ザクスとナット
ザクスはやはり手合わせの順位が最下位になってしまった。編入組に負け、新人組に負けた。
「か、勝てると思ったのに……」
「隊長、最後の一手で相手に攻撃パターンや剣技を授けてたら勝てる者も勝てないですよ。……」
とネリアさんが話しかけてきた。
「そなた…いや、隊長のおかげで我もかなり成長している。また、新たな戦い方をいただけたことだし、今回もいい勝負だった。本当なら自分の力だけで勝ちたかったところだが、その力がまだ我にはないという事なのだろう」
と対戦相手だったヴァーリエル王子が励ましているのか、対戦後の声をかけてきた。
「それでも僕は勝ちたかった……です」
編入組は前回同様に森に入るようになった。その教育も十分にした。そして新たな成長がみられるようになった。魔物に対する実技訓練と知識の向上。素材の採取や罠の設置と解除についての知識の吸収など。
「いつの間にこんな特殊な力を手に入れていたんだ?森で魔物に全く合わないなんてどうやっても普通じゃないよな」
同郷のナットが近くに腰かけ、話しかけてきた。
「まぁ、7歳位の時かな……」
「7歳って魔物事件があった時より前か?後か?」
「あと……かな。魔物が怖いから遭わないようにってしているうちに身についてた」
「それって今からでも身につくのか?」
「それは僕にはわからない。副長や兵長や先輩隊員に聞いてみたら?僕の力に近い力を得られるように訓練しているしどのくらいの成果になっていたのか」
「隊長なのに把握していないのか?それでやっていけるのか?」
「知ってるよ。状況報告をいつもしてきてくれるので。でも、伝え聞くところを教えるより実体験している人たちの話のほうが確かな情報を得られると思うけど」
「んっ。そ、それはそうだな。聞いてみることにする」
「僕ら上の、副長、兵長は2ヵ月でこの隊から巣立っても半数は問題はないと判断したから」
「そうなのか。2ヶ月か……俺は残されるほうになるのか巣立つほうになるのか……」
「自信なさそうだねぇ。村では自信に満ち溢れていたのに」
「それはこの隊に居たら自信なんて吹き飛ぶ。お前に何度、剣技や体技、新しい攻撃パターン等のスキルをもらったか……それって、俺に自力でお前に勝つ力がないという事と同義だからな。最近の手合わせは特にそれを実感している」
「それって、暗に僕に勝ったと自慢してる……」
「手合わせ上位にいるヒュースさんに個人的にいろいろと教えてもらってるんだが、あの人がお前をかなりすごく評価して尊敬しまくってて褒めちぎるからな。なんか余計に考えされられる」
「村で僕にしていたことを今しようとするとナットが逆に皆にされるかもしれないからね。ははは」
「あれは反省している。マガミ子爵の件で考えさせられるようにはなったからな。それに怪鳥ゲルーの件で完全にお前は村でも英雄だったしな。続けられる状態でもなかったし……それくらいの空気は読めたさ」
「マガミ子爵の件から減ったような気がしていたのは勘違いではなかったのですね」
「お前は偉くなったよな。流行り病の時もマガミ子爵を連れてきたのがお前だったとは……徴兵初日から差がついていたが、一年経つとエリート部署所属のうえ、部隊長とか、しかもその下に俺が所属するなんて想像してなかったよ。お前はどこまで行くんだろうな」
「僕はどこにも行きたくなかったよ。村で畑仕事して森で気分転換できれば良かったのに、それがもう無理だと言われた」
「えっ?村に帰れないのか?」
「徴兵による軍所属の2年の終了は僕には適用されなくなったって。エリート部署や隊長は軍人採用決定の立場なんだって。僕の住む場所は王都の軍宿舎もしくは各戦地か軍駐留地だと思う。ただ、今のままという条件付だけど」
「まだ上に行くつもりなのか?そのために画策しているのか?成り上がる方法があるのなら俺にも教えろ」
「僕自身は成り上がりたくない。村での農作業があってると思うし、成り上がらないようにいろいろ手を尽くした結果が今の状況だから……マガミ子爵に裏から操られている気がする。もう手遅れだからかなり諦めてる。国王にも顔を覚えられたし」
「国王にも会ったのか!?」
「2度ほど謁見した。しかも特殊な嫌がらせとして報酬の選択を迫られた」
「もしかして、その二回の報酬で今の地位か?」
「地位は一回、エリートコースのみ。隊長になったのは国王からではなく、総合指令長官からの辞令だった」
「報酬の選択ってどんなのだったんだ?」
「貴族になるとか、軍での昇進とか王都に家をくれるとか、名誉と土地と金と女のどれかとかも言われた。選択したのが軍務情報局と金……とんでもない金額だった」
「お前は選択次第では貴族になっていたかもしれないのか。でも平民を選択したと……」
「でも、次はそんな逃げ道ないかもしれない。たぶん、次は選択があまりないかも。平民ではいられない気がする。どんな手で来るか……」
「うらやましいな。俺なら上に行く選択をするけどな。貴族になって、偉くなって金も力も権力も手に入れたい」
「譲ろうか。……」
「無理だろうな。俺にもプライドあるし、国王と謁見するためのつてがない」
「僕が紹介すれば」
「お前さっきマガミ子爵が裏で動いていると言っていただろう。たぶん、お前が代わり準備しても無理だろう。それくらいならマガミ子爵じゃなくてもわかるし、その手は封じてるはずだ」
「そうか、分かった。おとなしく今の役割りだけをこなすようにするよ」
「もったいないけどな。まあ、お前はやりたいようにするだけだろうけどな」
「ありがと、初めてまともに会話できた気がするよ」
「そうだな、お前とまともに話したことなかったな。立場的には俺がお前に話すのも気を使ってするべきなんだろうけどいろいろ話せてよかったよ。俺次あるし。またな」
ザクスは初めてナットと会話らしい会話をした。ナットはヒュースとの個人的な付き合いの訓練をしに行った。一ヶ月も経つとザクスの上の順位だったヒュースが今は上位にいるという。あの剣技を主体に色々と成長した成果だった。
今は、新人は基礎訓練と基礎の座学を課している。基礎の座学は他の隊でもしていることなので外せないと考えたため他の隊に協力してもらい受けさせてもらっている。それにより、ザクスも時間が空いてきているためザクスの隊の人数が少なくなるが3隊で森の訓練をしている。少しずつの成長が編入組も実感でき、訓練が間違っていないことを指していた。
急に閲覧してくださる方が増えました。驚いています。つたない文章かもしれませんが今後ともよろしくお願いします。




