021:当初はエアリオは「クールな役」の予定でした。本当ですよ?
「そろそろ金策をすべきだと思う!」
ここはフォレス村唯一の宿屋。
俺とアンジュが巣鴨の泉を命名した頃には既に夕方だったため、次の目的地を目指す前に一泊することにしたのだが、今回の宿泊費用も例に漏れずリーリアが全額支払った。
「私の手持ちで何とかなっていると思うのですけど?」
リーリアが財布を覗きながらあっけらかんと言う。
『タケルはリーリアのヒモ生活について前々から悩んでいたからね。魔王らしくリーリアを手込めにして、身体も財布も俺のものだー! くらい言う甲斐性があっても良いと思うのだけど』
「お前、そろそろその頭の輪っかから黒いオーラが吹き出したりしないだろうな?」
ちなみに俺の横ではエアリオが『てごめ?』とか言いながらポカーンとしていて、優しく微笑むリーリアに頭を撫でられていた。
『でも、私たちもリーリアさんにずっと甘えてばかりというのはどうかと思いますし、ちゃんと資金を得る方法を確立しておくのは良い事だと思いますわ』
だんだん優等生キャラが様になってきたメリーザの後押しもあって、明日はこの村で臨時のバイトを探してみるコトにした。
◇◇
ツギノヒー。
「お前さんたちに出来そうな、日雇いの仕事ねぇ……」
さすがにこの村にはギルドが無かったので、村唯一の酒場を訪ねてみた。
高齢者ばかりの村ではあるが、さすがに酒場のマスターは四十代くらいのダンディなおっちゃんだった。
「ウチは仕事の斡旋はしてねーからなぁ」
「そうですか……」
まあ、高齢者ばかりのこの村で仕事を探すよりは、もっと都会で探す方が確率も高いだろうしなぁ。
諦めてトボトボと店を出ようかと思ったその時、真っ昼間から酒瓶を抱えたひとりの酔っぱらいに話しかけられた。
「アンタら旅人だろ? もし腕に自信があったら、ちょいと一仕事してみねえか?」
「んー……」
腕に自信が……ということは、単なる労働ではなく特別なスキルが必要か問われているのかもしれない。
俺たちの場合、腕に自信どころか世界に宣戦布告しても戦えてしまうデンジャラスっぷりなメンツなので、エアリオとメリーザに至っては依頼内容を聞く前から目が輝いている。
「とりあえず詳細を聞かせてくれるか?」
「ほう、にーちゃん受けてくれるんだな。内容は……」
◇◇
その1時間後、俺たちはフォレス村から少し離れた場所にある荒れ地に居た。
「確かに野良仕事は高齢者にはツライもんなぁ」
俺の手にはクワが握られている。
「あの……これをどうすれば???」
貴族生まれのリーリアは鶴嘴が何の道具なのかが分からなくて、困惑している様子。
というわけで我々は今、酔っぱらいのおっさんことファーム経営者のレスタさんの牧場候補地に来ている。
『強敵は……?』
いません。
『私の見せ場は……?』
ありません。
『私はクワを握れないから、昼寝でもしておくにゃー』
ゆっくりしていってね!
『私、箸より重いモノは持ったことないんだよぅ~』
「おめーは最初から頭数に入れて無いからクローと一緒に寝てろ」
あんまり過ぎるメンツに、依頼者のレスタさんはとても不安そうだ。
「さて、これを原始的な農具だけで開拓するのはいくらなんでも無理過ぎるので~……」
『はいはいはーいっ! 私にお任せをっ!! 汚名返上してみせますっ!!!』
まだ俺が全部説明する前に、エアリオが挙手で立候補してきた。
前回は扉を開けろと指示したのに「扉を大剣でぶっ叩く」という斜め上過ぎる奇行に走ったエアリオだったが、今回は荒れ地を整地するだけなので、そういった心配は無さそうだ。
「よし、そんじゃお前に任せるわ」
『ははーっ!』
エアリオは両手でクワを強く握り締め、高く飛び上がった!
基本的にコイツのスキルって、高く跳躍するヤツばっかりだよなぁ。
それを見ながら、バカと煙は……という言葉が俺の頭を過ぎる。
『我が闇の力よ、この地に混沌と破滅を……!』
なんかめっちゃ物騒なコト言ってますけど!?
『ジェノサイド……バースト!!』
そう言いながら荒れ地の中央にクワを叩きつけると、黒い炎のような靄が爆風となって拡散し、周囲の雑草や雑木が一瞬にして真っ黒に炭化してしまった。
初対面で出会い頭にコレをやられてたらアウトだったなぁ……くわばらくわばら。
そんなコトを考えている俺のもとに、一仕事終えて満足そうな笑顔のエアリオがタタタッと走って戻ってきた。
『ふっふっふ、これでこの辺一帯は草木一本生えぬ死の大地に!』
「はい?」
『……本当に大地が瘴気に汚染されてますわね。これじゃ、牛を飼うどころか人間が近づくことも出来ませんわ』
メリーザが枯れ木に手をそっと触れると、そのままサラサラと砂になって崩れ落ちた。
この後、エアリオに全力でチョップして沈黙させた俺は、にゃんこと一緒に丸くなっていたアンジュを叩き起こし、ひたすら天使専用スキルで周辺の浄化に勤しんでもらったのだった。





