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#12 オカマウェイ・ゴーマイウェイ

美しい南国の砂浜。そこに3人のオカマがいた。軽く地獄である。


「師匠!加勢するわ!」


人形のようなシーメール。手には鎌つきショットガン。


「おだまり!ヤボなこと言うんじゃないわよ。これはアタシの因縁。アタシの戦いなんだから……華麗に勝つところ見てなさい!」


化粧をした中性的なオカマ。空手着を着て鎖鎌をゆるりと構えている。


「そうよぉー。うるっさいし邪魔だからどっかいきなさい。真剣勝負なのよ」


対するはとんでもなくデブな黒衣の女装家。こちらは巨大な草刈り鎌を構えている。


「真鏡流・スコルピオ」


中性的な鎖鎌使いが険しく相手を睨みながら囁いた。


「武光流・デラックス」


大鎌使いが同じくつぶやく。


「尋常に」

「尋常に」


じり、と太陽が砂浜を熱く照らした。


「勝負!」


鎖鎌使いスコルピオはテクニカルに飛び回り時に鎖で打撃を、時に鎌を飛ばして斬撃を使う。

対して大鎌使いデラックスは少々のダメージをものともせず突進と大ぶりな一撃を狙う。

シーメールには手の出せない領域の読み合いが行われていた。


「やるじゃない?」

「あんたもねえ」


スコルピオが勝負に出た。

相手の鎌に鎖を絡ませようとするが、

逆にデラックスにより鎖を引きちぎられついにデラックスの一撃をもらってしまう。

スコルピオははらわたをぶちまけて倒れる。


「やるじゃない……しゃくだけど、「ローズ」は任せたわよ……!」

「あんたに言われないでもねえ」


デラックスはそこで背中を見せる。


「なぁによ、トドメも刺さないの?恥ずかしいじゃない。殺りなさいよ」

「っていうか、慈悲とか恥とかじゃなくって。

お弟子さんいるんでしょ?最後になんか言ったげたら?」

「まったく、しまらないったら……」


デラックスは下がって立ち去り始める。

そこにシーメールがショットガンを構えて立ちはだかった。


「どきなさいよ。拾った命でしょ、あんたそんなの無駄に捨てるもんじゃないわよ」

「……それでも、譲れないモノはあるわ」


あわやシーメールに鎌が振り下ろされようとした時、スコルピオが一喝した。


「おだまり!ナマ言ってんじゃないわよヒヨッコが!

最後くらいかっこつけさせなさいよ……まったく」

「ミス・スコルピオ!」

「いいから!」


シーメールは悔しそうにデラックスを睨みながら、師匠であるスコルピオの元に行く。


「いい?グリムリーパー。胸を張って、かっこつけて歩きなさい。

美学でも信念でも、何でも良いわ。

胸に一つバラがあるなら、それだけであなたは美しく咲けるの。

いいこと、忘れちゃだめよ……」


そういうとスコルピオは息絶えた。

グリムリーパーはスコルピオの手を掴んで、野太い地声で慟哭した。


「師匠ォ-!」


夕暮れは没し、夏の夜空にさそり座が輝き始めた。

デラックスはうんうん、とうなずくとマングローブ林を見て鋭く叫ぶ。


「ミッコ!撤収よ!」

「終わったわねデラックス。あの女みたいなのは?」


マングローブに住む妖怪、キムジナーである。

もちろん女装して、手には鎌を持っている。


「さそり座の弟子よ。いいからほっときなさい」

「あら、そーう?私としてはああいう女と区別つかないのは美学的に許せないんだけど」

「せっかく良いところなんだから察しなさいよ!ほら、車出して!」

「はいはい、まったく妖怪使いが荒いんだから……」


そうして、夏の夜空が見守る中で、復讐を誓うオカマがまた一人生み出された。



90年代に「魔術師ハルマン」により魔法と異種族の存在が公表され早30年。

おおくの戦争、科学と魔法のフュージョンの生み出す爆発的発展により、

いまや魔法はカルチャースクールで習うモノで、妖怪は外国人並みによく見かける存在となった。


混沌の時代において、娼婦達は魔術的自警団を組織した。

これはその中の一つ、シーメールたちによる自警団「ブルーローズ」の物語である。



「これから、どうすれば……いいえ、私の手でケリをつける」


日が沈み、夜になった浜辺の小屋でグリムリーパーは師匠の亡骸に再起を誓った。


「でも、壁はあまりに高い……」


しかし現実として力量差と組織力は厚い壁としてある。


<なぁに弱気になってんのよ。しっかりしなさい!>

「師匠!?」


一瞬、師匠の声が聞こえたような気がして、振り返った。

そこには、まったく特徴が捕らえられないのに、なぜか師匠の声と雰囲気でたたずむ男がいた。


「い・い・え、私は……はい、どーもぉー、ムジナの黒毛です。この度はご愁傷様です」


男が顔を手で覆う。

すると師匠の雰囲気は霧散し、どうにもとらえどころの無いパンチパーマの男だと解る。


「ええっ、くろっ……んん゛っ!黒毛さんといえばあの?」

「はい、ミス・スコルピオとは生前親しくさせてもらいました。

お節介かもしれないですけど、ミス・スコルピオはあなたを頼むとメールを……」


黒毛がまた顔を覆うと、やはり師匠のたたずまいだ。

顔も何も変っていないが、どう見ても師匠に見えてしまう。

これがムジナの妖力なのだろうか?


<いいこと、馬鹿弟子。つけられなかった稽古、最後までつけてあげるわよ。

だから、さっさと復讐するなり、忘れるなりしてケリつけなさい。いいわね?>


黒毛の懐から出した扇子が、まるで師匠の鎌のように見える。


<なにぼーっとしてんのよ!早くしなさい!>


その口調、雰囲気、たたずまい。まるで師匠がよみがえったかのようだ。

だが、熟練した技術と妖力による「化け」である。


「……はい!師匠!」


そうして、グリムリーパーの過酷な修行が始まった。



それから後のことはざっくりと省略させてもらおう。

修行して強くなって、グリムリーパーはデラックスのアジトに強襲し、そして追い詰めた。

場所は料亭、畳の大広間には死体と血と銃弾がばらまかれている。

サイボーグと妖怪によるオカマの武装集団が本気を出して暴れるとこうなるのだ。

実に恐ろしい、タイマンの状況である。


「あら驚いた。あんたやるじゃない?」

「当然よ。さそり座のオカマの弟子だもの」


デラックスは満身創痍、片腕がもがれ、腹には銃弾の穴が開いている。

しかし、デラックスは毅然と、誇り高く、苦痛を顔に見せず菩薩のように微笑んでいる。

死に際の笑みだ。


「そうねぇ。さそり座はかっこいいオカマだったわ。

まあ、あんたもかっこいい変態になりなさいよ?

血濡れであろうと、オカマであろうと、ダサいのは駄目」


そして、にっこりと微笑むと、グリムリーパーの頬にキスして、さあやれと胸を張った。


「じゃあ、元気でねえ」

「ええ、さようなら」


銃声。血の噴水が祝福のバラの花のように降り注ぐ。

そして、グリムリーパーは目に決意と誇りを持って歩んでいく。

このシーメールもまた、修羅道を踏破するのだろう。

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