親睦と会話
ザクスは出かけた半数を待つ間に編入・新人組と自己紹介をしてこの隊の評価を聞いた。そして、体験した感想も聞いた。残留組は能力が低いから残ったことを聞いていたが、その残りでも、この隊のすごさを実感したらしい。また、筋肉質な隊員が少ないことも不思議に思っていたことがわかる。
理由は簡単でザコ隊の訓練は短距離走のような訓練ではなくマラソンのような訓練だからである。瞬発力より持久力が必要な訓練のため自然と体はしっかりできているのに傍から見ると筋肉質な部隊に見えないだけなのだった。
ザクスはそういった意見交換を交わしたところで、質問を受け付けるようにした。
「貴重な意見をありがとうございます。ここらで、質問を受け付け、談話をしたいなと思うのですが、何かありますか」
とザクスは問いかけた。すると、編入組の一人が質問してきた。
「はい。この隊のノルマは非常に多いと思ったのですが、残留組は少ないと言っていました。実際のところどれくらいの量をしているのですか?」
「今回はノルマの数字は多かった気がしますよ。でも、ノルマは最低ラインなので、僕はいつもノルマの4倍から5倍はしています。残留組も同じくらいじゃないでしょうか」
と言ったところでザクスに一人、気安く話しかけた。
「ザコ、そのノルマの4~5倍ってあれか?」
ザコとザクスに話しかけたことで、クレスタと副長がにらみを利かせ腰を上げようとしたところでザクスが手を挙げて行動を抑止して答える。
「ナット、そうです。あれです。マガミ子爵の嫌がらせの約束の実践ですよ。相変わらず、筋力はつかないのですけどね、持久力だけはつきました」
「そ、そうか……」
「隊長聞いていいですか?」
と新人のフレイア・テリーヌ・メディルセオが聞いてきた。
「マガミ子爵をご存知なんですか!?どういった経緯で知り合われたのでしょうか?憧れの方なんです」
「あ、憧れの方ですか……。マガミ子爵がまだ冒険者だったころに、僕の村に来て、流行り病の治療に力を尽くしてくれたんですよ。そして、彼らが、僕の村の訓練を見て、僕だけ目の敵のように扱いたんです。非常に大変でした」
「あれは、いつ俺らに飛び火するか怖かった。ザコ……ザクスが切れて気まずくなって村から旅立ったんだよな」
「そ、そうだったかな。ははは。僕だって我慢の限界はありますよ」
「えっ?切れたんですか?気まずくなって逃げたんですか?」
「切れたのは本当だけど、気まずくなって逃げたわけではないから。決めていた滞在期間が過ぎたから出発しただけだから。僕はマガミ子爵とその冒険者仲間は苦手ですが、彼らはかなり気安く僕に接してきますね」
「今でもつながりがあるのですか?」
「切れていたつながりが、王都に来たことで復活しました。嘆かわしい限りです」
「はぁ、ありがとうございました」
「何か他に聞きたいことはありますか」
すると、一人の人が聞いてきた。
「今のそなたの地位に至る経緯を聞きたい」
「王子……わかりました。長くならないようにお答えします。まず、特権兵は王国内で徴兵前に特別な戦果の報告がある人に与えられる資格です。それで、僕の戦果として国に報告が上がっている内容が、災厄魔獣ガルフレイムの疫病の予防薬と特効薬の生成方法を世に広めるきっかけを作ったこと、『森の魔女』の住む場所を発見し案内したこと、怪鳥ゲルーに攫われた人々を救出したことの3点です」
「ザ、ザクス。疫病の予防薬と特効薬の生成方法を世に広めるきっかけを作ったって、それはマガミ子爵が俺らに配って回った薬だろ。なんでお前の戦果になっているんだ?」
「ナットが居るからその辺も説明しないといけないのか……」
「どういうことだ?」
