魔族とザクス
ザクスは魔族に連れていかれた。逃げ出せるかと思ったが転移で何処かわからない部屋に移動させられたので逃げ出す先も見出すことはできずにいた。
縛り付けられているわけではなかったので、自由に行動できたが行動できただけで閉じ込められた部屋の出口を見出すことができなかった。再び魔族が現れるまでなにもすることができない。
ザクスはこの少ししか光の入らない部屋で状況整理することをすることにした。足りない知恵でもわかることがあるかもしれないとザクスが考えた。
ザクスを処刑場から救い出した、いや連れ出したと表現したほうが正確だろう。そして、その魔族はザクスを場所が特定できない所に放置し、観察をしていた。そして時々話しかけていた。その場所について『箱庭』と呼び、そこからもザクスは連れ出された。これらの行動で魔族の感想は面白い、興味深い……などだった。あまり深い理由が見当たらない。……
ザクスの分析はそこまでだった。結局は現状も魔族の意図も理解できないままだった。やはり、何もできないことがザクスらしい。一つ二つ足りない。そこまで整理したところでここに連れてきた魔族が現れた。
「やぁ。ザクス君。十分に体を休めてくれたかな、君にはしてもらいたいことがあるのでね」
「僕に何をさせようと……」
「興味深い君の能力の分析とその実験にまずは付き合ってもらいたいな。では、行こうか」
魔族はザクスとの会話をするつもりもなく話を進める。そして、ザクスを伴いまた転移する。ザクスがとんだ先は食卓だった。そこで、魔族の食事の招待を受ける。
「ようこそわが館に。われはこの館の主のジャガーダメルだ。これからぬしにはわれの手伝いをしてもらおう。とりあえずは食事をとろう。食ってくれ。寝床は準備させてある。案内させる」
ザクスの答えを待つでもなく先ほど迎えに来た魔族の男ジャガーダメルは話を進めた。そして、この食堂に控える人物が少なくない数居ることも確認する。ザクスの待遇がその控える者達より上だということがおぼろげに理解できる。何しろ直接迎えに来ていた。従者が居るのに直接主が迎えに来るなど人の国ではありえない。しかしジャガーダメルの感覚では違うのだろう。ザクスはそう考えながら周りを盗み見ると控える者達の中には人族はいなかった。すべてが魔族か亜人であった。しかもジャガーダメルと同じ種族となる魔族は控える者の中にはいなかった。ザクスはかなり緊張しながら食事をとり、寝室に案内される。牢獄のような部屋ではなく、普通にベッドがあった。そんなに広くはないので、客室として準備されている部屋ではないことは理解できる。そして、ザクスの監視兼補佐兼お手伝いとして一人が準備されていた。
「よろしくお願いいたします。私はペーナルカです。魔族の女です。ザクスさんに付き添い、補佐や手伝い等をさせていただくことになります」
魔族の女性がザクスに自己紹介をする。ザクスは面倒ごとが始まったと感じ表情に少し出したが、すぐに自己紹介を返した。
「ザクスです。人族の男で、ジャガーダメルさんについて何かしなければいけなくなったみたいですが、何も聞いていませんのでどんな立場であるのかわかっていません」
「私もあまりお聞きしておりません。明日、ジャガ様にお話をお聞きすることになっております。その時に詳しくお聞きください。失礼します」
ペーナルカはザクスに最低限のことのみを伝えて部屋を出て行った。ザクスはすることもなく寝ることにした。
「なんか、遠いところに来たな。魔族だって。王都に来るような魔族だから、ここはアンブレド魔族国になるのかな。逃げ出すべきか止まるべきか。そして、帰るべきか新たな土地を探すべきか」
ザクスがローレム村を出て大体1年と5か月が経っていた。処刑になった時が、1年と2か月少し手前くらいの時期、そして、『箱庭』と呼ばれるところで大体3か月と数日。ザクスは魔族が迎えに来た時に整理を終えた内容以上のことは何も大きな情報は得られなかったので考えることをあきらめ、眠りに落ちて行った。




