手料理行進曲
私達は頃合いをみて
話し合いを終わらせた。
そして…戦場へ
といってもキッチンだけど
私達は今日の夕食を作るため
最初はそれぞれが
自慢の手料理を作ろうみたいな話だったけど
それだと…量だけが多くなってしまう。
だから…ここは女同士
協力しあってという事になった
咲良曰く
「誰の評価も落とさない良い作戦だ」
という事らしい
咲良は料理は苦手なのだろうか?
役割分担を決めて
それぞれの仕事に取りかかる
私は主に調理担当
麗香は調理補助と全体把握
咲良は前菜とデザート
つまり今回は麗香主動で
私達が手伝うカタチ
何故こうなったかは
公平なじゃんけんなので
何らかの意図的ではない
文句や不満も口にするほどでもなかった。
次回からは順番に回るんだから
焦る必要もない
貸別荘だから
ルームサービス的なモノはあるけど
私達はそれには頼らない事にしていた
金銭的な面というのも
勿論あるけど
自炊すれば手料理が食べてもらえるのだ
そのメリットは十分に
活かすべきだと話は決まっていた
男性陣も自分達が自炊する事なく
私達の手料理が食べれるならと
安易に納得していた
だからか…私達の
今回に賭ける意気込みは
並みではない
…私だって
今時…女が料理なんて
前時代的って思うかもしれない
だけど…気の置けない仲間同士での旅行
容姿も性格もお互いに知っている
つまり…単純な色仕掛けでは相手を落とせない
ライバルに差をつけられない
そこで私達は悩み
1つの結論に至った
新たな魅力に気付いてもらうという事に
嘘か本当か
私には咲良というライバルもいる
それで前時代的ながらも
料理の上手い良妻?を
アピールしようということになる
とりあえず…私が言いたいのはただ1つ
恋愛に人生を注ぐ
女の狂気は時に恐ろしいという事
役割を分担した私達は
お互いにフォローしながら
仕事を終わらせていく
最初はどうなることかとも思ったが
この役割分担は
いい感じで機能している
この結束力なら
人喰い鬼とかも裸足で
逃げ出すんじゃないだろうか?
或いは私達が人喰い鬼なら
敵はないかもしれない
思いの外スムーズに進む作業に
勿論冗談だけど
不謹慎にもそんな事を考えてしまう。
「…あの…」
調理も中盤になり
料理らしい匂いがする頃
申し訳なさそうな頼りない声がする
「何?今忙しいんだけど
見て分かんない?」
そんな信司に苛立ったのか
麗香の噛み付く勢いに負けて怯むの信司
「で…どうしたの?」
比較的暇そうだった咲良が
信司に訊く
私はちょっと調理で外せなかったので
遠くからその様子を聞いていた
信司は麗香に気を使いながら
恐る恐る言った。
「…あの…部屋を…
調べさせて…ほしいんだけど…」
その言葉に三人に衝撃が走る
何故?という疑問もあるけど
「ダメに決まってるでしょ!!」
と麗香が怒った
確かに理由もないなら
遠慮して頂きたい話だった
信司君は先程から
室内をうろうろしていた
信司君とって
切り出し難い内容だったには違いないが
それにしては
色々な場所でがさがさしていたような?
麗香はそれも鬱陶しく
感じてたみたいだけど
調理作業に集中して
ある意味無視していた
私は何をやっているのか
気にはなるが
手が離せない状況だった
「色々調べてたみたいだけど?」
その言葉に頷いた
「念のために…
安全かどうか…
調べて…回ってるんだ…」
信司君の言葉に
「まさか…それって」
麗香もそれに気付く
多分悪戯の事でだろうな
「うん…外を佐々木君
中は僕が…調べる事になって」
正統性と自衛の為
麗香の不満の矛を納めさせるつもりか
信司君は和也の名前を出した
「え?和也が?」
麗香は驚いた
人喰い鬼に対する
皆の認識は悪戯だった
というより
大事だと感じていなかった
けれど和也と信司君は
嘘か本当かは別にして
安全で異常はないか調べている
その事を知らない私達は
驚くような
呆れるような
感心するような
私はある部分で納得していた
「調べるって何をよ?
持ち物検査とか言わないわよね?」
和也の名前が出たので
一応協力的になる麗香
ただ「そうだ」って言ったらという
不満の圧力はかけていた
「ちっ違うよ…
ただ…その…この別荘に…
不審な人とか…
不審なモノとかないか…
調べるだけだよ…」
あの悪戯が私達の誰かだと
いきなり疑われてるわけじゃないのか
「じゃあ…いいんじゃない?」
私がそういうと
「仕方ない」みたいな空気になった
ここで拒否して
変に疑われたり
旅行を台無しにしたくなかった
悪戯だと思っているそれが
下手に尾を引いてる気がした
「咲良
手が空いてるなら
一緒に見てあげて」
本当は私が名乗り出たかったが
手が離せない私は咲良に頼んだ
「分かった」
咲良が承諾した
麗香も忙しそうではあったが
麗香と一緒では
彼女の視線が厳しくて
信司君が集中して
しっかり調べられないような気がしたから
別に咲良を監視役にするつもりはなかった
ただ女子部屋となっている以上
許可を得ていても
男を1人でっていうのは
何となくイヤだった
私が一緒なら
普通に手伝うだろうけど
二人が部屋へ消えて
10分前後で戻ってきた
「で…何かあったの?」
麗香はやましい所がないからか
信司君の収穫はないと踏んで
強気に聞く
「不審な人も…
不審なモノも…なかったから…
大丈夫…だと思う」
麗香は当然という感じだったが
これで本当の意味で
あのドアに挟んであった紙は
悪戯になったと思う
一応心配だったから
安全だと言われてホッとする
「ところで森田君は?」
私は素朴な疑問を口にする
和也は外の見回りを
信司君は部屋を見て回ってる
私達は夕飯の用意を
今森田君だけ何をしているか分からない状態
「あ…あの…森田君は
体調が…悪いとかで…
今休んでるんじゃないかなぁ」
信司君の説明に
私達は「体調ねぇ」と思ってたと思う
お調子者とまでは言わないけど
あのハイテンションが
いきなり体調が悪くなるなんて
ちょっと想像できない
つまり信司君の説明に
嘘があったとしか思えないが
まぁ…これも
いつものことだから
変に追及するのは止めとこう
信司君はまだ調べる場所があるらしく
そっちへ行った
私達も仕上げや盛り付けなどに取りかかる
信司君の嘘は
私達には簡単に見抜かれていた
まぁ嘘というよりは方便だろうけど
だからといって
信司君が悪いわけじゃない
森田君が悪いわけでもない
「働かざる者食うべからず」
なんていう気はない
ただ…私達も人間だから
1人分の取り分に
誤差が出てしまうかもしれないけど
それは仕方ない事かもしれない
「で…何かあったの?」
信司君がいなくなった後
麗香は咲良に
もう一度同じ質問をしていた
信司君の言った事が
信用できなかったのだろうか
いや…多分違う
二人は気になる話を始めた
つまり…
信司君と咲良が
女性部屋を調べに行って
帰ってくるまでに10分弱ぐらい
その間に何かあったのかという質問
私自身が選んだ事もあって
気にしないようにはしていたが
こうして話題になってしまうと
やはり気になるから
人間って不思議
「…なにも!!!
な゛かった!!!!」
咲良はふざけて答え
麗香は信じていなくて
茶々を入れていた
私の視線に気が付いた咲良は
ニコっと微笑った
それは「安心して」だったのか
「見損なわないで」だったのだろうか




