりあえずそこまで準備したなら海が一度頷いてそうっと扉を開く。

薄い隙間を開けたなら、外の音が入ってきた。それまで一切の音すら通していないと言う事は、滅茶苦茶に防音性に優れた扉だな、と。思わず場違いな感想を抱く。


「ですから、ここは現在お通しできません。それが例え神殿の方であったとしても」

耳慣れた、コルドさんの声が鼓膜に届く。

今回の赤点は神殿の関係者なのか、とふむふむと頷く。

外を覗き込んだ海が、こちらを振り返りやってよし、とジェスチャーしてきたので龍脈に力を流せばぶわりと足元からキラキラと星が産まれる。

この立ち昇る星は本当に神秘的だ。

ごく狭い範囲、今この扉の前にいる赤点のみを飲み込む程度の範囲で力を留めればそれ程の負担にはならない。

この辺の調節もちょっとばかりは勉強したのだ。誰か褒めてくれ。

そうして、扉の外で御使い様だ……とかざわっとした声が漏れ聞こえるのを差し置いてさらに扉を開けた海が、此方に背を向けているコルドさんの腕を掴んでぐいと引く。

びく、と。一瞬その逞しい背中が跳ね上がり、けれども軽く首だけで振り返ってぱちぱちと瞬きをしてから引かれるままに扉の内側に入ってきた。

そして、パタンと扉を閉めたならまた、静寂が支配する森の中。

外のざわめきは聞こえない。

マップ表示が緑に変わったならば、魔力の供給をそこで止める。ゆるやかに収束する光に、ほっと一息。

「コルドさん、これ何事?」

海が引き込んだコルドさんに質問を投げ掛けると、困ったように眉を下げて見せる。

「いえ、解りかねます。ただ、神殿騎士を連れた大司教様が突然訪問なさり、祭壇へ通せと仰いまして……」

「あ、そんなお偉いさんが来てたのか。へぇ……」

「……逆に大司教さまですらあの鱗には取り憑かれちゃうのな」

それは由々しいな、と。声を発したならばコルドさんが私を視認したのか、目が合って、それから頷いてくれる。

「て事は、こないだの誘拐って神殿から俺等の行動が漏れてた恐れアリ?」

「かもねぇ。あっちに鱗付きがいるなら不思議はないよね」

「可能性はあるでしょう。まさか神殿の関係者に犯人がいるとも思いたくはありませんが」

ふむ……と、腕を組んで考える。

神殿の関係者に犯人がいるなら、神殿訪問と一緒くたに済ませられるのでそれはそれで構わないだろう。

が、ただの鱗付きなだけの可能性も多分にある。

「……やっぱ城下を一度歩き回って調べた方がいいかねぇ」

「それが手っ取り早いよな。第二騎士団といい、神殿の人と言い、多分街で鱗拾ってんじゃねぇのかね」

黒い靄がある場所目指して、となれば眼帯は付けられない。やはり二人で隠密行動の許可が欲しいな、と思う。

「ところでコルドさん。城内至る所に敵がいるみたいなんだよね」

「それは誠ですか?であれば、騒ぎが収まるまでお二人はここに……」

「じゃなくて。あの鱗のせいなら私達が行動しなくちゃどうにもならないから、コルドさんが扉出る時に合わせて出ていくから中にまだいるフリでもしてて欲しいのよ」

そう告げたなら、殊更に渋面になって眉が寄せられる。

「危険です。承認致しかねます」

「見えないなら危険はねぇだろ。それに、ちょっと祭壇で俺等も力蓄えたから、そんな心配いらねぇって」

「そうそう。三日前より色々バージョンアップしたからそう嫌そうにせず見送ってよ」

思わず苦笑を浮かべて、揃って宥めるようにそう言った。

「俺等も一端の大人だから?手前のケツくらいは拭かねえと」

「迷惑ばっか掛けてらんないからね」

「迷惑だなどと……っ」

反論するように言い募ろうとするコルドさんの肩をぽんぽんと海が軽くたたく。

「わかってるわかってる。ほんと、ありがてえ話だよ。至れり尽くせりでさ。でも、俺等は気にする」

