読書家クエスト
ステータス・オープン!
と叫ぶと、目の前の空中にパッと半透明のウィンドウが表示される。そこには自分の能力のいろいろな面を数値化したものが書いてある。
…というような場面を近ごろの小説や漫画などでちょくちょく見かける。この手の表現の大もとはやはりコンピューターゲームであろう。たとえばドラゴンクエストシリーズなどではキャラクターごとに「ちから」とか「かしこさ」とか「うんのよさ」とか「かっこよさ」といった数値が設定されていて、その人物のゲーム上の性能を表したり性格づけをしたりしており、それはゲームを遊んでいるあいだ好きなときに閲覧することができる。たとえばドラクエ6のハッサンなどは、「ちから」が高くて「かしこさ」が低いので、なるほどこいつは見た目どおりのキャラなんだな、とわかるわけだ。
いろいろな能力を設けてそれぞれを数字であらわすこのような仕組みには、ある重要な考え方が表れていると私は思う。それは、人はいろいろな面があって、決して一つの軸で評価することはできないということだ。この世の中、学校ではテストでどれぐらい点がとれるか、社会に出れば金がどれぐらい稼げるかで人の価値を測ろうとする癖があるが、それ以外の能力や性質にだって価値があるのだ。
まあそれはそれとして、あるとき本屋の中をぶらぶら歩きながら、ふと読書家にもいろいろな能力というか、性格というか、評価の軸が考えられると思った。どれ、試しに自分のを見てみることにしよう。ステータス・オープン!
なまえ :ちが とうべえ
しょくぎょう:ほんのむし
レベル :20
はやさ :24
りかいりょく:62
しゃこうせい:37
きゅうかく :90
ばんゆう :81
以下、各項目の説明。
「職業」と「レベル」は特に意味はない。ドラクエっぽくするためだけに設けた項目である。ちなみに本の虫以外の職業としては、司書、書店員、編集者、図書委員、読書家、本好き、活字中毒者といったものが考えられる。まったく本を読まない人は無職と表示されるであろう。
「速さ」はそのまま、本を読む速さである。速読術を修めた人などは大変高い数値になるはずである。
「読解力」は本の内容を理解する能力である。書いてもいないことを読み取ってしまう人などがたまにいるが、そういう人は低い数値が出るだろう。
「社交性」は本を介して人とつながる傾向を数値化したものである。読んだ本を人に紹介したりされたり、読書会に参加したりといったことをよくする人は高く評価されると思われる。
「嗅覚」は勘といってもよいだろう。面白い本を見つけ出す、選び取る能力である。本屋や図書館に並ぶたくさんの本のなかから、題名や装幀、せいぜい本の帯やカバーなどに印刷してある紹介文程度のものを参考に、本を選ぶのである。
「蛮勇」は本を読むのにあたって人の目を気にしない性質である。この数値の高い者は、たとえば「我が闘争」みたいな、読んでいると世間の人から変な目で見られそうな本でも人前で平気で読むことができる。あるいはまた、私のようないい年をしたオッサンが少女漫画売場に踏み込んだりするのにもこの能力が必要となろう。
ところで、ステータス画面があるなら、アイテムインベントリもあってもいいと思うのだ。これまた近ごろの小説や漫画によく出てくる、亜空間に品物をたくさん収納できるという超能力である。これがあれば本の置き場に悩まずにすむ。ぜひ実装してほしいものである。
第十一部「読書家クエスト」は以上で終わります。