「簡単に説明すると、11歳の時にナットと僕の住んでいた村に魔物が入って村をめちゃくちゃにしました。その魔物が災厄魔獣ガルフレイムです。この魔物は強さも非常に強いのですが、体内で生成した病原菌をばらまくことが厄災と言われる所以です。その流行り病を何とかしないといけなかったのですが、村のものは魔物せいだとは気付いてはいませんでした。それは僕もです。何とかしないといけないと思い、村の近くの森の奥深くに住んでいて知り合いだった『森の魔女』に相談したんです。『森の魔女』から予防薬と特効薬の作り方と材料について教えてもらって、採取に行ったところマガミ子爵たちに助けられ、手伝ってもらったんですよ。そこからはナットが知っているように、マガミ子爵が救ったとしてもらったのに……そして、その手伝いの対価として、『森の魔女』と合わせる約束をし、マガミ子爵達を『森の魔女』に引き合わせました」
「ザクス、あの時にはもう1人で森に入っていたのか……」
「『森の魔女』に会った時にはまだ8歳くらいだったよ」
「魔物に襲われてから1年経ってないじゃないか」
「よく言う。罰ゲームって名の虐めで村の外に行かせたのはナット達だろ」
「そ、そうだったか」
虐めと言いきられたナットはまた周りからにらまれていた。
「国にはマガミ子爵がばらしたんですよ。その辺の事情を。じゃないと誰も知らないことのはずなので」
「怪鳥ゲルーの単独救出劇の話は私聞いたことがあります」
と数人の者達が声を上げた。
「その英雄がザクス隊長だったのですね!!凄いです」
「俺もあれは驚いたな。攫われた人たちが帰ってくるとは思わなかったし、皆声をそろえてお前が助けに来たと聞いたときは耳を疑った」
部隊の中で自分のプライドや地位を確立しようと必死に会話に割り込むナット。
「妹がさらわれて、弟に懇願されれば行かないわけにはいかないでしょう」
「普通は行きませんよ。怪鳥ゲルーって一度に数十人を飲み込んで飛べる大きな鳥でしょ?そんなの懇願されても普通は行きませんって、それに行くにしても場所が知らなければどこに行けばいいかわからないですし」
「ははは、そのころは僕の遊び場は森や山で、ゲルーの巣には一度行ったことあったしね。その功績で、特権兵になったんですよ。後は、初めての戦地で『森の魔女』に教わった力を使ったら司令官と参謀に評価されて、戦果報告に挙げてもらったので、軍務情報局の所属になれました。そして、2番目の戦地では僕でなくてもよかったと思うのですが、司令官代理となって戦略目標を達成して帰ってきたらこの部隊を預けられ、隊長になりました。そんなところです」
ザクスは最後にあっさりと軍での成果を説明した。
「私達は初めての戦地はご一緒させていただきました。かっこよかったです。尊敬できる隊長でした。また、ご一緒させていただけるって聞いてすごく嬉しかったのですが、こんなに大変な部隊だったなんて思いませんでした」
ネリアが言うとクローディアが頷いた。
「かなり、過酷ですね。護衛兵として鍛えられた私でも心配になります」
クロスが弱音を吐く。
「大丈夫です。明日のノルマはもう少し減らしますし、ノルマをこなせばいいだけですから大丈夫ですよ」
等と会話をしていく。そして、時がたち、森に行った組が戻ってきた時にかなりの量の魔物素材を回収してきたため、編入・新人組はその大きさや量に驚いていた。ザクスは話しかける。
「こんなに採取して。今回は採取は目的になかったですよね」
「隊長、調合材料必要ですよね。調合練習なんて、失敗の数が成長の早道ですので」
「……ありがとう。じゃあいつものところに運んで今日はこれで終わりかな」
「隊長。了解です。でも一度全体で集合しますよね」
「そうしてくれると助かる。では後で集合してくれ」
ザクスの隊は集合したのち明日からの本来の予定を説明し、初日の訓練を解散した。