「この騒動も私達が居る事で起きてるんだから、ちゃんと責任取らせてよ。大丈夫、私達そんなか弱い生き物じゃないから」

か弱い生き物であった場合、森で既に屍になっている事だろう。森の養分に成り果てているに違いない。

生き汚くて、諦めの悪い程よいオタクとやらの底力舐めんなよ。

「頼むよ。って言うか今これ頼めるのコルドさんしかいねぇんだけどな」

笑いながら海がそう告げたなら、困ったようにへなりとその意志の強そうな眉が下がる。

「俺等のこと、ちっとでいいんで信じてくんねえ?で、コルドさんにはここの人等のお話ちゃんと聞いてやって欲しいワケよ」

「夢心地で活動していたとしても、もしかしたら何かしらの手掛かりはあるかもだし。どれくらいの間この状態だったのか、とか」

期間を逆算したり、意識が朦朧としたであろう場所などが解ると尚助かる。それに共通点はあるのか否かなども是非聞き取りをお願いしたい。

「それに、隠密で動くなら二人で動く方が絶対に安全だろ?護衛さんがいちゃ目印になっちまう」

「それは……」

「ちゃんと危ないと感じたら、身動き封じるのは躊躇わないから」

私もまた、笑ってそう告げる。エリアスタンの即効性は既に見て知っているだろう、と。その意を込めて。

まだここにいると思わせておけば多少の誤魔化しにはなるだろうし、その上で事情聴取までお任せしたいと言うのだから結構面倒なお仕事を頼んでいることになる。

大変ではあると思うが、是非こなして頂きたい。コルドさんならきっと恙無くこなしてくれることだろう。いやマジすまん。色々押し付けてすまん。

申し訳ないやら速やかに行動しないとまた怪我人でるかもしれないなと思うやらで色々な気持ちを内包しながらお願い、と掌を合わせてへらり笑いながら懇願すれば、ぐっと眉間に皺を寄せて超嫌そうな顔をして見せたなら、はぁ、と大きな溜息ひとつ。

「……本当に、絶対に、身の安全を最優先にしてくださいよ」

と、折れる言葉を吐きだした。それに揃って喜色を浮かべて頷いたなら、

「大丈夫大丈夫。俺等常に身の安全しか考えてねぇから」

「ありがとコルドさん超頼りになる最高ー」

「全く。良いです、解りましたよ、ご随意に。お二人の意思を尊重しますよ」

時間経過と共に状況は悪化するでしょうし。と半ばやけくそ気味にガシガシと後頭部を掻きながら言う姿は世話焼きの気のいいにーちゃんのそれである。口に出す言葉もなんだかああもうしゃーねぇな!と言わんばかりの声音で実によろしい。


そうと決まれば早速行動開始だ。

きゅっとお口をチャックして、また海が扉を開く。

開いた扉からコルドさんが踏み出したのに続いてこそこそ出てからパタンと閉めたらカチリと何か、鍵がかかったような物理的な音がした。

「大隊長!御遣い様は……」

「騒ぐな。危険があるので中で待機頂けるよう話は纏まった。それで、大司教様方の様子は」

赤から緑に変わった面々を一応捕縛していたのか、前に司教様とお越しになっていたレガートさんと同じような制服の方々と、妙にお高そうなローブだか何だか解らない法衣っぽいおじいちゃんがおひとり、騎士達に囲まれてちゃんと座っていた。

正座ではない。

――普通に胡坐でいいのか。そうか。

尻冷えない?大丈夫?特におじいちゃん。腰悪くしないでね?

「前と同じです。光が満ちたならば、正気に返られたご様子で……」

「そうか。で、あれば。少々話を聞かせて貰う必要があるだろうな」

しかしコルドさん、部下さんにはこんな感じの口調なのか。へぇ……丁寧語とっぱらうと急激に冷たい印象になるな。こわぁ。怒らせんとこ。


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